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夢日記  作者: 森の小人
恋愛編
115/160

《season2》[番外編]ニコラスとふた葉Ⅲ

ふた葉はニコラスとしてドリームファームの世界にいた。かと言って何をするでもなく家でただ座っていた。

するとそこにズームから

『最下層の丘に来て欲しい』

というメッセージを受け取り、謝罪でもする気なのかな、と思いながら丘に向かと、すでにズームが待っていた。

手には真っ赤な薔薇の花束を持っている。





そこから少し離れた茂みでユウ、コウ、貴子が隠れて2人の様子を見ていた。

「ほら、ニコラスの顔。薔薇の花束に引いてる」

「は?告るなら普通薔薇の花束だろ」

「プロポーズじゃあるまいし」

「お前、そんな事だから未だに独身なんだよ」

「はい!?」

「しっ。2人とも静かに」






「あ、ニコラス…久しぶりだね…」

「うん」

「あ、えっと、これ!」

ズームは薔薇の花束をニコラスに押し付けるように渡した。

「お詫びのつもり?」

「え?」

「わんちゃんに聞いたよ。ズームが僕は女だってバラしたんでしょ?」

「秘密だった…?」

「みんなには言わないって約束したじゃん」

「そうだった…?」

「ひどいよ…」

「ご、ごめん…つい」

「つい、って何!?」






一方茂みで2人の様子を見ている3人は

「なんか雲行き怪しくない?」

「なんで告られてキレてんだよ、あいつ」

「やっぱり薔薇が気に入らなかったんだよ」

「はぁ?」

「告白するならカーネーションとか…」

「2人ともうるせー!あいつらにバレたらどうすんだよ」

「あ、そうだね…」

隠れて見ていることはズームすら知らない。







「俺…ニコラスのこと、ずっと好きだったんだ…」

「……ズームの事、そういう風に見れない…」

「……ユウさんが好きだから?」

「え?」

「知ってたよ。ニコラスがユウさんのこと好きなの…」

「……」

「でも、ユウさんはニコラスの事、女としてみてない」

「分かってる…そんなこと」

「その花束、ユウさんが俺にくれたんだ」

「え?」

「俺がニコラスのこと好きって言ったら協力してくれたんだよ。これの意味、分かるよね?」

「………もう、どうでもいいよ」

「え?」

「僕、ドリファム辞める…」

「それって、違うゲームに移るってこと?」

「ううん…。ドリームツール自体使わないつもり」

「なんで!?」

「元々僕が使っていい物じゃなかったし…」

「嫌だよ、そんなの!何でもするから!辞めないで!」




「(貴子)あれ?ズーム泣いてない?」

「(ユウ)キモいこと言うなよ」

「(貴子)振られたのかな?」

「(ユウ)さあな」

「(貴子)ここからじゃ会話が聞こえない…」






「もう、決めたんだ」

「そんな…、俺…」

「ごめんね。今までありがとう」

「団長……」

「少し、1人になりたいんだけど…」

「…分かった…」

ズームは肩を落として丘から去っていった。



一部始終を見ていた3人はズームに聞かなくても状況を把握した。

「玉砕!って感じだね…」

「だな」

「指導したのがユウちゃんじゃ無理もないよ」

「元々無理があったんだよ。あの年の差じゃ」

「え!?今更それ言う?」

「だってあいつの実年齢45だぞ?」

「え!?30代じゃないの?」

「45歳独身。しかもバツなし」

「うわ………」

「な?ドン引きだろ?あははは」

「いや、笑えないし…」

「そろそろ帰るか」

「…………」

「貴子、どうした?」

「………あのね…」






ニコラスはズームを見送ると仰向けに寝て、夜空を見上げながら色んなことを思い出していた。

エルフの谷底でユウに出会ってから、リアルでの出来事、ドリームファームでユウと過ごした時間。特別何があったわけでもないが、今思うとそれらが大切な時間だったと改めて気づく。


「……よっ!」

ニコラスの見ていた夜空に突如ユウの顔が現れる。

「わっ!」

ニコラスは驚き勢いよく体を起こした。

「なんでここに?」

「たまたまだよ」

ユウはニコラスの横に寝転がった。

「たまたま?」

「ああ、たまたま。お前こそ何黄昏てんだよ」

「………」

「シカトかよ」

「…ユウさんは、僕が女だって聞いたんでしょ?」

「お前、そんなことで落ち込んでんのか?」

「僕にとっては、重大なことなんだよ!」

「性別なんてどうでも良くね?」

「え?」

「そりゃあ、エロい女とヤる時に、服脱がしてタマ付いてたら吐くけど、こっちで性別違ってても良いんじゃね?」

「………僕にとっては、良くない…」

「俺、てっきり…」

「え?」

「お前があっち系なのかと思ってた」

「…あっち系?」

「ほら、女に生まれても心は男、みたいな」

「ああ、性同一性なんとか?」

「そう、それ」

「……!ってことは、僕が女だって知ってたの?」

「は?当たり前ぇだろ」

「……そうなんだ…」

「だから俺は何も言わなかったし、気にもしてなかった」

「僕さ…」

「あ?」

「ユウさんのこと、好き…なんだよね」

ユウは夜空から視線を移しニコラスを見つめた。

「……ガチで?」

「でも、ユウさんはわんちゃんの事が好きなんでしょ?」

ユウは何も言わずただニコラスを見つめている。

「分かってるんだ!僕なんか、ユウさんには相応しくないし、相手にもされないし…僕、わんちゃんとは違うし…」

「…お前の言う通りだ」

「え?」

「俺はあいつが好きだ」

「………やっぱり」

「けど、俺なんかあいつには相応しくねぇし、相手にもされねぇ。俺は浩太とは違う」

「そんな事ないよ!ユウさんは凄く優しくて、思いやりのある人だよ!僕は知ってる」

「ふっ」

ユウは鼻で笑った。

「何…?」

「その言葉、そのままそっくりお前に返す」

「え?」

「お前がいい奴だってことくらい俺にも分かってるって言ってんだよ」

「……ユウさん…」

「俺は妥協しねぇ男だ。俺と付き合いてぇつーなら、俺に相応しい女になれよ」

「……」

ユウは立ち上がり、ニコラスに手を差し伸べる。

「ドリファム、辞めんなよ」

「……うん…」

ニコラスがユウの手を取り立ち上がると、少し離れた茂みでコウと貴子がガッツポーズしているのが見えた。

「あ…ははは」

ニコラスは急に恥ずかしくなって笑ってしまった。

「何笑ってんだよ。気持ち悪ぃなぁ」

「……へへへ」




今日もまた、星のたくさん降る夜でした。



めでたしめでたし。



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