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夢日記  作者: 森の小人
恋愛編
139/160

《season2》リアルの結末


翌日、事態は更に悪化していた。


夕飯時に何故か食事が1人分多く用意されていた。

「あれ?なんか多くない?」

「いいえ。これでいいの」

母親がそういうと、家のチャイムが鳴った。

母親が玄関に向かうと「お邪魔します」と聞き覚えのある声がした。

「な!?」

ダイニングルームに呼ばれ入ってきたのは、紛れもなく浩太郎だった。浩太郎は何故自分だけ呼ばれたのだろうと不思議に思いながら席につく。

「ちょっと!何で!?何で浩太郎さんが!?」

「私が連絡したのよ」

と母親がドヤ顔で言う。

「どうやって?」

「ジムに電話した」

「……………」

貴子は頭を抱えた。貴子の横に座る浩太郎は不思議そうに貴子を見た。

「急に呼び出されたんだけど、何かあった?」

「あははは」

貴子は苦笑いし、それを見た一美は罪悪感で顔を歪めた。

「食事をする前に、君に言うことがある」

と父親は浩太郎を見て言った。

「?」

「貴子は、妊娠している」

「………………」

浩太郎は'まさか'という顔をしてから貴子を見つめた。

「本当……なのか?」

浩太郎は混乱していた。

確かに合体はしたがちゃんとゴムは付けていた。合体時もゴムが破れていたことはないし、それらしい事はなかったはずだ。

「えーっと…その…」

貴子は曖昧に答える。

(もしかして…、元彼の子なのか…?)

と、浩太郎は誤解した。浩太郎は、貴子が親に元彼からDVの被害を受けていたことを内緒にしているのは知っていた。

「責任、取ってくれるな?」

父親は浩太郎に言うと

「一生かけて貴子さんを幸せにしてみせます!」

と言って立ち上がった。

「え?え?何?」

「貴子…、ごめん。気づいてあげられなくて…」

「いや、違う。これは」

「貴子!愛してる」

浩太郎は貴子を抱きしめると、祖父母が拍手し始める。そして双子もとりあえず拍手し、両親は共に涙目で貴子たちを見つめた。

(…どうしよう…)



貴子が何も言えずに夕飯は始まった。

父親は嬉しそうに浩太郎と雑談しながら食事をしている。

母親は双子の面倒を見ながら、近々生まれるであろう孫のことを考えていた。


その時、一美が口を開く。


「お姉ちゃんは、妊娠してない」

その場が一瞬固まった。

「一美!」

「良いの。本当のこと、言わなきゃ…」

「何の話?」

「あの検査薬、私のなの」


「………………」


父親の手から箸が溢れ落ちる。

「何……?」

「お父さん、お母さん、ごめんなさい。妊娠してるのは私なの!」


一美は貴子に話した内容を全て打ち明けた。


「………………」

父親と母親は唖然とし、口を開いたまま。

「てことは…」

浩太郎は貴子を見た。

「安心して。私は妊娠してないよ」

そう言うと浩太郎はガッカリして肩を落とした。


そして重たい空気が家中に漂うと、それを払拭するかのように勢いよく家のチャイムが鳴った。

「…俊介さんかも…」

一美が立ち上がると父親も立ち上がり

「殺す…」

と呟いた。

「え!?」

浩太郎がなんとか父親を座らせ、一美が玄関のドアを開けると、俊介は不思議そうな顔をして家の中に入った。


「パパ〜」

「パパ〜」

双子は俊介に抱きつく。

「いい子にしてたか?」

「うん」

「うん」

俊介は双子の頭を撫でた。

「あの…、俊介くん」

父親は怒りを抑えながら

「少し、座ってくれないか?」

と言った。

「…はい」

俊介は訳がわからないまま、椅子に座る。

「単刀直入に言う。一美は妊娠している」

「…え?」

「君、身に覚えはあるか?」

「…………」

俊介は驚いたままの顔で一美を見ると、一美は泣いていた。

「俺の……子…?」

一美は泣きながら首を縦に振った。俊介の目が泳ぎ、体が震えだした。

「どうなんだ?!身に覚えがあるというのか!?」

父親はとうとう我慢ならず怒鳴ると、

「す、すみませんでした!!!」

俊介は椅子から降りて床に土下座した。

「やはり…君なんだな…」

「はい…。酔った勢いとは言え…大変申し訳ありません」

「謝って済む問題じゃない!」

「はい!!!」

「で?一美…、お前はどうしたいんだ?」

全員が一美に注目する。

「……私は……………





…………産めない…」

「え?」

「私、まだ母親にはなれない」

「下ろすのか…?」

「それでいいの?」

「ずっと考えてたんだけど…、私、まだ何にもやってない。初任給も貰ってないし、奨学金の支払いあるし…それに」

一美は貴子を見た。

「…お姉ちゃんより先には子供を産まないって決めてるから」

「一美……」

(凄いプレッシャーだよぉ…)

「そうか…」

「………」

「治療費はお、俺が出します!」

「ったりめーだろ」

浩太郎は機嫌悪そうに俊介を睨んだ。




この日のことは、もちろん俊介の親である大介たちに知れ渡り、結果ガソリンスタンド全員に知られることとなった。



「あーあ」

夜道を歩きながら浩太郎がぼやいた。

「何?」

「貴子と結婚出来るかと思ったのに」

「付き合い始めたばっかりじゃん」

「でも」

「ん?」

「親父さんの許可は貰った」

「何の?」

「子作りの」

「は!?」

「いつでも良いって言われた」

「もう!お父さんってば!」

「後は貴子の気持ち次第、だな」

「…子供なんてまだ無理だよ。……やりたいことも明確に決まってないのに…」

「そうだな…」

「怒ってる?」

「別に」

「焦ってる?」

「別に」

「嫌いになった?」

浩太郎は貴子の頭を撫でて笑った。

「ならねぇよ。…………つーかさ」

「ん?」

「スタンドでは貴子が妊娠してるって噂されてんだよな?」

「うん。明日には誤解解けると思うけど」

「てことは」

「?」

「こーへいもこのこと知ってたんじゃねーのかな?」

「んー……、たぶん」

「だよな」

「何?」

「あいつの場合、俺を殴りに来ても可笑しくねぇのに」

「そうかな?」

「逆の立場なら絶対殴るわ」

「今度こそ警察に捕まるよ?」

「今度こそって何だよ」

「ふふふ」


貴子は足を止めて立ち止まる。

「ねぇ…」

「何?」

「来月、旅行に行かない?」

「旅行?」

「うん。……2人で」

「行く!」

「即答…。旅行っていうか田舎に泊まろう的な」

「もしかして、ばあちゃん家に行くとかいうやつ?」

「うん。やっぱり…嫌?」

「いや。日にちがはっきりしたら教えて。休み取るから」

「…うん…///」

「何?照れてる?」

「て、照れてないよ」

「顔赤くな」

「なってない」




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