リアルの二次会!
前回と同じカラオケ店に来ている。だが、今回は8人部屋に案内された。
礼、百合、牧野、貴子、阿久津、近江、田中兄弟 の順番でUの字に座っている。
「なんか広く感じる」
「前が狭すぎたんだよ」
「わん汰、俺の膝」
「遠慮する」
「また勝負する?ドMちゃん」
「え?また私が勝っちゃうよ?」
「は!?お前2回とも負けてるから!」
「え?そうだっけ?」
礼は持っていたノートパソコンを机に置く。
「立ちあがるまで飲み物でも頼もうか」
「うん」
「焼酎3本な」
「え!?勝負する気!?」
「しねーの?」
「お酒は筋肉に良くないんだって。知ってる?」
「だから?」
「………ドSめ…」
佑太郎はニヤリと笑った。
「何の勝負?」
牧野が尋ねた。
「あー、焼酎の早飲み対決です。誰が早く一本空けられるか。ちなみにドS兄弟の奢り」
「は!?ふざけんな」
「え?ダメなの?」
「ったりめーだろ!」
「ケチーーー」
結局勝負はお預けになり、焼酎1本を3人で飲む事になった。
「そろそろかな」
礼はパソコンを全員が見えるように向けた。
ビデオは男たちの着替えるところから始まっている。
「こんなのも撮ってたの?」
「全然気づかなかったし」
「盗撮じゃん」
「礼たん、変態♡」
着替えるシーンが終わると、次はゲレンデに到着したところから始まった。
「おー!懐かしい!」
「まだ1週間しか経ってねえし」
ビデオの何本かには貴子と浩太郎以外が軽快に滑る様子が映っていた。
「あ、たぶんこの次かな」
「え?」
「貴子さんの初滑り」
「おお!」
「わんちゃんの豪快な転びっぷりが見れるのか!」
「ちょっとー。その言い方嫌ー」
ビデオが次に移動すると、一美の滑る様子が映っていた。
「これ、片方が撮ったやつ?」
「片方言うな」
「本当だ」
「コウさんも映ってる」
ビデオを見て行くとリフトから見える景色が映り、会話をしている声で田中兄弟がリフトに乗っていることが分かる。
『(佑太郎)ところでさ、ドMちゃんとはどーなの?』
『(浩太郎)何が?』
『(佑太郎)この前2人で飲みに行ったんだろ?』
『(浩太郎)ああ』
『(佑太郎)ってことはドMちゃんとヤッ』
浩太郎が勢い良くパソコンを閉じた。
「何!?」
その様子を見て、礼と百合は笑っている。
「お前ら…知っててワザとやっただろ!?」
「え?何の話?」
「わんちゃんとヤッ?」
「ヤッ?」
「黙れ!」
浩太郎がパソコンを持ち上げ「これ、ぶっ壊すぞ?」と言うとさすがの礼も焦り
「ゴメン!今消すから!」
浩太郎からパソコンを受け取り急いで動画を他のフォルダへと移動させた。
その次のビデオは礼の言う通り、貴子が滑って転ぶ様子と、雪に飛び込む動画だった。
「顔に雪ついてる〜」
「大ちゃん、雪男みたい」
「ワイルドだろ〜?」
「それ好きだね」
「うん、俺の中で今一番激アツ」
「ふーん」
『『『レリゴ〜』』』
パソコンから3人の歌う声がした。
「あ、リアル雪アナのシーンじゃん」
「これいいよね、感動するよね!」
「ユウさんが一番面白かったシーンだ」
『ねぇよ!!!』
「私、雪アナ歌おうかなー」
「俺もー!」
百合は機械を使って検索する。
「あれ?タイトル何だっけ?」
「(貴子)Let it …be?」
「(礼)違うよ、Let it pee だよ」
「(近江)みんな忘れたの?Let it … フォーーーゥ!」
「(阿久津)やっぱお前ゲ」
「(近江)ゲイじゃねぇーから」
佑太郎は先週同様ウンザリした顔をしていた。逆に牧野は楽しそうにみんなの様子を見ている。
「そういえば、百合さん!」
「ん?」
「今日は本当にありがとうございました!」
貴子は立ち上がって頭を下げた。
「良いのよ〜。署長さんどうだった?」
「はい!凄く機嫌が良くて、最後は'ありがとう'って言ってもらえました…」
「そう?良かったじゃない!」
「全部百合さんのお陰ですよ!お友達のお店の対応も凄く良くて、社員もパートも全員満足そうでしたもん」
「私は友達にお店貸してって頼んだだけよ」
「でも、パートさんたちのヘアメイクとか、本当に感謝してもしきれないです」
「これで、少しは気が楽になった?」
「え?どういう意味ですか?」
「ブログで仕事の事書いてたでしょ?ふざけた感じに書いてあったけど、実は凄く悩んでるんじゃないかなって思ってたのよね」
「………」
貴子の目が潤んだ。
「聞いても貴子さんは強がり言って誤魔化すかなと思ったから、せめて私に出来ることを精一杯やらせてもらったの。少しでもマシになればと思って」
「ゆ、百合さーーーーん」
貴子は百合に抱きつく。
「よしよし」
百合は貴子を抱きしめ返し、頭を撫でた。
「(近江)俺、ちょっともらい泣き…」
「(阿久津)♪ええいーあぁー」
「(貴子)ちょっと黙ってて」
貴子が落ち着いた頃、またビデオを再生する。
部屋でのどんちゃん騒ぎの様子が映し出され、貴子は慌てて画面を隠す。
「何だよ」
「どうした?」
「こんな姿見られたくないよ!!」
「良いじゃん、減るもんじゃねーし」
「減らないから困るのー!!署長、お願いだから見ないで下さい。ついでに耳も塞いでもらえると助かります」
牧野は満面の笑みで貴子の頭を撫で「ヤダ」と言ってパソコンを見つめる。
「嫌ーーーー!私のイメージがぁ…」
「今更騒ぐなよ」
「手遅れだよ、わんちゃん」
「え?」
「ドンマイ!」
「大丈夫、私は貴子さんの味方だから」
「みんなの意地悪ーーー!」
散々恥を晒してしまえば、もう怖いものなどない。
「よし、ドM!飲め、飲め」
貴子はグラスに注がれた焼酎を勢いよく飲む。
しかし今日はグラス2杯ほど飲んだところでグッタリしたように座りウトウトし始めた。
「大丈夫?」
「何だよ?もっと飲めよ」
「……疲れた……」
朝早めに起き送別会の手順などを確認し、その上成功するかどうか心配していたこともあり、一気に荷が降りて安心したのかもしれない。
「わん汰…」
阿久津が貴子を自分の方に寄せようとすると、牧野が貴子の肩に腕を回して貴子の頭を胸に寄せた。
「あらあら♪」
阿久津と牧野は視線を合わせ、睨み合っているように見える。それを百合は楽しそうに見ている中、浩太郎は複雑な気持ちで見ていた。
「署長〜さん。お前がドMちゃんの代わりに飲むか?」
と言って佑太郎はニヤリと笑った。
「勝負します?」
「望むところだ」
浩太郎は財布から一万札を取り出して机に叩きつけて言う、
「賭ける気があるならな」
「良いですよ」
牧野と佑太郎も同じように一万札を置くと、戦いのゴングが鳴った。
まだまだ続く……?ww