《season2》リアルのエイプリルフール
その日の夜、ドリファム内では密かに会議が行われていた。
「やっぱりウサコさんが小林さんだったのか」
と大海が言った。
「え!?前に言ってたストーカーってウサコさんのことだったの!?」
「うん。わんちゃんが怖がるかなと思って言わなかったんだよね」
「でもなんで俺がその小林ってやつをグループに入れなきゃいけねーんだよ」
「かと言ってこーへいさんを追放するのもなぁ」
「あいつのせいだろ?離婚調停ってことはまだ離婚してねぇってことだろ?」
「んー、そうなの?」
「そうだよ」
「小林を入れるとかあり得ねぇ」
「そうだよ、貴子さん。俺せっかくあの人から逃げてきたのに…」
「でもさ、こーへいさんとの関係に協力したら、ストーカーされることは無いんじゃない?」
「ああいう地味な女ほどしつこい」
そうアクマが言うと、やけに説得力があった。
「経験者は語る、だな」
「あー!じゃあどうしろって言うのよー」
「だから、こーへいを追放させて」
「何?何?何の話?」
そこにエルフ精鋭グループのメンバーの1人が話に入ろうとする。
「うわぁ、面倒なのが来た」
「こらこら!面倒とか言わんでくれよー!」
グループの管理人、ニコラスが言った。
「あー、うぜぇ。俺、まぢでこいつ嫌い」
ユウがため息を吐く。
「またまたぁー!本当は好きなく・せ・に♡」
ユウは聞こえないフリをした。
「団長ー!遊ぼー!」
エルフ精鋭グループのズームがニコラスに言った。
「今!俺はユウさんと遊んでるの!」
「遊んでねーよ!」
「団長の浮気者〜!」
「(コウ)………何なんだ?このやりとり」
「(レイ)………さぁ?…」
貴子たちは特に気にせず話を進めている。
「もしくは…」
「ん?」
「私がこの組合から抜けるか」
「は!?」
「え!?」
「あり得ない」
「そしたらここに来れねぇだろ」
「家には入れるじゃん」
「釣りは?」
「キャンプ場とか、海とか?」
「えーー、ヤダ!」
「わん汰が抜けるなら俺も抜ける」
アクマが貴子のことを見つめながら言った。
「それなら俺も抜ける」
コウがそう言うと
「じゃあ俺も」
とユウが言い、全員が
「どうぞ、どうぞ」
と言った。
「うるせーよ!」
「ねぇ、わんちゃん」
「ん?」
「本当に良いの?こーへいさんのこと」
「…うん」
「本当に?」
レイも尋ねる。
「うん」
(こんな時にユーリが居ればなぁ…)
レイは強く思った。
結局話はまとまらず、うやむやになる。唯一の救いと言えばこーへいがオンラインしていないことだ。
「気晴らしに、虫取りに行く?」
ニコラスはスキップしながらユウに近づく。
「行かねーし。つーか近寄んな」
「そんなに照れなくても良いんだぞ♡」
「このオカマどうにかしてくれ、まぢで」
「今日は畑仕事しなきゃ。イベント用に畝増やさないと!あと小屋掃除も」
「じゃあ俺はそこで釣りやる」
「じゃあ俺も」
「え?虫取りは?」
「1人で行ってこいよ」
「ぶー!」
ニコラスは仕方なく貴子の家のリビングにあるソファでくつろぐ。
「つーか、他のメンバーはどうしたんだよ」
「限定依頼やってる」
「ふーん」
ユウも別のソファに寝転がる。
コウは貴子の居る小屋に行く。
「そういえば、掃除、ありがとうな。それと、飯も作ってくれて助かった」
「冷蔵庫にあるもので作ったんだけど、美味しかった?」
「ああ」
「そっか。良かった」
「なんなら…」
「ん?」
「俺ん家に、居座ってもいいからな…」
「え?」
「な!なんでもねぇよ」
貴子はコウの反応に笑った。
「何だよ…」
「ううん。ただ…」
「?」
「もしかしたら…、浩太郎さんのこと、好きになったかも」
「……え…」
「ふふふ」
「……確か今日、エイプリルフールの日じゃねえか?」
貴子は怪しげに笑っている。
「ふふふ」
「何?本気か?それとも嘘なのか?」
「ふふふふふ」
「おい!」
「あ!限定依頼やらなきゃ!」