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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
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利用しない手はない

「重力2倍、実行!」

 うっ、早速体が重い…シオンと戦った時と同じだ。とにかく2倍は辛い、なんとかこれを解除させないと体力負けしてしまう。

 でも重くて困るのは速度と体力切れのみ、それ以外なら利用できる。一度戦った事のある能力の相手に遅れをとる私じゃない…はず。

「紙、変われ…鉛!」

 自分が重ければこの重い紙の鉛玉に体を持って行かれずに済む、これなら思い切り振りかぶって投げられるわ。

 ふふふ…同じ状況での対抗策を私が考えないとでも思ったのかしら、同じ状況下がどれほど嬉しい事か……

「あの時と同じ状況、とでも思っているのでしょうね。残念、能力の強さが違うのよ」

「…! …なにが言いたい……⁉︎ きゃっ!」

 ちょっ…なによなんなのよ、肩が外れるかと思った……急に鉛に変えた紙の玉が重く……しかもこれは半端じゃない、地面に…鉛玉を落とした所に穴があいた。それも普通じゃない、落としただけで1メートルより深く沈んでいる…シオンの力じゃこんな事できなかったはずよ。

 能力の強さが違う……作家さんが決まった万年筆でないと本調子が出ないのとは逆に、能力が人を選んだとでもいうのかしら。話を聞く限り所詮シオンには貸された能力、10割を引き出せないのね。

 って、上から目線になってるけどこれは非常にまずい。こんなのいつ私の重さが100キロやら1トンやらに変えられてもおかしくない、そのまま地面に埋もれてお終い…いや、その前に体がもたないわ。

「力の差…なのかしらね」

「……開始3分も経たずにギブアップか」

「そのギブアップってのがどんな意味かは知らないけど、まだ諦めたわけではないわよ。まだまだ紙はあるもの…無くなるまで足掻いてあげるわよ!」

 遠距離が駄目なら近距離、これが定石よ。紙の……なんだっけ、…レイピアだそうだそうだった。シオンと戦った時とこれまた同じだけど、もしかしたらこれがシオンには有効なのかも。

「またそれなの? 私だって心のなかで見てたの、同じだと思ってもらっちゃ……」

「そうよ、だから使い方……いいえ、これを使う場所を変える」

「使う場所?」

「こういう事よ!」

「…っ⁉︎ 早っ……!」

 接近成功、あらかじめ靴の下に紙を敷いてて良かった、魔力で浮かせて素早く移動ができたのも紙のおかげだ。

 そのまま浮いた状態でエリスの上を取る、空中、しかも真上から攻撃されたらこの剣の重力とわたしにかかる重力を変えられない。変えた瞬間に自分が潰されるわよ。

「くらいなさい!」

 真上から突き、突き、突きの連続攻撃、……でもぜんぶ避けられてる…やっぱりあの時みたいに自分は軽くしてるのかしら。

「あまいわよ、近づいたら私からの攻撃が当たりやすくなるとか考えなかったのかしら」

 こいつ避けながら喋って……なんか余裕ですって感じがして腹立つ。

「そんなもの、当然理解してるわよ。でもあなた、重力を使ってから魔力弾を放ってこないとなると、重力以外の力を持ってないんじゃないのかしら!」

 突きながらだから言葉に力が入る、根拠のない憶測だけど、早く世界を終わらせたいのならここまで近づいてきてすぐに攻撃をしない手はない。

「確かにね、私には重力だけ。でも……」

 でも……? ……がっ…はぁっ!!

「重力でも攻撃できるから、当然よね」

 せ、背中が……背中に石を思い切りぶつけられた…、急すぎて服を衝撃吸収素材に変えられなかった。でも空中にいたから、体をひねって若干衝撃を和らげられたけど、いたた……骨にヒビが入るかと思った。

「重力は押さえつける、軽くするだけと思われちゃ困るわ。浮かせる、飛ばす、圧縮させる、複雑に向きを変えれば雑巾だって重力で絞れる」

「いたた……まだ痛い、くぅ……まさかこんな事まで…」

 シオン全然参考にならない、あいつどんだけ能力使えてなかったのよ馬鹿じゃないの。背中は痛いし体は重いし…もう最悪。

「どうしたの? まだまだ世界を救うには抵抗が足りないんじゃないの?」

「うるさい、世界はどうでもいい、私は私のために戦ってるのよ」

「……チッ、まだ言わないか」

「当たり前よ、降参なんて言わないわ。変えられるならフリー・マテリアルは諦めない限り変えられないものはない、いつか運命だって変えてみせる」

 って、エリスに足向けて尻餅ついてる私が言っても格好悪いだけなんだけどね。まぁもちろん、ただ尻餅をついてるわけじゃない、次の作戦が思いついた。

「どうでもいいけど、この2倍はどうにかならないの? そろそろ立ちたいんだけど重さの所為で立ちにくいのよ。んぐぐぐぐ………はぁ、ほら?」

 実際に立てないのを見せる、ちょっと大げさ感が出たかもしれない。

「……なによ、解いてもらおうってそうはいかないわよ」

 よし、狙い通りね。後はエリスの近くに……

「わかってるわよ解いてくれないなんて事、ちょっと待ってね、四つん這いになれば立てるかも…」

「………」

「ぬぐぐぐ……はぁ、やっと立てた…わっ!」

 立ったと同時に後ろへ飛ぶ、こちとら前に2倍の中で動き回ってたのよ、これくらいで立てられなくなるわけないでしょう。ついでに設置完了…

「いけ! 磁力で足にくっつけ!」

「なっ……なにこれ⁉︎」

 やった成功! さっき尻餅をついた時、立てろうとして小さい石を握って超強力な磁石に変えておいた。それを粘着素材で四つん這いになり、立てった時にエリスの足に投げつけた。

 後は四つん這いになる時に手を動かして触れた地面の石を金属に変えれば、自動的にどんどんくっつく。ここは意思石地帯、石や岩なんていくらでもある。

「あ、足が重い……」

「まだまだよ、磁石追加!」

 腕と体に2つずつ投げてつけ足す、後は辺りの石をどんどん金属に変えるだけ……

「石に潰されて反省なさい、あとさっさと裂け目を消すこと」

 石の化け物のように小さめの石がくっついて、人が入った団子のようになった、これでもう動けないわね。

 一件落着、偉そうにしてたけど弱かったわ。無駄に体力だけ使った、あーあ体が重いわ…

「……あ…い……わね…」

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