ロシア的な世界に転生
あんまり面白くも無く落ちのわかりきった話です。期待せずに見てください。
「暑い…クソ…暑い」
長い長い列が平原を流れている。
「暑いなぁヂーマ」
「そうだなアローシャ」
言い合う彼らはこの一ヶ月と言うもの歩き詰めであった。それと言うものヒットレルの第三帝国が今年の六月に突然ソ同盟に攻め込んできたからであった。ここ一ヶ月彼らは敗退につぐ敗退で敗退でずっとソ同盟の内陸に向かって撤退していた。そして今日もその長い列の一部がわかれ、塹壕を掘りそこを仮の宿とした。
このファシスト勢力による攻撃はここにいるすべての兵士にとって、全く予期せぬ出来事だった。ここにいる兵士、そして将校にしたってファシストが攻めてくることなどまったく夢にも思わなかった。
なぜならソヴィエト国防委員会をはじめあの偉大なる同志スターリンにもドイツのファシストが攻めてくることはありえないと断言されていたからだった。彼らはいかなる警告も受け取ってもいなかったしまたいかなる予兆もうけっとっていなかった。これでは例え部隊の軍事委員殿であったとしてもファシストの侵攻など予期すらできなかったであろう。
ただ、この部隊にはたった一人それをしっているものがいた。そして彼はそのヒットレルの卑劣な世界に対しての挑戦のみならずこの戦争の後のドイツに抑圧されている東欧諸民族およびドイツ人民の解放。そして偉大なるソ同盟が1991年にアメリカ帝国主義に押しつぶされることも、すべて知っているのであった。
彼は転生者であったからである。彼の転生前の名前は大山和明といい、現代の日本に生まれ東京の大学で戦史研究会として活動し、三年次の飲み会での帰り道で交通事故で死亡しこの世界に転生してきたのだった。
だから彼はソ同盟がこの戦争で勝利することも、ドイツがソ同盟を侵略することもしっていたのであった。しかしそれならば現世のライトノベルでもあったように、その歴史知識や技術をつかい、党で出世すればこんなところでドイツの対地攻撃や爆撃におびえずこのウクライナを歩き回ることも無かったのではないかと皆さんも思うだろう。しかし彼が生まれたのはレニングラードでもモスクワでもキエフでもなく、むしろそんな大都市より遥かに遠いロシア共和国内のコルホーズだったし、彼は転生先ではそんな勉強の機会に恵まれていなかった。
また彼の、彼は転生前はあまりソヴィエト同盟について勉強しているわけではなかったがその彼が持っているわずかな知識でさえ、それを思い出した10歳ごろにふきあれた大テロルの最中に偶々歌った日本語の歌謡のせいで両親が銃殺され、危うく自身もシベリアに送られそうになったことから一生自分の心の中にしまっておくと硬く心に誓ったのだった。
「なあアローシャ、二人で二ェーメツの軍隊に投降しないか?」
と隣村から自分と同じように徴兵された若者が声を潜めて言った。
「おいヂーマなんて事を言うんだ、NKVDにでも聞かれてみろ二人とも銃殺ダゾ」
と彼も声を潜めて言った。
「しかしアローシャウクライナから引っ張ってこられたやつはドンドン脱走してるじゃないか、二ェーメツのやつらだって捕虜は人道的に扱うって言っているしこのままポリシェビキじゃあジリ貧じゃないか?俺たちはNKVDや将校じゃない、やつらだって歩兵を一人ずつ殺すほどじゃないだろうし。そうキエフだってもう落ちたといううわさじゃないか。」
「馬鹿なこと言うなよ20年のポーランドが攻めてきたときにもピエフツキの泥棒野朗はキエフを落としたが同志レーニンに逆にワルシャワまで攻め込まれてしまったじゃないか。」
ヂーマは少し考えた後にこういった。
「しかし今回はあの二ェーメツじゃないかポーランドなんかと違って俺たちの親父なんかは前の対戦でやつらにめちゃくちゃにされてベラルーシやウクライナまで取られたあの相手だぞ。」
彼はあせっていた、この気のいい戦友がこの戦争の緊迫した状況において危ないことを口走りつつあることを。彼はこれを密告されたら銃殺だな、と思いながらゆっくりとくらいあたりを見渡し誰もまだ気づいていないことを確認して早口でまくし立てた。
「おいヂーマいいかよく聴けファシストたちは俺たちを助けたりしねぇ、むしろ収容所におくって使いつぶすのだ。それにナもし二ェーメツに投降する前にウクライナの反動に見つかってみろ俺たちロシア人なんて真っ先にタタキ殺されちまうゾ。内戦時代をしらねえのか」
そこで彼はいったん息を整えるとふたたび言った。
「それにな俺にはわかる、この戦争は同盟が勝つんだよ、絶対にナ。それにあの偉大なる同志スターリンが裏切り者に容赦がないのはお前も知っているだろ。人民の敵になったやつがどんな目に会うか…あのポーランドの戦争やトハチェフスキーの裏切りのときにだって同志スターリンは断固とした対応を取られたじゃないか。」
ヂーマはあまりのスピードに頭が追いついていないようではあったが
「お・おう」
とだけいって話を終わらせた。
しかし、ちょうどそのとき見回りに歩いていた将校が二人をジロリと見たかと思うとこういった。
「おいイワノフ貴様ドミトリーとなにやら話をしていたようだがなんだ?脱走する気でもあるのではあるまいな?」
「おいザイチェフこの二人何を話していた?」
「申し訳ありません同志少尉殿私は何も聞いていませんでした。」
「ふん、使えんな。おいイワノフ何について話していた?え、言ってみろ」
「は、同志少尉我らの祖国に侵入したファシストを必ずや我らが追い返してやると言っていたのであります。」
少尉は、あまり愉快そうではなかったが面白くなさそうに。
「ふん、次は無いぞイワノフ」
といって歩いていった。将校が見えなくなると後ろから。
「タバコ5本だな」
と声がかかった。
次の日の朝早く彼のいる塹壕の見張りが敵の戦車隊をみつけ、その昼のうちにはドイツ軍はその防衛線を突破した。
その日の夜に赤軍南方軍の参謀は連日受け取っている同じような報告を受け、また同じように地図と書類に書き入れた。“第○○○○連隊全員戦死”同○○師団壊滅と。昨日の兵士たちのねぐらには、ただ月の光が照らす兵士だったものしか存在していなかった。
次回もソ連的な世界が部隊です。