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掌編小説集6 (251話~300話)

不死身の力

作者: 蹴沢缶九郎

長き旅の果てに、不死鳥の肉を食べた男は不老不死の肉体を手に入れた。男はさっそく、自分の肉体を使って不死の力を試してみる事にした。

毒薬を飲み、ナイフを自分の腹に突き刺す。しかしさすがは不死身、痛みや苦しみはあるのだが、毒は体外に排出され、傷口も見る間に塞がった。


次に男は殺し屋の許を訪ねて言った。


「あなたを見込んでお願いがあります。どうか、銃弾で私の頭部を撃ち抜いてくれませんか」


男の突飛な依頼に、殺し屋は困惑する。


「おかしな奴が来たぞ。誰かを殺して欲しいのならわかるが、自分を撃てと言う。自殺願望があるのなら、一人で勝手にやってくれ」


「早合点しないでください。自殺をしたい訳ではありません。信じて頂けないかもしれませんが、私には不死身の力が備わっており、その能力を試してみたいのです。謝礼ははずみます。お願いします」


食い下がる男に、殺し屋は渋々、異様な依頼を引き受ける事にした。


殺し屋は懐から小型の拳銃を取り出し、男の頭部に狙いを定め、引き金を引いた。銃口から発射された銃弾は見事、男の頭を捉え、望み通り撃たれた男はその場に崩れ落ちた。

大の字になりピクリともしない男、しばらくすると、頭部の銃創(じゅうそう)は塞がり、何事もなかったかのようにすくっと起き上がった。


その様子に殺し屋は驚きの声を上げる。


「こんな事が…まさか…」


「どうです、信じて頂けましたか? 私は不死身なのです」


男は結果に満足げだったが、突然、


「うう…、何か変だ…。頭が割れるように痛い…」


と、頭を押さえ苦しみ出した。どうやら殺し屋の放った銃弾が脳内に残されたままとなり、それが頭痛の原因となっているようだった。


「助けてくれ…吐き気がする…。あ、頭が痛い…、医者を呼んでください…」


しかし殺し屋は男の申し出を断る。


「冗談じゃない、そんな事をすれば俺が捕まってしまう恐れがある。謝礼は確かに戴いたぞ。じゃあな」


殺し屋は我関せずで、そそくさと行ってしまった。その場に一人残された男は、


「なんて冷たい奴だ…。頭が…頭が痛い…」


と、額に脂汗をかき、苦悶の表情で地面をのたうち回る。


仮に医者に掛かったところで、不死身の能力で傷口が塞がってしまう身体では、手術で銃弾を取り出すのは困難であり、死から解放された男は一生頭痛に苦しみ続ける。


男は苦しみながら、叶う事のない心からの願いを声に発した。


「こんなに苦しいのなら、いっそ死んでしまいたい…」

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― 新着の感想 ―
[一言] あ、頭を盛大に吹き飛ばせば、或いは……。
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