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ある愛の詩〜座敷童子・内一〜

作者:ミカ=エル
町医者「もうすぐ産まれそうだよ」
旦那「がんばれ、がんばれ」

苦しそうにしている奥さん。

旦那「すみません、女将さん。」

宿の女将「良いってことさね〜。ここのお医者様は呼べばすぐにでも駆けつけてくれるしね、こんな商売やってればこんな事何回もあるもんだよ」

旦那「ありがとうございます」
町医者「産まれるよ」

赤子「ぉぎゃあ〜おぎゃぁあ」

一同「よかった!」

町医者「良かったね。元気な男の子だよ。旅する夫婦の子供らしく丈夫そうな子だよ。母親も大丈夫さ」

旦那「ありがとう、本当にありがとうございます」

女将さん「で?どうすんだい?しばらくはこの宿場から動けないと思うんだが。お前さんたちの予定は?」

旦那「元々妻の体調見ながらどこか大きな宿場で仕事探して落ち着くか町の近くで田んぼでもやろうかと思ってたんですが。」

女将さん「別にどこかにあてがあって目指してるとかじゃないんだね?どうだい?この宿で仕事してみないかい?」

夫婦「えっ?」

女将さん「今お宮詣りの時期だろ?普段も手一杯なところあるんだけど特にこの時期忙しくてね。昨日から泊まってくれてるけどさ、あんたたち二人とも人当たり良いしさ、向いてるんじゃないかと思うんだよ。どうだい?」

奥さん「良いんでしょうか?こんな半分流れ者の自分達なんかでも」

女将さん「何言ってんだい、そういった人間を泊めて相手するのがあたしらの商売さね。その気があるなら旦那と相談してみておくれ」
とにかく今は産後だっからゆっくり休みなよ、と言い部屋から出て行く女将。

奥さん「どうしよう、あんた?二人でどこかで畑や田んぼでもやれれば、と思ってたんだけど」

旦那「うん、そうだなぁ。・・・湯が出るここはまだまだ大きくなりそうだしこの町自体もこの宿も雰囲気良くて好きにはなれそうだ。」

町医者「あの女将も元々行くあてが無くて流れてきたのがこの宿の大将と恋仲になって今に至るんだがね。なんか跡取りとなるはずの最初の子を流したという事で家を出されたらしいのさ。今回あんたたちを見て色々考える物もあるんじゃないのかねぇ。」

奥さん「そんなことが」

旦那「そうなんですね。なんとなく物腰がしっかりしてるのは良いとこのお嬢さんだったりするんですかね」

町医者「さぁねぇあたしもそこまで踏み込んだ話はしてないから分からんが話をした限りの内容からすればそうかもねぇ。」

旦那「何処の誰とも知らない自分達でもやっていけるでしょうか」

町医者「それこそわからんね。ただ、女将も言ってたがそういった人間が集まるのが宿場町でここは色々な人間が泊まる宿だ。旅を知ってる人間には知ってる人間なりのやり方とかもあるんじゃないのかね」
では明日も様子を見に来るからね、と言って去っていく。


そしてこの小さな宿場町の入り口近くにあるこの宿に二人の従業員と多助と名付けられた男の子とが加わることになった。



そして三年程の月日が経つ。

町全体が平穏そのものの生活を送っておりその宿も少しずつ大きくなってきていた。

が、そこを悲劇が襲う。

日が昇って少し経った頃。
少し離れた山城から戦で敗北した側の兵士達が暴徒と化して山からやってきたのである。

昼夜問わず攻められ続け落とされたらしい。


女は攫おうと連れて行き腹いせと敵方に少しでも余力を与えない為に火までが放たれる。
賊達が侵入してきた入り口とは離れた位置にある宿屋に居た人間は宿の主人を含め泊まり客も大半が逃げ出すことに成功していた。

旅慣れしている人間は道から逸れる形で安全な街を目指す。

道を行く中にあの夫婦の姿もあった。
奥さんは夫と仲居の一人に肩を支えられてなんとか歩けている状態であった。
そしてそこに息子の姿はない。

「多助ちゃんは!未だ戻ってなかったのかい?!」
仲居さんと交代した宿の主人が問う。

「誰か一緒に付いて行ってれば良かったねぇ」
女将さんが言う。

「とにかく早く逃げましょう!少しでも金持ってるとなれば連中襲ってきますよ!」

女将さん「そうだね、とにかく無事で居れば会えるさね。急ごう」


・・・夫婦の息子は昨夜から熱を出して寝込んでいた母親の為に朝一で町医者の元へと出掛けていたのだった。

夫「無事でいてくれるさ」
奥さん「そうだね、きっと無事で。多助なら。うっう」
泣きながら少しでも早く移動する。

夫「親父さん達も構わず逃げて下さい!一人で大丈夫ですから!夫婦で逃げます。伊達に二人で旅してたわけじゃないです!」

宿の主人を奥さんから離し女将さん共に逃がそうとする。

宿の主人「あぁあぁ、良い良い。構わない構わない。だが、お前達は先に大きな宿場町まで逃げていろ!追いつくから」
再び奥さんに肩を貸す。

女将さん「あ、あんた。。。でも!」

宿の主人「女と見れば見境ない連中だろうがよ!!俺はお前も捕まるところなんか見たくないんだよ!良いから早く走れ!いけいけ!」

女将さん「絶対皆して無事に来るんだよ!死んだら許さないからね!」
もうかなり先まで行ってしまった仲居さん達を追いかける。

宿の主人「はっ!死ねるかい!また宿を再開して国一番の宿にするんだからな!」

夫「・・・親父さん・・・」

宿の主人「お前達は仲間というよりも家族みたいなもんだ。息子や娘、孫を放っていけるかよ」

夫「親父さん」


・・・・

・・・

が、固まって、しかも移動速度が遅い人間を賊が見逃すはずもなく。
夫婦と宿の主人、そして何人かの逃げ遅れた人、隠れてやり過ごそうとした人々が犠牲になった。




襲撃を受け火を放たれ壊滅した町は再建される事もなく。


やがて十年後。

国が平和を迎え発展した結果、大きな街道が作られそこから離れてしまった場所。
だが、宮詣りをする為には道さえあれば宿があると便利かな、という事で野宿する者は居るだろう高い木もそれほど生えておらず拓けた場所。

そこに宿屋が一軒開業した。

女将さん「さぁ、あんたたち!時間は経ってしまったけど再開だよ!しばらくはお客さん来ないかもしれないけど近隣への宣伝その他気合い入れていくよ!」

従業員達「「はいっ!」」

そこにはかつての宿の女将の姿があった。

女将さん「・・・あんた達。あたしらは戻って来たよ。時間かかっちまったけどね、皆でまたがんばるよ。」




そして湯治はもちろん、女将を始めとした従業員の接客態度等から評判の宿になり、この土地もまた活気を取り戻していく。

・・・のだが。


評判の中に奇妙な物があった。

「その宿に泊まると夜中に子供が部屋に来て一緒に寝るそうだ。」

「いやいや、寝静まった頃に起こされて遊びをせがまれるそうな」

「いや?俺は子供が走り回って遊ぶと聞いたぞ」

「いやいや、夫婦で寝てると子供が入ってきて朝起きると妊娠してるとか。」

「夜中子供が五月蝿いからと部屋を変えてもらったら帰りの道中崖崩れに出くわしたとか」

あまりにも噂が立ち内容も具体的な為、ある夜女将さん自身が「良く会えるのでは」という部屋に寝てみる事にした。

そして夜中丑の刻を半分くらい過ぎた頃だろうかソレは始まった。

まず廊下から足音が聞こえ部屋の前まで来る。子供のようだ。襖を開け部屋に入る。

そして布団の近くまで来ると止まる。

パタパタ走り回る。

そして頭の方に来てまた止まる。

なんとなく顔を覗き込まれてる気がした女将は目を開ける。

するとそこに・・・

女将さん「っ!!あんた・・・どこかで・・・」
するとニコッと笑った男の子。
年の頃は三、四歳だろうか、利発そうな顔だ。

女将さん「あんたは・・・」

見つめ合っている事しばし。
男の子の姿が薄くなり消えていく。

女将さん「あっ!お待ちよ」

・・・女将さん「あの子は・・」

次の晩もやはり同じ部屋で寝てみる。

やはり同じくらいの時間。

パタパタッ

今日はすでに部屋の中に居るようだ。

女将さんは寝たふりを止めて声を出す。

「あんた・・・多助、かい?」

多助?「っっんっ!?」

パタパタ
・・・・パタパタ
ビックリしたのか部屋の端へ、そしてまだ戻って来る。

多助?「ん?おかあちゃん?・・・うぅん。おかあちゃんは?」
女将さんの顔を覗き込むようにし、口にする。

女将さん「あんた、あたしのことわかるのかい?わかるかい?」

多助「おばちゃん?・・だれ?・・・おばちゃんっ!」

女将さん「ああ!!そう、そうだよ、あんたのおばちゃんだよっ!」
抱きしめようと手を伸ばす。

多助「んっ!」
頭を振り遠ざかる。

女将さん「どうしたんだい。どうしてだい?」

多助「おばちゃん。おかあちゃんどこ?おかあちゃん寝てない。」

女将さん「あぁ。ああ。あぁ。」
変わらないかのように見える多助を見る。

女将さん「あんたのお母さんはね・・・残念だけど多分・・・」

多助「んっ!おかあちゃん居ない。おかあちゃん探す!おくすり!よくする!」

女将さん「あっ!お待ちっ!お待ちよっ!」

居なくなる多助。

その日からは女将がいくら寝ても呼んでも多助が現れることはなかった。

そしてその日から噂の内容も少し変わる事になる。


曰く「子供が夜中に出歩き迷っているのかと子供の居場所を探していたら大店(おおだな)の後継と出会いトントン拍子に婚姻に向かったんだって」

曰く「子供に恵まれない夫婦が湯治に来ていたところ夜中に子供が布団に入って来てそのまま寝てしまった。そして帰宅したその日に医者から妊娠を告げられたんだとさ」

曰く「夜中に子供が部屋に入って来たからお菓子をあげた所お礼を言って部屋から出て行ったのだが朝部屋の入り口に花束が置かれていた」

曰く「夜中まで恋文を書いている最中に子供が騒いでいたのを近くで遊んでれば良いよ、と気にせずにいたら仲居さんに書いた恋文が届けられていた」等など。


共通するのは「あの宿屋に泊まり夜中に子供に会えたら何らかの御利益みたいなものがあるのではないか。逆に無碍に扱うと不幸があるのかも」というものだった。

その宿はそうして部屋に子供が居る宿屋。

地方に伝わる幸せを家に齎す座敷童の住む宿屋という評判でやがて街道一、国一番の宿屋として繁盛していくのだった。

女将さんは敷地の片隅に御堂を建て供養と感謝を終生捧げるのであった。





だが。当の本人、件の座敷童と呼ばれている夜中の子供は今日も病気で伏せている愛する母親を探して宿屋中を彷徨い歩いているのかもしれません。

「おかあちゃん、おくすりもってきたよ。これでよくなるよね」



〜終〜
お読みいただきありがとうございます。

その一は普通のいつもの自分流の?話の内容となっております。

読み終えた後に何か残る物があれば幸いに思います☆

すみません。零時半に終わりの文章を修正しました。

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