《season2》リアルの動き出した歯車
ドリームファームのとあるカフェに貴子とこーへいが向かい合って座っている。
今日こーへいに「家具を買いたいから一緒に来てほしい」と頼まれたはずなのに、こーへいは何故か家具屋には向かわずカフェに入り、今に至る。
「あの…家具屋さんに行かないんですか?」
「うん。…その前に、報告したくて」
「報告?」
「正式に…離婚したんだ」
「え?」
「澄子さんに聞いてるよね?俺がまだ離婚してなかったこと」
「…はい…」
「本当にごめん。離婚してないのに、わんちゃんに告白したこと…。無責任だった」
「………」
「あの人とは前から別居してて、上手くは行ってなかったんだ。言い訳に聞こえるかもしれないけど」
「…それは、………こーへいさんが、小林さんを女性として見ていなかったからですよね…?」
「…え?」
「小林さん言ってました。結婚してもこーへいさんが小林さんを愛してなかったから、浮気に走った、って」
「それは違うよ。……これをわんちゃんに言うのは変だけど…、俺は澄子さんに一目惚れしたんだ」
「え?」
「澄子さんの父親が俺の上司だったこともあって、澄子さんを紹介してもらって…そして俺たちは結婚した。けど、結婚したら澄子さんが浪費癖の悪い人だって分かって」
「………」
「毎日のように高級なものを買って、それを注意すると今度は…家に帰って来なくなってさ」
「それって…」
「浮気してたんだ。結婚する前から複数の男性と関係があったみたいで、俺は探偵に依頼して証拠を撮ってもらった」
「そんな……」
「俺は澄子さんに浮気を止めてもらうように言ったんだけど、証拠を見せられた澄子さんは…反省するどころか、ドリームツールを使って浮気を始めたんだ」
「もしかして…浮気の為に、ドリファムを?」
「うん。そのことを澄子さんの親友に聞いて、俺もドリファムを始めた…」
「そう…だったんですね…」
「けど、ドリファムで証拠を撮るのは出来ない。色々とネットで調べると、ドリームツールを作っている会社が、こういう時の相談所を設けていることが分かったんだ」
「相談所?」
「浮気場所としてドリームツールを使う人たちが増えてきたせいだと思うんだけど、そういう問題を解決してくれる所」
「へぇ…」
「詳しく言うと、ドリームツール内で選ばれた調査員のような人達が、対象者を見張って、記録して、それを現実の裁判でも有効になる書類を作る、ということをしている」
「なるほど…」
「その書類を提出して、現実の裁判所でようやく離婚を認められた」
「へぇ……」
「実はグループにいる緑さんはその一員なんだよ」
「え!?知らなかった!」
「ははは、だろうね。他にも何人か居るんだけどね」
「へぇ…」
「それで…」
「?」
「緑さんに聞いたよ…」
「え?」
「わんちゃん達が恋人限定マップで澄子さんと会話してた内容…」
「…………嘘……」
「ごめん。でも!俺はそんな事は気にしてないんだ!」
「…………」
「ただ…ツライ目に遭ってたのに…気付けてあげられなくて、ごめん…」
「……良いんです……もう、解決したことなので…」
「え?」
「彼、また転勤して海外に行ったみたいで。たぶん、もう会うことないと思います」
「そっか…。良かった……」
「…はい」
「澄子さんも、もうドリファムに来ることは無いよ」
「そうなんですか?」
「うん。彼女、父親の逆鱗に触れたみたいで、彼女も海外に行かされたんだ。彼女、日本語以外話せないのに。はは」
「そ、そうなんですか…」
「ドリームツールは日本でしかオンライン出来ないし。……だから、もう…心配しなくて良い」
「え…?」
「いや…。何でもない。これからも宜しく」
こーへいは笑って貴子に手を差し出した。
「……はい…」
そして2人は握手する。
「じゃ、家具屋に行こうか!」
「……はい…」