《season3》リアルのチョイス
「そんなにジロジロ見ないで下さいよ」
貴子は一美の部屋でブログの更新を終えて後ろを向くと、航平が笑いながら貴子を見ていた。
「パソコン打つ時に声出てたよ」
「う…。知ってます」
「職場でもたまに声出てたよね」
「あれは!数を数えてただけです!!」
「ブログに何て書いたの?」
「おばあちゃん家に行くって」
「俺と一緒にって書いた?」
「…いえ…」
航平は何も言わずに携帯をいじり始めた。
「コメントに俺と行くって書き込もっ」
「ちょっ」
貴子は慌てて航平に駆け寄り、航平の手を止めに入る。航平を抱きしめているような形になる。
「何でダメなの」
「だって…、浩太郎さんと別れたって書いてないし、変に思われるじゃないですか」
「なんで書かないの?」
「浩太郎さんのファンに怒られそうで…」
「何それ」
航平は笑った。
「とりあえず!みんなには内緒です」
「はいはい」
航平は携帯をポケットにしまってから貴子のベッドに座り、貴子はその目の前に立つ。
「でも、仕事大丈夫なんですか?休み5日も貰って」
「うん。3日貰えたらラッキーって思ってたんだけど、婚前旅行に行きたいって言ったら、店長が5日もくれた」
「婚前旅行ね…」
(…田植えしに行くんだけど…)
「楽しみだなぁ。田舎に行くのは初めてだし」
「鶏の世話とか!」
「方言勉強しておかないと」
「はは。確かに」
航平は貴子のお腹を触る。
「何やってるんですか?」
「妊娠したかなぁ、と思って」
「どうでしょう?安全日だったし…」
「え!?そうだったのか…」
「そんなに子供欲しいんですか?」
「そりゃあ、好きな人との子供は欲しいよ」
航平は貴子の手を引っ張り、額にキスをした。
「………/// 何人くらい?」
「んー、たくさん」
「え!?」
「サッカーが出来」
「無理です!!!」
「ははは。冗談だよ。わんちゃんは?」
「んー、私は男の子と女の子が欲しいから2人は絶対産みたいな」
「そしたらドリファムみたいな家に住みたいね」
「いいですね!広い庭で野菜とかお花育てて」
「頑張って稼ぐよ。わんちゃんの夢の家の為にも」
「私も頑張ります!」
「そう言えば、ドリファム。メンテナンスするの知ってる?」
「メンテナンス?」
「使用停止」
「え!?いつ!?何で!?」
「やっぱり知らないか…。レイくん情報なんだけど、ドリファム内で色々と問題が起こって、ほら、浮気とか、リアルで集団レ○プ問題とか」
「はい」
「で、ドリファムがそれを助長するようなシステムなんじゃないか、って裁判になって。メンテナンスって言うくらいだから、一時的にオン出来ないだけだと思うけど、どうなるかは謎みたい」
「そうなんですか…」
「サイトにも発表されてないから詳細はまだだけど、たぶん今月中にはオン出来なくなるかもって」
「えーーー。せっかくレベル上がって楽しくなってきたのに…」
「だよね。わんちゃんの家に行けないのは少し寂しいなぁ」
「唯一の救いは、妹が作りかけてる模型…」
貴子は出窓に飾ってある中途半端なログハウスの模型を見た。屋根は無く、一階だけがほぼ完成しているが、作られるはずの二階部分はまだない。
「その間、何かやる?」
「んーどうしようかな」
貴子は一美の部屋からパソコンを持ち出し、ベッドに座ってからパソコンを立ち上げた。
ーーーー
Yohaa【ドリームツール ソフト一覧】検索
ーーー
ドリーム ファーム
牧場経営を体験出来る。
ドリーム コスモ
エイリアンを倒して地球を救う。
ドリーム ラブ
恋愛体験が出来る。
ドリーム ビーストハンター
怪物を倒して伝説の武器防具を手に入れる。
ドリーム モンスターペット
可愛いモンスターを捕まえて飼う。
ドリーム Road of The King
車を改造してレースに出る。
ドリーム わんにゃんパーク
野生動物を捕まえて動物園を作る。
ドリーム スカイ
戦闘機を操縦して敵と戦う。
ドリーム コレクター
発掘してレアな宝石を集める。
ーーー
「どれも微妙なんだよなぁ…」
「俺はローキン良いと思うけど」
「………行ってらっしゃい!」
「わんちゃん車に興味ないの?」
「走り屋のマンガは好きだけど、車自体はそこまで…。興味あるとしてもカプチーノくらいかな」
「カプチーノ!わんちゃんっぽい」
「それ、小さいって意味ですか?」
「…そうかも」
「………言わなきゃよかった」
「ははは。カプチーノねぇ…」
「こーへいさんは外車フェチですよね?」
「フェチ…。ただメルセデスが好きなだけだよ」
「ふーん…」
「で?どうする?」
「とりあえずローキンとドリコスは無しです」
「ドリラブは?」
「……無し」
「わんパク?」
「もしくはモンペ(※モンスターペットの略)」
「モンペか…」
「確か交換したり戦わせたり出来るんですよね?」
「うん。完全にボケモンのパクリ」
「じゃぁ、モンペかなぁ。後はメンバーのみんなにも聞いてみて…」
「剛くんはふた葉ちゃんとローキンやってるよ」
「え!?ふた葉も!?」
「うん。昨日誘われたんだよね。でもドリファムやりたかったし、また今度って言ったよ」
「へぇ」
「レイくんはドリコスやってるみたいだし」
「最近オン率低いと思ったら、やっぱり違うのやってたんだ…」
「少し寂しいね」
「はい…」
「まぁ、近くに住んでるし。いつでも会えるよ」
「そうですね」
「そろそろドリファムにオンする?」
「はい」
貴子はパソコンを一美の部屋に戻して、2人は貴子のシングルベッドに横になる。
「…少し狭いね」
「…ですよね」
ベッド買い替えなきゃ…と思いながら眠りついた。