表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夢日記  作者: 森の小人
恋愛編
148/160

《season2》リアルの運命の人

夜8時

貴子は浩太郎と24時間営業のカフェに居る。駅から離れていることもあり、客がほとんど居ない。


「珍しく、会いたいって言われて来てみれば…」

浩太郎は、席についてからずっと俯いたままの貴子を見て、貴子が何故自分を呼び出したのかを理解した。

「この空気は、他に好きな人が居るの。だから別れましょう、な流れだな」

「ごめんなさい…」

「…はぁ……」

浩太郎は、分かってはいたけどやっぱりキツイな、と思った。

「俺じゃ、役不足か」

「……浩太郎さんと居ると凄く楽しいし、落ち着くけど…、恋愛の好きとは違うのかな…って」

「そうか…」

「ごめんなさい」

「謝んなよ」

「でも…」

「元はと言えば、あの時俺が貴子を無理やり…」

「ううん。浩太郎さんが助けてくれたから…。凄く嬉しかったよ」

「…………」

「凄く…、感謝してる」

「止めろよ。なんか同情されてる気になる」

「……ごめん」

「こーへいの事、好きなんだろ?」

「…………」

「もう分かってんだよ。今更隠すなよ」

「そうだよね…」

「俺から見れば、何であんなヤツが良いんだか理解出来ねぇけど」

「…私もそう思う」

「は?」

「私、こーへいさんの事を何も知らないし…」

「ふーん」

「でも…、何でかな。自然とこーへいさんに引き寄せられてる感じなんだよね…」

「少女マンガの読みすぎ」

「かもね」

貴子は少し笑った。

「俺にどうして欲しい?」

「え?」

「気まずくて顔も見たくねぇって言うならグループから抜けるし」

「ううん!…私としては…友達としていて欲しい…。凄く自分勝手な意見だけど」

「本当。自分勝手だな」

「…ごめん…」

「ま、良い。あのグループは気に入ってるし」

「ありがとう…」


「そういえば、佑太から百合の話聞いた?」

「ユウちゃん?ううん、何も」

「そっか」

「何?」

「あの2人、デキてる」

「え!?」

「付き合うとかじゃなく、まぁ…体の関係?」

「はい!?!?」

「貴子、興奮しすぎ」

店員が貴子を如何わしい顔で見ていた。

「ごめん…つい…」


貴子は数日前に百合と会話した内容を思い出す。

日曜日の夜、ドリファムで礼が百合と別れたと落ち込んでいて、別れた理由を百合に聞いてくれないかと頼まれて、電話をかけることになってしまったことがキッカケだ。


礼に頼まれた日の翌日、百合の携帯に電話をかけると、呼び出し音が2度聞こえた後に百合は出た。


『もしもし』

「百合さん!お疲れ様です。今大丈夫ですか?」

『ええ。礼たんのことでしょ?』

「あ…バレてました?」

『彼なら貴子さんにお願いすると思っただけよ』

「あはは。お見通しですね」

『別れた理由でも依頼された?』

「…はい」

『まぁ、色々とあってね…』

「色々…」

『ぶっちゃけて言えば、夜の問題よ』

「え…?」

『彼、一方的に動いて自分だけ達して終わり。そのまま疲れて寝ちゃうのよ?』

「な、なるほど…」

『もう最悪よ!最初はただ経験が少ないだけかと思って様子を見てたんだけど…やっぱりダメだったわ』

「…ははは」

『貴子さん』

「はい?」

『先週の金曜日、私、こーへいさんと2人で飲みに行ってたの』

「ああ、はい。礼さんに聞きました」

『その時ね…こーへいさんを誘惑しようとしたの』

「……へ?」

『友達のバーテンダーに頼んでカクテルにちょっと薬を入れて…』

「薬!?」

『睡眠薬みたいなものよ』

「そう、ですか…」

『でもね、失敗しちゃって…』

「失敗?」

『こーへいさん、私が見てない隙にグラスを交換したのよ!そのおかげで私はバーで爆睡よ!』

「………」

『しかもこーへいさんったら、支払い済ませて、1人でさっさと帰っちゃったのよ!?あり得る!?』

「ヒドいですね……」

『本当…格好悪くて、もうグループには居られなくて抜けたの』

「そうだったんですね……」

『ごめんね』

「何がですか?」

『こーへいさんを誘惑しようとしたこと』

「いえ!私は別に…」

『コウさんとは上手く行ってる?』

「ええ、まぁ…」

『夜の方は?』

「はははは」

『何?その笑い』

「とりあえず、礼さんよりはマシかなと思います」

『いいなー。私も早く次見つけなきゃ』

「切り替え早いですね」

『花の命は短いのよ』

「そうですね」

『そういうこと。礼たんにはテキトーな理由言っておけばいいから』

「テキトーって…」

『大丈夫よ。彼も切り替え早いタイプだと思うから』

「そうですか?」

『うん。それじゃぁ、機会があればまたお食事でもしましょうね』

「はい。お疲れ様です」

『うん。お疲れ様ー』




(礼さんも百合さんも切り替え早すぎ…)

「意外な組み合わせではあるよな」

「てか、ふた葉とは発展なし?」

「ふた葉?ああ…、剛と付き合ってるんじゃねぇの?」

「え!?そうなの!?」

「何も知らねぇの?」

「みんな…私には何も教えてくれないんだね…」

「グループ内でカップル出来すぎ。余ってんの、近江と阿久津と、…俺か」

「余ってるって…。でも大ちゃんはリアルで彼女居るらしいよ?」

「まぢか…。リア充かよ」

「ははは…」

「一美も礼と付き合ってるしな」

「あんな事があったのにね」

2人は妊娠騒動を思い出す。

「ああ。あれは傑作だったな」

「だね」

「……………」

「……………」

「帰るか……」

「そうだね……」


2人はカフェを出て浩太郎の車に乗り込んだ。



そして浩太郎の車は貴子の家を通り過ぎ、近くにあるガソリンスタンドに停まった。

「?」

「応援する気はねぇよ。ただ、好きなら面と向かって気持ちを伝えるべきなんじゃねぇかなと思って」

「…うん、ありがとう…」

「…じゃあな」

「…うん。またね」

貴子は車から降りて浩太郎に手を振った。


「あれ?貴子さん?」

浩太郎の車が去ると剛が貴子に気がついて駆け寄ってきた。

「さっきの浩太郎さんの車だよね?」

「うん…」

「デート帰り??ノロケに来たの?」

「そうじゃないよ」

貴子は店の中に居る航平と目が合い、軽く頭を下げる。

「航平さんに用?」

「…うん…。今、忙しいのかな?」

「ううん。見ての通り暇!暇!」

「はは。そっか」

「ちょっと待って。俺呼んでくるから」

「ありがとう」

剛が走って店内に入ると代わりに航平が店から1人で出てきた。剛は店長や他の従業員と中から貴子たちの様子を覗いている。

「お疲れ。珍しいね」

「お疲れ様です。あの…少しお話、出来ますか?」

「うん。見ての通り暇だからね」

航平は笑ったが、貴子は緊張のあまり、苦笑いしか出来なかった。


「さっきの車、コウさんの車だよね?デート帰り?」

「……実は…、別れたんです」

「え?わんちゃん、振られたの?」

「ち、違います」

「ってことは…」

「私から振ったんです」

「……そうなんだ。なんで?」

貴子は意外な質問に肩をビクッと震わせた。

「なんでって…」

「だって彼、凄くわんちゃんの事好きみたいだったし、大切してる感じしたんだけど?」

「…………」

今になって貴子の罪悪感が増した気がした。航平は無意識なのか、それともわざとなのか、貴子の顔を覗き込む。

「俺には言えない理由…?」

貴子は思わず顔を逸らす。

「それは……」

「それは、何?」

「…………」

顔を逸らした先には、剛たちがニヤニヤと笑っている姿があった。それに気付き貴子は顔を赤くした。

「ん?」

航平もそれを見て貴子の見ている先を見て微笑む。

「みんなに見せつけようか?」

「え?」

航平は貴子を抱きしめる。剛達の声は聞こえないが見ただけで「おおおおお」と騒いでいるのが分かる。

「な…」

「ん?」

「何…してるのでしょうか…?」

「なんでカタコト?」

航平はクスッと笑うと先ほどよりキツく抱きしめる。

「わんちゃんの口から直接聞きたい」

それを聞いて貴子は、航平は自分の言いたいことをすでに気付いていたのだと知った。

「私…こーへいさんの事が好きです」

「どのくらい?」

「え!?えーと…すごく?」

「凄くってどのくらい?」

「………たくさん?」

「ははは。そっか」

航平は貴子を離して貴子の顔をまじまじと見つめた。

「………///」

「もう、待たないから」

「え?」

「ずっと待ってた。だからもう待たない」

航平の唇が貴子の唇に触れる。貴子が目を閉じると一粒の涙が溢れた…気がした。


その様子を見ていた剛たちは、叫びながら一斉に店から飛び出してくる。

「何!?」

「胴上げだー!」

店長がそう言うと従業員たちは航平を持ち上げる。

貴子は呆気にとられ、ただ胴上げされる航平を見ていた。

「貴子さん、良かったね」

と剛は貴子に抱きつく。

「え?」

「ずっと、航平さんの事好きだったんじゃないの?」

「?」

剛は何も言わずただ笑って胴上げに加わった。


「あ、お客さんだ」

誰かがそう言うと、急いで航平を下ろして各々仕事に戻る。貴子はポツンと立ち、車の中から変な目で見られていた。

「あははは…」

苦笑いで微笑み返すと、客は顔を逸らしてさっさとその場から去って行った。

「わんちゃん」

客の対応を終えた航平が貴子に声をかける。

「?」

「今日、ウチに来ない?」

「え…」

「今日はもう少し一緒に居たいんだけど」

「………/// 一旦家に帰って…準備して来ても良いですか…?」

「うん。仕事終わったら連絡するね」

「分かりました。では…後で…」

「うん。後でね」


貴子は顔を真っ赤にしながら家に帰った。



家に帰ると貴子はすぐにシャワーを浴びて念入りにローションを塗る。下着はもちろん1番のお気に入り。そして航平に貰ったフレグランスを振りかける。

「貴子。そんなに気合い入れて、どこか行くつもりなの?」

母親が不思議そうに貴子を見た。

「ちょっとね。もしかしたら…、帰るの朝になるかも」

「………そう。気をつけてね」

「うん」

貴子は必要になるかもしれない物を鞄に詰め込み、航平から連絡が来るまで髪をとかし続けた。





続く…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ