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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
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好きなもの

「エリスー、わかってると思うけど俺らの目的はあくまで…」

「忘れてない! 忘れてないけど……」

「まぁわからなくもないよ、でも冷静にね。一度深呼吸でもしなよ」

「そうね、スーーハーー、スーーハーー…」

 深呼吸で裂け目が若干小さくなった? ストレスを緩和させたとでもいうのかしら。

 シオン……そういえばこいつもいたわね、よエリスが終わったら次はシオンを倒さなきゃ。2連戦でも弱いシオンなら倒せるはず、余裕持っていこう。

「ふぅ……よし、さぁかかってきなさい底辺世界守さん、別世界に行きたいのなら死後の世界をお勧めするわ」

「お断りよ」

 紙の剣を再び作る、さっきのラバーでかなりの紙を消費したから……あまり無駄遣いはできないわね。裂け目の方も心配だし、次かその次で決着をつけたいところだわ。

 重力、厄介な能力だけど穴はある、どこかにあるはずなの…

 緊張感、妙に風を感じるほどの緊張感がある。こんな戦い未だかつてなかった。

「これで最後よ、永遠に逆らえないエタァナルグラビティ!」

 辺り一面の岩が浮かび上がる、まるで物語の世界の終末手前のような画だ。普通ならあの岩を私に向かい落としてくるのでしょうけど……何かの罠と考えるべきね。

 空を飛んであの浮いた岩を蹴って、勢いをつけながらエリスを突くのはどうだろう。……いやいや空中はだめだ、空中で動きを止められたら勝ち目はないし、今までそれを考慮して地上で戦った意味がなくなる。

 だったらつづみさんの時のように偽物を作って、……でも紙は残り少ないからこれは避けたい。

 くっ……エリスは今にも岩で何か仕掛けてきそうなのに、何も浮かばない。どうすれば……また風、髪が靡くのが鬱陶しい、今度から結んできましょう。ん?

「……そうか、そうだそれだわ…」

 あった、重力の穴をついに見つけた、これなら私の能力でなんとかなる、しかも紙はいらない。あとは運任せね。

「何か思いついたのでしょうけど、これで終わりよ底辺世界守、崩れ落ちなさい!」

 やっぱり普通に落としてこなかったわね、わざわざ空中で潰してから落とすなんて。まぁそっちの方が攻撃の隙間が少なくなるって考えでしょうけど。

 なんにしろ好機、小さいのなら紙を鉄に変えるだけで防ぐことができる。

紙の鉄屋敷メタルハウス!」

 魔力を込め、さらに鉄に変えた紙をばら撒く。それらはあっという間に小さな防御壁になる。おもちゃの家のようだけど、鉄だから強度は十分。あとはエリスと運次第。

「っと…今のうちに床を紙に変えて……早く集めなきゃ……」


「へぇ……なかなか面白い技…でも!」


「…‼︎ 浮かんだ…重力で浮かされたのね」

「底辺さん、住み心地はどうなの?」

 ありゃりゃ、いつの間にか目の前にエリスが、浮かされたと思ったら近づけられてたのね。私にとっては好都合だけど。

「そうね最悪よ、冷たいし浮いてるしで欠陥もいいところだわ」

「そ、じゃあ欠陥住宅は取り壊さなきゃよね」

 こいつ鉄の紙細工メタルハウスを潰す気ね、壁がグチャってなってきてる、それに真っ先に出口を潰されたわ。なかなか恐ろしい状況ね、出口のない密室でどんどん壁と天井が迫ってくる、慌てていない自分が怖いわ。

「潰れなさい、これが世界の力、世界を大切に思わなかったあなたにはちょうどいい死に方よ」

 潰されるのがお似合い…ね、私ってみんなの目にはどんな風に写ってるのよ。

「………あなた、物事を多角的に見られない人なのかしら」

「なに? 命乞いかしら?」

「私は確かに世界守って仕事を嫌っている、それは戦いが嫌いで人を傷つけたくない、怖いからよ。そして霜月の名前も嫌っているし、当然世界の事も嫌っている。だけど、世界を守る事は好きな人のいるこの世界を守る事、戦いは怖いけど好きな人や友達がいなくなるよりは怖くない。私の好きな人がこの世界を好きなの、好きな人の好きな物を守ってるのは気持ちがいい、だから嫌々でもやってるのよ」

「………!」

 潰されながら語るには少し格好悪いわね、もうちょっと落ち着いた場面でいう言葉なんでしょうけど、選んでる暇はないわ。

「だからこれはあんた倒す…好きな人を守る最後の攻撃!」

 重力で潰されかけていた鉄の紙細工メタルハウスを紙に戻す、紙なんていくら押し付けられても痛くないわ。

 あとはさっき集めた砂を…!

残酷な斬砂塵サンドカッター!」

「…………っ!」

 砂粒ひと粒ひと粒を切れる刃物に変えた、1つ1つの威力は小さくても傷口からさらに砂粒が入れば……考えただけでも恐ろしい。

 しかも所詮は砂粒、何百倍の重力でも風に飛ばされなくなる重さに変える事はほぼ不可能。重力の穴……軽ければ軽いほど落とすのに力がいる事よ。

「………ふふ…ふふふふふ……」

 なっ…! この人、傷口をさらにえぐるような痛みを耐えているっていうの⁉︎ しかも不気味な笑い、紙はさっきの家で全部使ったから後は石で戦うしか……

「くっ……来るなら来なさいよ! 今度はこの石を傷口に……」

 えっ…?

「ありがとう、その言葉が聞きたかった………。望んでいたものとは少しだけちがうけど……、本当にありがとう、酷いことばかり言ってごめんなさい…」

 えっ、何がどうなってんのよ、なんで私がエリスにぎゅっと抱きしめられてんのよ、なんで私が傷つけたエリスにありがとうって言われてるのよ……


 なんで私は今、心が安らいでるのよ…




 〜〜1週間前〜〜

「さっきぶりですね、人探しですか?」

「あっ、団子屋であった人。うん、まぁそんな感じかな」

「……あなたも結構鈍感なのね」

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