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わらべ唄  作者: 照月雫
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最終話

与四郎も死んだ。

みんな、死んでしまった。

紫乃舞は一人でわらべ唄を歌う。

「四のつく人 寄っといで とっても美味しいステーキは 真っ赤なワインがお似合いです」

阿村与四郎は自分の肉を家族に食べさせた。家族はその後行方不明だ。

「五のつく人 寄っといで いらなくなったガラクタは 全部まとめて捨てましょう」

紫乃舞は自分の死に方を考えた。

少しの間目を閉じて考えていたが、思いつかずに諦めた。

どうせすぐ、知ることだ。



***



紫乃舞は子どもに追いかけられていた。

一人は顔が潰れた子ども。

一人は鳥の羽が身体中に生えた子ども。

一人は包丁を持った子供。

一人は与四郎の息子。

一人は自分だった。


クスクスクス……。


不気味な笑い声が近づく。

紫乃舞は必死になって逃げた。

心に残ったのは恐怖、ただ一つ。

何も言わず、ただただ逃げる。

「嘘っ!?」

突然目の前に壁が現れた。


クスクスクス……。


子ども達が近づいてくる。

逃げ場は、ない。

「い、や………………っ!!」

子ども達が目前に迫り、思わず目を閉じた。


クスクス……………………。ーーーーーーーー。


突然、子ども達の声が消えた。

目を開ける。

そこにはもう、何もなかった。

子どもも、人々も、街も。

何一つ、なかった……。




目を覚ました。

「夢、か……」

なんとなくテレビをつける。

『午前四時、東京都○○の家屋が全焼する事件が起きました。被害者は五条悟さん(四十七)、五条雪さん(四十六)、五条紫織さん(十七)。病院に運ばれたのち、死亡が確認されました。犯人は未だ捕まっておらずーー』

「っ!?」

紫乃舞が驚いたのは『五条』という名字ではなかった。

『五条紫織』は紫乃舞にそっくりな顔をしていたのだ。

「偶然、だよね……」

呟き、いつものようにメールを確認する。

着信は一件。知らない番号からだった。恐る恐るメールを開く。

『突然ごめんなさい。私は五条紫織。貴方の実の姉です。十年近く貴方を探し続け、ようやく見つけることができました。苦しい思いをさせてごめんなさい。許してもらえないことも覚悟しています。それでも私は貴方と一緒に、また暮らしたいです。もし会ってくれるというなら、一緒に暮らしていいと思ってくれるなら、ここに来てください。みんなで待っています』

生き別れた姉ーー唯一の家族からのメールだった。

紫乃舞は初めて、自分は家族に会いたかったのだと気づいた。恨んでなどいなかった。卑屈になりながらも、心の底では迎えに来てくれることを望んでいたのだ。

「くっ………………う、うぅ…………あぁ…………」

涙が、溢れる。

嬉しかった。そして、とても哀しく、悔しかった。

メールの最後に書かれた住所。それはさっきのニュースで流れたものとまったく同じだった。

メールの日付けは昨日の夜。紫乃舞の家族は炎に包まれながら何を思っていたのだろうか。その時自分は……?

夢の中で最後に聞いた言葉を思い出した。


クスクス……………………。幸せを、生を望まぬ人間に殺す価値はない。


誰もいない部屋で、紫乃舞は一人泣き崩れていた。


初めまして! 渡辺夏月です。今回は「わらべ唄」に目を通してくださってありがとうございます。至らない部分など数え切れないほどあったと思います。今後の参考にコメント等で教えてくださると嬉しいです。

さて、今回の作品は二年ほど前に書いたものを加筆修正したものです。「ホラーが苦手な人間がホラーを書いたらどうなるのか」という純粋な気持ちで取り組んだことを覚えています。書いたその日に悪夢にうなされたのはいい思い出です。「わらべ唄」自体はうなされるほど怖くしていないのですが。想像力というのは凄いですね。

今回初めてネット上で公開するということで、一つ一つの話を短めにしました。次回からはもう少し長くなるはずです。その分投稿ペースは落ちますが、温かい目で見守って頂ければ幸いです。

最後になりましたが、お忙しい中この小説に目を通してくださった皆様、本当にありがとうございました!!

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