《season2》リアルのお買い物デート?
田中兄弟の住むマンションの駐車場にて。
浩太郎と貴子は車に乗っている。
「浩太郎さん、今日機嫌悪いね…」
「ああ。理由が3つある」
「何?」
「まず1つ!佑太は良いとして、なんで剛が乗ってんだよ!?」
浩太郎は後ろに座る剛を睨んだ。
「はは。俺車持ってないんだよね。買い物行くっていうから貴子さんにお願いしたんだよ」
「はは、じゃねーよ。1人で行け。で、次にお前!」
浩太郎は剛の横に座っている航平を指差す。
「はは。俺が誘ったんだよ」
「つーか、車持ってんだろ?剛と2人で行けよ」
「まあまあ、落ち着いて」
「うるせーよ」
「浩太郎さん、興奮しすぎ。まぁ、車一台で行ったほうが地球に優しいでしょ?」
「……はぁ…あり得ねぇ」
「はは」
剛はまだ笑っている。
「剛、ガソリン代はお前持ちだからな」
「え…」
「それと3つ目…」
「ん?」
「何で貴子が運転席にいるんだよ」
「え?ダメ?」
「…………」
「大丈夫!壊したりしないよ!……擦るかもしれないけど♡」
「チェンジ!!!!」
「…はい……」
5人が向かったのはとある大きな雑貨店、【ドンと来て掘って】だ。
「凄い種類あるね!」
そして5人が居るのはトレーニング用品のコーナーで、貴子達はダンベルなどを見ている。
「あんまり買っても後々邪魔になるからな」
「そうなんだよねー」
「こーいうのにしておけば?」
浩太郎は、ゴムのチューブが入っている箱を貴子に渡す。
「ゴムの強度が違うから、複数持っておけば色んな部位を鍛えられる」
「そうなんだ!じゃあこれにする!」
「何買うの?」
と、貴子と浩太郎の間に航平が割り込む。
「お前なぁ…」
浩太郎が明らかに不機嫌そうな顔をした。
「こーへいさんも買ったらどうですか?」
「え!?」
「おじさんに鍛えろって言われてましたよね、ふふふ」
貴子の言葉に航平は苦笑いし、
「何だ?俺が鍛えてやろうか?」
と佑太郎が割り込んでくる。
「えー!ズルい!俺も鍛えてよー!」
と、今度は剛まで会話に入る。
「……うざ…」
浩太郎はウンザリした。
貴子と2人きりで買い物デートをするつもりだった浩太郎は【0.03mm】と書かれた箱だけ買って店を出た。
「お待たせ!あれ?何買ったの?」
貴子が浩太郎の持っている黄色の袋を見て尋ねると
「な、なんでもねぇよ…」
とだけ答え、その箱の正体を知る佑太郎は浩太郎を見ながら陰で笑っていた。
2時間ほどかけて店を回り、全員買い物を終えて車に乗り込むと、車は剛の働くガソリンスタンドへ向かって走り出した。
ガソリンスタンドに着くと剛は車から降りる。
「今日はありがとう!またお願いします」
「もう乗せてやんねーよ」
笑ってから店の中に入る。剛はこれから仕事のようだ。
「つーか、お前降りねぇの?」
佑太郎が航平を見て言った。
「わんちゃんは降りないの?」
「シカトかよ、こら」
「私はこれから2人の家に戻ってご飯作る予定なので…」
「そっか…」
浩太郎は後ろを振り向いて航平を見る。
「お前も来るか?」
「はぁ?何言って」
「別に良いんじゃねぇの?どうする?」
「…………」
航平は少し考えてから
「お邪魔させてもらいます」
と言った。
「じゃ、買い出ししてから戻るか」
「マヂか…」
「俺が行くの、気に入りません?」
航平は佑太郎を見て微笑んだ。
「別に…」
(浩太郎のやつ、何考えてんだよ…)
4人はスーパーで食料を買うと浩太郎達の住むマンションへと戻った。
「へぇ…。広いですね」
「テキトーに座って」
浩太郎は航平にそう言うと買ってきた食料を冷蔵庫にしまい始める。
「じゃじゃーん!どう?」
貴子は黄色い袋から値札の付いたエプロンを取り出した。
「「ぶっっっ」」
浩太郎と佑太郎は思わず吹き出す。
「お前…何買ってんだよ」
「え?面白くない?」
「それ、いつ…」
「みんなが怪しいコーナーに行ってる時に発見した」
「怪しいって…」
(あ、アダルトコーナーに行ったことバレてたのか…)
「ん?何?何?」
航平は座っていたソファから立ち上がり、貴子が持っているエプロンに視線を移す。
「え!?」
そのエプロンは透明なプラスチックの袋に入れられ、ご丁寧にもそれを着ているモデルの写真まで貼ってある。
「お、お前…そういう趣味」
「ないです!」
「じゃあなんで買ったんだよ!」
「んー、面白いから?でも、さすがに服は着るから!」
「え?裸じゃねぇの?」
浩太郎が少し残念そうに言う。
「当たり前でしょ!火傷したらどーするの!」
「「そういう問題かよ!」」
「他にも面白いもの買ったけど…後でね」
貴子は透明なプラスチックの袋を破り、ヒラヒラの白いレースエプロンを着て料理に取り掛かった。
佑太郎はご飯が出来るまで部屋にこもり、航平はソファに座りながらキッチンを見ていた。
(そういうことか…)
航平はそう思った。
キッチンでは貴子と浩太郎が仲良く料理をしている。浩太郎もそこそこ料理が出来、貴子の邪魔になることなく料理を作っていた。
それを見せつけられているような気になる。悔しいが2人の間に入ることは出来なかった。
ふと顔を浩太郎の部屋に向ける。開けっ放しにしてあるせいで中が見えた。
そのせいで見る気は無かったが見たくないものが目に入ってしまった。ゴミ箱に捨てられている【0.03mm】と書かれた空の箱を。
食事を終え程なくして航平は浩太郎たちの家を出た。
「はぁ」
と大きなため息を吐いてから夜空を仰ぐと浩太郎たちの部屋が見えた。
「運命か…」
小さく呟いてから航平は駅に向かって歩き出した。
※0.03mm…ここで詳細は明かせませんww
知らない方はググって下さいm(._.)m