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遺跡調査の攻略本?

 ほんのりと青光した通路を進んでいます。


 遺跡の地下、ほんのりと青光している以外の光源は懐中電灯です。

 10メートル先くらいまでは照らし出してくれる命綱のようなものです。

 ですがその光源は全方位から迫る闇すべてを払うことは出来ません。

 心細さは無いのですが、少なからず恐怖心が募ります。


 いくつも折れ曲がる道をマッピングしながら進みます。

 スライムの性質についても先程詳細に記録しておきました。

 部屋という部屋は存在せず、ひたすら道が続いています。

 何を目的にした遺跡なのか。

 なぜこんな地下深くにあるのかはいまだ謎でした。


 コツン、コツンとわたしの足音のみが聞こえます。

 立ち込める静寂が、ことさら大きく響かせたりします。


 「それにしても、何が目的なのでしょうか」


 狭い通路。

 たまに出てくるスライム。

 スライムが住んでいるのは確かでしょうが、なぜここまで入り組んだ道を展開しているのか。

 人口…スライムが増えすぎたため?

 それにしても説明がつきません。

 それならなぜ部屋が見当たらないのかという結論にいたります。

 最初に落ちた場所以外に大きな広場は見ていませんから。


 「部屋!部屋あった!」

 

 小人さんが駆け寄ってきます。

 案内されるがままに入り組んだ道を進みます。

 マッピングしていなかったらもう迷っていることでしょう。

 それくらいに入り組んだ道なのです。


 「倉庫…でしょうか」

 

 狭い通路を進んでいたせいか、やけに広く感じます。

 懐中電灯の光が微かに壁に当たっていることから、10メートル四方はあるようです。

 室内にはこれといった装飾もなく、ただ棚が陳列されていました。

 

 「見ていきましょうか。何かあるかもしれません」 

 

 「みる!みる!」


 そうしてわたしは、RPGの勇者の如く棚を物色します。

 もはやスライム以外に生物のいないここにおいて、わたしこそが所有者なのです。

 咎めるもののいない空間で、わたしは一個ずつ確実に棚を調べていきます。


 一個目はいくつかの電池。

 懐中電灯の電池と入れ換えて起きました。

 ここでこの補給は有りがたいです。遠慮なく頂きます。


 二個目の棚には何もなし。

 三個目の棚はそもそも空きませんでした。


 そして四個目です。

 これには表紙が破れかかった、ぼろぼろの本が入っていました。

 辛うじて見える文字は攻略本( )と書かれていますが、カッコの中の文字は見えません。 

 ですがこれは使えます。何て言ったって攻略本なのですから。

 

 「攻略本!これ脱出方法とか書いてあるのではないですか?」


 「読んで、読んで」


 小人さんが気になってわたしに読んでくれとせがんできます。

 誇りまみれの所々破れた本を開きます。


 『1ページ目』

 これ結構使えます

 ですが過信はいけません

 あなたがこれを開くとき、それは困っているときでしょう

 解法をお教え致しましょう

                次へ→


 わたしはページをめくります。


 『2ページ目』

 スライムについてです

 この遺跡はスライムのものです

 50階層に侵入したら最後、生きては帰れません

                次へ→


 わたしはまたページをめくります。


 『3ページ目』

 カエルについて

 スライムを餌にする害虫です

 スライムの敵。倒せたらスライムに助けて貰えます

                次へ→


 『4ページ目』

 最後に死亡例を記します

 ・カエルに食べられる→最悪です

 ・スライムに潰される→最悪です

 ・脱水症状を起こす→最悪です

 ・食料不足で飢える→最悪です(etc...


 パタンとわたしは本を閉じます。

 その本を適当な所へ放り投げました。

 

 「よし、小人さん。先を急ぎましょうか」


 「書いてあった?書いてあった?」


 「ええ、それはもう。もうここはあとにします」


 「わかった、わかった!」


 この分だとがらくたしか無いでしょう。

 攻略本ですらあれなのですから、救いようがありません。

 この部屋は収穫なし。


 先を進めば進むほど、書いているマップは立派になります。

 こういう地道な作業が無くなると気がおかしくなりそうです。

 ひとつ感じたことは、この遺跡が終わることがないのではないかということ。

 最初の階層からは思ってもみなかった程に内部構造が複雑でした。


 それにもうひとつ。

 生活するための設備がいままで一度も確認できていないということ。

 スライムがすんでいるというのは攻略本(笑)で分かりましたけど、それにしても可笑しな話です。

 カエルも住んでいるようですから、排雪するための施設とかあってもいいと思うのですが…。

 

 この遺跡、探索していくほどに謎が深まってまいります。

 疑問を抱えたまま、ひたすらにわたしたちは歩き続けました。

 

 あれから数時間後のことです。

 わたしたちは50階層で初めての点灯している照明に出くわしました。

 

「やっと…光が……」

 



 そこには広大なホールが広がっていました。

 地下とは思えないほどの照明による明るさに目がやられます。

 少なく見積もっても最初に落ちた場所の数倍はあると思われます。

 なぜこんなところに湖が…池と言うべきでしょうか。

 その池を囲むようにいくつかのベンチがおいてありました。

 照明お陰で中はまるでお昼のような明るさです。


 長時間暗く、冷たい通路を歩いていたわたしはもうへとへとでした。

 倒れこむようにベンチに座ります。


 「小人さん、今日はもう休みませんか。続きはまた明日にしましょう」


 「わかった、わかった」


 明るい光のもとでみる小人さんの顔は、すっかり青ざめていました。

 どんなに広い階層だといっても所詮は遺跡の一部に過ぎません。

 明日1日をかけて探索を進めれば、あっさりと階段が見つかって脱出出来ることでしょう。

 

 「取り敢えず小人さん。お食事にしましょうか」


 「食事、食事」


 わたしは持ってきていたパンを取り出します。

 ブルーベリーの自作ジャムを贅沢に塗れば美味しいパンの出来上がり。

 遺跡のなかで物もないのでこれくらいの物しか用意できませんが…。


 食後にわたしはアイスコーヒーを頂きます。

 こう言うときに大事なのは、冷静に対処すること。

 気持ちを落ち着かせて体調を気にかけることがモットーなのです。


 食後のコーヒーを終えたわたしと小人さんはベンチに横たわります。

 明日こそは魔女さんも見つけなくては行けません。

 魔女さんもそれ相応の装備ですから大丈夫でしょう…恐らく。

 

 「では、おやすみなさい」


 「おやすみ、おやすみ」


 そうしてわたしと小人さんは、安眠しました。 

 この時のわたしは、水の残量に気付いていませんでした。


 


  

 

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