《season2》リアルのパーティ
現在の犬塚家では…。
4人用の小さいテーブルにところ狭しと並べられていた料理は跡形もなくなり、ビール缶や酒の入っていた瓶が散らかっている。
「嫌ぁぁあー!何やってんの!」
貴子は近江が持っているアルバムを取り返そうとしている。
貴子の母親が珍しくお酒を飲んだことにより暴走し、貴子や一美が幼い頃の写真アルバムを持ち出してきたせいだ。
「良いじゃん、わんちゃん可愛いって」
「……萌え」
「私だけ晒すなんてフェアじゃないよ!」
「大丈夫!!私も晒してるから!」
酔っ払い気味の一美が顔を赤くしながら言った。
「何が大丈夫なわけ!?」
終いには母親が貴子が幼かった頃の文集を持ち出した。
「《6年1組、犬塚貴子。私の将来の夢》」
「読むなーー!ってかどこから出てきたわけ!?」
「ふふふ」
母親は怪しげに笑う。
「あんたがどこに何を隠してるかなんてお見通しよ」
「げっ」
母親は文集を近江に渡す。
「なんなら、高校生の頃の日記でも持ってこようか?」
「ガチで止めてーーー!」
「阿久津!パス!」
そして貴子の文集は近江から阿久津へと渡る。
その一方で、ほろ酔い気分の百合と礼は父親に絡んでいる。
「貴子にこんなに良い友達が出来るなんて…」
「お父さん、私たちが一生貴子さんの面倒を見ますから安心して下さい」
「お父さん。僕らが必ず貴子さんに相応しい男性を見つけてみせます!」
「そうか…。これで俺は、安心して…死ねる…」
「「(礼、百合)お父さんっっっ( ; ; )」」
ダイニングと一間続きのリビングで、浩太郎と航平が無言で睨み合っている。
「また、勝負します?」
「ふっ。俺はそこまで馬鹿じゃねーよ」
「そうですか」
そこにアルバムを持った阿久津がやってくる。
「《私の夢は、お花屋さんになることです》」
「ぎゃー!何読んでんのー!」
「ん?どれどれ?」
航平が阿久津から文集を取る。
「《おばあちゃんの育てたキレイなお花を売ったら、世界は平和になると思います》」
「わんちゃん可愛いー」
「世界は平和になるだってさ!」
「もう!小さい頃の話なんだから!」
「でも、その頃から花が好きだったんだね」
「うん。良い話。おばあちゃんも喜ぶよ」
そして何故か佑太郎が文集を取って読む。
「まだ続きあんじゃん。《そしてお店が有名になって、お金持ちになります》」
「…………。」
「最後の一文で台無し…」
「うん、ちょっとがっかり…」
「な!?勝手に人の読んでおいてガッカリしないでよ!」
「今頃おばあちゃん悲しんでるぞ」
「悲しんでないし」
貴子はようやく文集を取り返す。
「ったく。失礼な」
「でも…」
航平は貴子の手を取り
「お花屋さん、良いね」
「え?」
「わんちゃんにピッタリ」
貴子は顔を赤くする。
「確かにわんちゃん、って感じする」
「うんうん」
「…そうかな…?」
「金持ちになるのは難しいだろうけど」
「もう!その話はしないでよー」
貴子は無意識に航平の手を握り返した。
(…お花屋さん、か……)
航平はその様子を見て微笑んでいた。




