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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第7章 固い2ヶ月の友情
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少し反省

「うそ…うそだよね、そんなはずは……」

「うそじゃない、これが現実よ」

「そんな……おばあちゃん…」

 ちょっと強く言いすぎたかしら、しゅんとした姿はまさに青菜に塩ね。でもこれは真実であり変えようがない、この件については私も調べたけど何も手がかりすらないのだ。

 強く言ったのにも理由がある、自分と境遇というか心の状態が似ているから、仲間を作りたかったのかもしれない。

「おいおい、そんな責めなくてもいいだろう。それにほら、不可能に近いだけで100不可能じゃないんだろ、だったら見つけようじゃない」

「鞠……ううん、いいよ。これも私が関わったのがいけないの、おばあちゃんの言っていたことを証明したくて、お父さんお母さんにも嘘と言われていたおばあちゃんの言葉を、ね。なら、ここで一生過ごすよ」

覚悟を決めた顔だ、でも強そうに見えて少しめくれば哀しみが溢れ出てきそうなそんな感じ。私はこの7年間諦めた事なんてないわよ。

 ひどいな私、自分を棚に上げて……しかも内容が良い事のようで最低な事、笑われちゃうしモエミに怒られちゃうわ。

「帰ったらね、おばあちゃんやお母さんに白花と鞠の事話そうと思ってた。でももう無理だから」

「………」

 私には考えられない、諦めなければ、という考えがこの娘にはないのかしら。それともこれは力を持っていないからかしら、何か能力を持っていればそれを上手く使って…とか。

 私の所為よね、強く言いすぎたしこの娘の気持ち考えてなかった、私と同じなら帰りたいって気持ちは痛いほどわかる。

「橙華、マリも言ったでしょ、100不可能じゃないんだから、私も帰る方法探すから。それまで…ううん、帰ってからもさ、私たち友達でしょ」

「白花……うん、ありがと、少し元気出たよ」

 単純って言っちゃ悪いけど、さっきまで深刻な顔してたのにもう笑顔になっている橙華を見るとそう考えてしまう。清々しいほどの逆転だ。

「おっ、ついにハクにも私以外の友達ができたのか」

 こいつは…少し空気を読んでほしい。

「うるさいわね、あんただって私が初めての友達のくせに」

「確かにな、あの事件があるまでは私も友達いなかったからな」

 なんだマリも私と変わらないじゃない。まぁ今では性格的にマリの方が友達多いけど。……なんか腹立ってきた。

「ほんと迷惑だったのよ、無意識とはいえ反省しなさい」

「はいはい、悪かったよ。…ほら、この話橙華がついてこられてないから」

 あっ、そうよねごめんなさい、こういう所は気が効くのに、私にはなんの気も使わないのよね。友達として楽な関係になったと考えればそれでいいのだけれど、天然の可能性があるからね。

「いいの、知らない事はなるべく潰す、それが私の座右の銘だから。もっとも、これもおばあちゃんの受け売りだけどね」

「じゃあさ、帰る方法探す前に橙華のいた世界の事教えてよ。思い出話でもしてたらさ、絶対帰ってやる、って思うかもしれないだろ」

「確かに、それに私も少し興味あるわ」

 前までは外の世界なんて、って考えてたけど、それじゃあ逃げた時に困るかもしれないものね、教えてもらって損はないと思う。

「別に面白くも何もない世界だよ。というか、あそこは別世界の存在を信じていないからね。信じているのはほんの少数、もちろんわたしとおばあちゃんは信じてる方」

 ふーん、そんな世界もあるんだ。他世界を信じない所があるとは驚き、私もそんな世界に生まれたかった。

「それでね、友達がいたのよ。しかも別世界から来たっていう友達がね」

 やっぱり他の世界でも人の移動はあるのね、カナンだけ不公平じゃない。

「なんだよすごいじゃん! そんな事があったなら他のやつらも信じるだろ!」

「ううん、2人いたんだけど2人共それを隠したがってたし帰りたがってた。そして実際帰っていった、だから私も帰れると思った」

 別世界から来た2人の友達、か。なんか今の話をまとめたら、別世界から来たのが友達になった理由にならないかしら。私の意地が悪いだけね、橙華はそんな娘じゃないと思う。

「みっちゃんとすいちゃんっていうんだ、2人共面白い人だったよ」

「あだ名……、まぁいいとして、どうやって帰ったのよ」

「すいちゃんは草原のキラキラした光に消えた、そのあとは知らないけど、多分帰れたんだろうね。それでみっちゃんはその5日後に突然いなくなったんだ。だから詳しい事はわかんない」

 なるほど、何か手がかりがあるかと思ったけど、思ってた以上に何もなかったわ。尋ねたのは私だけど、そんな自信満々にわからないって言われてもこっちが困る。

「とりあえずざっくりと何があったか話すよ、あれは本当に不思議な出来事だった……」




「出会い、ですか。それなら少し昔の話から始めないといけませんね、途中からだとわけわからなくなるので」

「うん、教えてぜんぶ教えて、心音の事は全部知りたい」

 この娘怖い…、悪い娘じゃないんだけど積極的すぎる。でもなっちゃんこの話聞いたら怒らないかな、ううん、もしかしたら諦めてくれるかも。話すべきだな。

「じゃあ話します、あれは俺が初めて自分という存在を覚えた時の話です」

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