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夢日記  作者: 森の小人
恋愛編
136/160

《season2》リアルの涙

以前貴子が渡辺の送別会に使ったバーのカウンターに、百合と航平が座っている。


「ユーリさんに呼ばれるなんて意外でした」

「そう?」

「レイ君は良いんですか?」

「礼たんには、こーへいさんと飲みに行くって言ってあるわ。それに今頃コウさん達と飲んでるはずよ」

「そうですか」

「…貴子さんから聞いたわ。仕事辞めたんだって?」

「前々から辞めることになってたんです。たまたまわんちゃんが居た部署の署長が予定より早く辞めることになって、俺は次の署長が異動するまでの穴埋めしただけで」

「そっかー。でも思い切ったわね。ガソリンスタンドに転職なんて」

「そうですね。でもやり甲斐はありますよ。体動かすし」

「…そう」

百合はため息を吐くようにそう言った。

「何ですか?」

「……まだ、貴子さんのこと諦めてないの?」

「…どうですかね…」

「私はもう、こーへいさんに協力してあげられないわよ?」

「分かってます。俺だって2人の中を無理やり引き裂こうとは思ってないです」

「そう?」

「ただ、いざという時に頼れる存在では居たいです」

「……本当、こーへいさんって良い男ね」

「何ですか?急に」

「礼たんよりに先に出会いたかったわ」

「ははは。それは残念でしたね」

百合はカウンターに肘をついて航平を見て思う、

(…本当…残念…)

その後、百合は微笑んだ。

「乾杯しましょ。新しいスタートに」

「そうですね」

バーテンダーに合図すると、2人の前にカクテルの入ったグラスが差し出される。

「乾杯」

「乾杯………」








一方その頃…


田中兄弟の住む部屋には、2人と貴子、一美、礼がとあるゲームで盛り上がっていた。


「あーーーー!!!」

「やったーーー!」

「またかよ…」

「あはははは」

5人は貴子が持ってきた「桃ヒゲ危機一髪」をやっていて、負けた人がテキーラのショットを飲む決まりだ。

「ユウちゃん、弱すぎ」

「これで4回連続…」

「これ絶対ぇ、仕掛けてあるだろ!?」

「もう一回やる?」

「ああ!次こそ負けねぇ」


最終的に一美以外が2回ずつ負け、佑太郎は6回も負けた。


「あああ…グラグラする」

「あれだけ飲めばそうだよね」

「俺もフラフラする」

「お前2回しか飲んでねぇだろっ」

「一美ちゃんは1回も飲んでないし」

「悪運は良い方だからね!」

「とりあえず水飲んで」

貴子はソファでぐったりする男3人にコップを渡す。

「貴子は平気?」

「うん。軽く酔ってるけど。へへへ」

「礼さんってお酒弱かったんですね」

「……うん。特に洋酒は…」

「だらしねぇなー。だから百合の尻に敷かれてんだよ」

「それ言うなよ…」

「尻に敷かれてるんですか?」

「なんていうか、逆らえない」

「礼さん…カッコ悪い」

「うっ……」

「でもドリファムではラブラブに見えるけど?」

「ドMはまだまだ男と女について分かってねぇ」

「はい!?」

「こいつ、百合を満足させてねぇってこと」

「?」

「あ!お姉ちゃん、そろそろ帰らないと」

時計の針は8時を差していた。

「ん?うん、そうだね」

「もう帰んのかよ」

「うん。明日は双子がウチに来てお泊まりする予定だから、危ない物とかを隠しておかなきゃいけなくて」

「あんなガキなんかテキトーに走らせて、テキトーに寝かしとけ」

「出来ないし!」

「なら…俺、送る……」

浩太郎は立ち上がるが、歩くのも辛そうだった。

「はは、良いよ。ゆっくり休んで」

「……悪い…」

「じゃぁ、お先にー」

「また後でねー」


貴子と一美は浩太郎のマンションを出た。



「ふんふんふん♪♪♪♪♪」

貴子は酔っているせいで気分が良いのか鼻歌を歌っている。

その少し後ろを歩く一美は下を向き、そして立ち止まった。

「お姉ちゃん」

「ん?」

貴子は一美の方を振り返る。明らかに元気がないように見えた。

「どうしたの?」

「………あのさ…」

「ん?」

「私……………………できたかも」

「え?」

「できちゃったかも…」

「ログハウスのこと?」

「そうじゃなくて……」

「?」

「妊娠………したかも」




「…………………………………………は?」




一美は恐る恐る貴子の顔を見た。驚いているというよりは、意味が分からないという顔をしている。

「え?今、妊娠って言った?聞き間違い…?」

「……妊娠したかもしれない」

「な……。待って。どうやったら妊娠するか知ってる?手繋いだり、キスしただけじゃ妊娠しないよ?」

「わ、分かってるよ!そのくらい…」

「………つまり…、そういう行為をした、ってこと……?」

「………うん」

「いつ!?誰と!?どこで!?地球が何回回った時!?」

「………お姉ちゃん、声大きいよ…」

貴子はハッとして、大きく深呼吸をした。

「少し…歩こうか…」

「うん……」

そして2人は帰り道とは別の道を歩き始めた。


「実は…この前のお花見の時に…俊介さんと…」

「……………俊介さんって……、まさか、おじさんの息子さん!?」

俊介は大介の息子で、双子の父親でもある。

「うん……」

「何で俊介さん?」

「お花見で話してたら話が合って…。酔っ払ってたのもあって流れで…」

貴子ははぁ、と大きくため息を吐いた。

(明日どんな顔して合えばいいんだろ…)

「でも、こんなはずじゃなかった。中に出さないでって言ったのに…」

貴子は何も言えなくなり、天を仰いだ。

「大丈夫だって思いたかったんだけど、いつも生理が来る頃なのに、まだ来なくて…」

「まだ妊娠したって決まったわけじゃないってこと?」

「うん……」

「検査は?」

「…まだ…」

「検査…するしかないね…」

「お姉ちゃん…」

「ん?」

「どうしよう…」

いつも気の強い一美が珍しく泣いていた。

「一美…」

貴子は一美の頭を撫でる。

「大丈夫。私は一美の味方だから」

「お姉ちゃん…っ…っ…っ」

「とりあえず、お父さん達にはまだ内緒だね」

「うん………っ…っ」




貴子は今、手に大量の汗を握っている。

一美の代わりに妊娠検査薬を買いに、ガソリンスタンド横のコンビニに来ていた。

(…絶対誤解されるだろうな…)

家の近くにはコンビニが2店しかなく、そのうちの1店には検査薬は置いていなかった。その為仕方なくここに来たわけだが…

「あれ?犬塚さん?」

「あ……お疲れ様です…」

コンビニの従業員全員にはすでに顔を知られている。しかもこういう時に限って1番会いたくない人に会ったりする。

「あら〜!貴ちゃん。珍しいわねぇ」

レジにはコンビニの店長である立花が立っていた。40代男性、自他共に認める《オカマ》でもある。

「店長……」

「何?急に生理でも来ちゃった?」

「いえ…その…これ…」

貴子は他の従業員に見つからないように手で隠しながら検査薬を差し出す。

「あらっ!貴ちゃんもしかして…」

「店長!しーー!」

「あらあら♡みんなにはまだ内緒なのねぇ」

「これ、私のじゃなくて!人に頼まれただけなんです!」

「そうなの〜」

「このことは!絶対誰にも言わないで下さいね!」

「分かってるわよぉ」

「本当に!私じゃないんですから!!」

貴子は立花から袋を受け取ると、顔を赤くしながら急いで店を出た。


「貴子さ…」

剛がコンビニから出てきた貴子に声をかけたが、貴子は気づかずに走って家の方に向かっていってしまった。


剛は仕事を終えてコンビニに入ると、従業員がレジに集まり何か話していた。

「お疲れ様ー!何やってるんですか?」

「あら!剛ちゃん!良いところに!」

「何?」

「それがね…………」



その後のことは誰もが想像できる、最悪のシナリオになった。





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