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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
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逆じゃない?

「? 今何か聞こえたような…」

「あまいわよ、って言ったの」

 なっ…⁉︎ エリスの入った石団子がこっちに飛んで……考えてる場合じゃない、

「これで……!」

 飛んできた石団子に剣を刺すと同時にそれを軸として回転、靴に仕込んだ紙があったからこその回転だ。そのまま回転の勢いを使い、石団子の上を通過してなんとか避けられた、紙の剣は失ったけどまた作ればいい。しかし我ながら2倍の重さの中で、今のは無茶だったと思う。

「あら、惜しかったわね…」

「……あの中に入ってると思ったら出てたのね」

 エリスは私が磁石をつけた時の位置と同じ場所に立っていた、外側だけを重力で飛ばした、という事ね。

「あなたね、やっぱり重力を舐めてない? 重力っていうのは世界の力なの、人間が絶対に逆らえない力の1つなのよ」

「舐めてないわよ、重くして軽くして飛ばして浮かせて……その他諸々、厄介なのはわかってるけど……それを使っていた前のやつがポンコツだったから、情報が少ないだけ」

「そうね…そういえばシオンは重くする、軽くする、動きを止める、潰すしかあなたに見せてなかったわね」

 そうね…って、大概あんたもシオンの事馬鹿にしてるのね、なんだか可哀想ねシオン。私には関係ないけど。

 じゃあ他に何ができるっていうのよ、世界を終わらせる程の力があるのなら、教えても問題ないんじゃないのかしら。

「でも残念、それはシオンと関わらなかったあなたの所為、ある程度だけど…あれからシオンはこの能力の応用範囲を広げてたわ」

「関わりたくないから関わらなかったのよ、またカナンはいいところだ、とか言われたら腹立つもん」

「………そう、救いようないわ、消えて」

 ………あれ? まぁ……いいか。

 エリスの周りの石が数個浮かんだ…、飛ばしてくるわね。色々できると言っても攻撃方法は単純なものばかり、単純なものを打ち砕くのは簡単。

発射ファイア!」

 浮いた石弾が5発射される、普通なら飛び回って避ける……けど、

「あなたから教えてもらった素材、役に立てるわ。返却ラバーよ」

 紙を魔力でつなぎ、人が隠れる事ができる程度の大きさにする、次々とラバーにぶつかる石がさらに威力と速度をつけて跳ね返る。これが応用力ってものなのよ、あとは勝手に…

「あまい、そういったわよ」

 ……! この石弾、ラバーを…

「突き抜けそう……避けなきゃまずい…!」

「もう遅いわ…」

 体が浮かない、足が何か固いもので押しつけられてる感覚がある。まさか……!

「……そんな……石が足に…しかも重さが半端じゃない…」

「2倍の重さの体に数十倍の重さの石が両足に集中、動けないわよね。そろそろその弱い膜を突き抜け、あなたの体をズタズタにするわよ」

 ぜ、絶体絶命ってやつね…こんなまずい状況どうすれば……、突き抜けた先に鉄板を……でもそれも重力で飛ばされる可能性が高い。服を衝撃吸収素材に……それでも重力で顔に軌道を変えられるかも…ならどうすれば…怖い怖いもう突き抜けそう、こんなのが当たったら体が穴だらけになっちゃう……そんな事絶対に嫌。

 落ち着きなさい、冷静冷静……そうだ! もしかしたらこれで……でも失敗したら終わり、でも………考えてたら時間がなくなる、やるしかないのね。

 ふぅ………やってやるわよ、ええそうよこんな怖い事できるわけないけど、やらなきゃ私が死ぬんだものなし遂げますとも。

「突き抜けるわ、じゃあねバイバイ…」

変えられるならフリー・マテリアル!!!」

 1発の石弾が私めがけて落ちてくる、重力でラバーを突き抜けた石弾、目に見える速度じゃないけど……弾道はわかる! そこに手を置けば…

「うまくいきなさいよ、変われ海綿スポンジ!」

 飛んできた石弾に触れた瞬間に石から海綿に、2発目3発目も同じように、4…5もこれまた同じように海綿に変える。いくら速度があり、いくら威力があろうと柔らかい海綿が痛いわけがない。

「ふぅ……怖かった、手がぐちゃぐちゃになるかと思ったわ…」

 ついでに足の石も海綿に変えて脱出、形勢は逆転とはいかないけど、まずいところは脱出したわ。

「なるほど、生への執着は化け物並みね」

「当たり前よ、生きてればいい事あるはずだもの」

「そう、そうやってこの世界を自分の生のための道具にするのね」

「道具……」

「………」

 道具……そうかもしれない、人間の大半は古いものから新しいものへと浮気する。古くて使い勝手の悪い物は捨てられ、新しくて流行りの物は喜んで使う。それと同じなのかも…

「やっぱりこんな世界でも無いと困るわね、新しくて穏やかな世界に行くまでは」

「…チッ、少しでも期待した私が馬鹿だった、堪忍袋の尾も切れた。消す、あなたとの勝負は関係ない、消せば全て終わるもの」

 ………やっぱり何か引っかかる…、まぁいいとして。

 こいつ…ついに最終兵器を出してきたわね。当然といえば当然、エリスは私と戦う意味なんて無い、エリスが負けても消せば最終的に勝つのはエリスだ。消すという目的を達成するのはエリスだ。

「させないわよ、生きて別の穏やかな世界に行くまで、この世界には残ってもらう

「……呆れてものも言えない、この世界の管理者は馬鹿よ、こんな自分勝手のダメ女に世界守を任せるなんて」

「ダメ女とは何よ、自分の意思を曲げない強い女よ、私は」

 管理者ってのは知らないけど、世界守にだっていろいろな形がある。マリは父親の為に、外の情報を得るために世界守をしている、それだっていわば自分のためだ、世界のためじゃない。だったら私だけ差別じゃないの。

 そもそも小さい頃に外の世界を見たとき、世界守なんて仕事は少なくともお目にかかった事はない。だからこの世界がおかしいのよ。

「飲み込め……飲み込め裂け目……あの愚かな女を飲み込め…」

 石の川から裂け目が出てくる、現在進行形でどんどん大きくなっていた。

「………怖い」

 さっきからなんか引っかかるけど、もうこの人を止めるしか生きる手段はない。人生の最終決戦になるか、それとも不本意ながら世界を救った英雄になるか、勝負どころね。

 勝って生きて別の世界へ行く、負けられますかっての。


「……エリス、目的を見失ってるなぁ…わからなくもないけど」

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