第7話
また僕はぼーっとしながら家路へと着いた。帰宅した僕は部屋着に着替え、ベッドに横たわった。あの喫茶店のカノンという名札を付けた女性店員が気になっていたのだ。いつかプライベートで会えたらな、なんてことまで考えていた。そう、きっと僕は恋をしてしまったのだろう。恋患いというやつだ。それも一目惚れに近い。僕が知っていることそれは、彼女と好きな作家と小説が同じこと、ロリータ服を纏うこと、髪がセミロングだということ、少しばかり瞳が茶色いこと、身長が160cm前後であること、カノンという名札を付けていること、それだけなのだから。僕はあの喫茶店どころか店員であるカノンという女性にまで魅了されてしまったのだ。生憎、明日は仕事なので喫茶店へ行けるかは分からない。まして彼女が出勤している保証もない。明日は大人しくしていよう、そう決めたのだ。明後日また行くことにする、そうしよう。朝も早いし、僕は寝ることにした。
翌朝、5時頃目が覚めた。また早朝覚醒だ。この症状は正直しんどいものだった。何時に寝てもこれぐらいの時間に目が覚めてしまう。長時間眠れる日もあれば、短時間しか眠れない日もあるのだ。主治医が言うには、昼寝などで調整すれば良いとのことだった。今まではそれで何とかなっていた。しかし、今はそう、あの喫茶店へ行かなくてはいけない、正確には行きたくて仕方なかったのだ。
僕は7時半頃に家を出て職場へ行くので時間には余裕があった。ゆっくりと着替えたり朝食を食べたりしていた。昼食は職場へ行く途中のコンビニでパンなどを買って食べている。そういったこともあり、出発までの時間は長かった。その時もまたカノンと名乗る女性のことを考えていた。
7時半頃になり、僕は家を出た。駅まで歩いて約20分、そこから電車で約15分、更にそこから歩いて約15分。合計約50分の時間がかかる。勤務開始は9時からなので、十分過ぎるほど早く職場に着く。そこで煙草を2本ほど吸ってから勤務を始めるのが僕の決まりだった。
職場へ着いた僕はいつものように所謂ルーチンワークをこなした。検品と梱包作業はもう慣れたものだった。正直飽きていたが、給料を貰う以上は正確に丁寧にそして真面目にやる、これが僕のプライドだった。
17時半になり仕事の終わりの鐘が鳴った。僕は急いで着替えを終え、急いで駅まで向かった。理由はただひとつ。あの喫茶店へ行くためだった。いつも通りの電車へ乗り、途中で乗り換えること約10分。あの喫茶店のある駅へ着いた。