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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
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黒に近い灰色

「………」

「どうしたのシオン、黙り込んじゃって…いつもならもっと楽しそうに配達先の確認してるのに、昨日から変よ、喋り方も含めて」

「あ、いえ、なんでもないです、いつも通りですよ。ほら美良さんこそ、薬箱の中は確認したんですか」

「あっ………ちょっと待っててね……」

 まったく美良さんは…でも、こういうのが美良さんらしくていいのかも。

 住んでた世界や環境や境遇は違うけど、仲良くなれない事はない、運命はそれを邪魔しない。今まで自分の過去を知らなかった俺でも、みんな仲良くしてくれた。この生活がずっと続くのなら、俺はずっと守りたい。

 守りたい気持ちは人皆平等、溢れんばかりの優しさが人を愛で包む…か、いい言葉だったな。

 ………1週間後、なんとかなるよな。

「確認終わったよ、行こっ!」




 よし、朝ごはんも食べたし、今日も張り切って探すわよ。待ち合わせの時間にはちょっと早いけど、早くて悪い事はないもの、先に少し探してから集合してもいいわよね。

 なんかこんなに張り切ってると昔に戻ったみたい、真知さんの言ってた事もあながち間違いじゃないのかも。

 ふん………なんでだろ、今まではなんとなくや仕方なくでやってたのに、今はやらなきゃ、っていう使命感のような物がある。カナンの危機だから? でも思い入れもないし、はっきり言って嫌いだし、わけがわかんない。

 考えてても仕方ない、ちゃっちゃか出かけましょ。今日は秘密兵器もあるしね…ふふっ。


「遅い、1分47秒の遅刻だ。俺はぴったり8時にここへ来たぞ」

「時計も無いのによく分かりますね、時間とか厳しい性格ですね」

 私、やっぱりこういう人無理だわ。なんでもかんでも完璧主義とか、少しでも寝癖があったら駄目とか、もっと大物にならないと苦労すると思う。

「まぁ能力上の問題だ、気にするな。早速で悪いが今日は1人で探してくれ、昨日探した場所をもう一度確認したい。それと夕方になったら勝手に帰って大丈夫だから、よろしく」

 あっ、時間に関係した能力なのかな? でも本当に適当な時間で帰っていいのかしら、時間には厳しくても昨日とはちょっと違ってさっくりした作戦なのね。

「えっ、あぁはい分かりました」

 まぁ確かに確認も必要かも、毎日日替わりで移動とかさせられてたら困るし、私には秘密兵器があるし、やっぱり今日で見つかる気がするわ。

「じゃあ探しに行きますから、また明日」

「あぁ」

 よーし、秘密兵器の恐ろしさを見せてやるぞー!


「……行ったよ、これで良かったの? あのお姉さん騙しちゃって」

「えぇ完璧です。さすがはずっきー、変身のプロ」

「わけわかんないし、ずっきーはやめてって言ったでしょ。シオン…あんた何がしたいわけ? というか髪伸びた?」

「………ふふっ……」




 やっぱり一筋縄じゃいかないわね、もうすぐお昼だってのに見つからない。よし、秘密兵器登場といきますか。

 えっとなんだったかな……、そうそう『魔力探知機』だ。前に事件の犯人からなるべく遠ざかるためにマリから借りてたのを返すの忘れてたのよね。これがこんなところで役に立つとは、最近私持ちの事件で活躍してないマリもようやく活躍するのね。

 これであの裂け目を簡単に探せるはず、あんな黒い光なんて魔力以外の何物でもないわ。ふっふっふ…犯人め覚悟しろ。

「えっとここの出っ張りを押すのよね、……よし動いた。でもこれマリの手作りでしょ? なんで壺の形してるのよ」

 ま、マリの趣味はどうでもいいわ、壺の形だろうがはにわの形だろうが、役に立ってくれるのならそれで十分よ。

 えっと、確か矢印の出る方向に強い魔力が……こっちね。


「昨日の意思石地帯……おかしいわね、壊れてるのかしら?」

 やっぱり埃をかぶってたからかしら、こういう物って繊細に扱ってやらないとすぐに壊れたり……ううん、あのがさつなマリが作ったんだもの、ちょっとやそっとじゃ壊れるはずない。じゃあ……

「探すしかないわね……」

 おばけ…でないわよね、まだお昼前で明るいし、そもそもおばけなんていないし、きっと……いいえ絶対大丈夫よ。

 いざ行かん勇気の第一歩…!

「……‼︎」

 あれ…? 体が勝手に動く、あれ…なんでなのかな、さっきまで躊躇してたのにタッタカタッタカ足が動く。

 まさか憑かれた…? 怨霊に憑かれちゃったのかしら⁉︎

 どんどん意思石地帯の奥に……いやちがうわ、これって前にもあった、最初に裂け目を見つけた時の感覚だわ。

 じゃあこのまま感覚で進めば、裂け目に出会うって事よね、シオンの偽物がいるって事よね。

 こっち、こっちの方に感じる。絶対…絶対にある、なんだろう強いわ、力とか能力とかじゃなくて、今私の心とか信念とかが強い気がする。まるで昔の私みたい。

 うふふっ、魔力探知機が既に役立たずになっちゃった、でもここに来れたのは探知機のおかげだから、その点ではマリに感謝するわ。

 ………ここね、なるほど見つからないわけだわ、まさか誰が…

「こんな流れる石の川の中にあるって考えるのかしらね!」

 ……直感だけどね。さてと、私の勘ではそろそろ来ると思うんだけど、……いや、もういるわね。

「出てきなさいよ、岩陰になんて隠れてないでね」

「よく見つけた、って褒めて欲しいの?」

「いいえ、褒め言葉よりもこの裂け目を消滅させてくれる方がいいわ」

 本当にシオンにそっくり、でも女性よね…それによく見るとシオンより少しだけ髪が長いわ。

 ともかく、今日は逃さないわよ、心の奥から力が湧いてきて、今なら何でも出来そうな気がするわ。

「なるほど…」

 …!! 何なの今のは……、偽シオンの周りに何か変な物が見えたような……

「な、何がなるほどなのよ!」

 駄目だ、何でもできるって思うのに、今ここで逆らっちゃ駄目って本能で分かる…。殺気は殺気でも不思議な感じ、私と戦う気がないような、お前など倒すに値しないと雰囲気で語っている。

「いいえ、1番強い色って分かる? そう黒、黒は何色をも黒に変えてしまう。もちろん白色もね、あなたは灰色…黒に近い灰色」

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