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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
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憑いている石

「ねぇ三葉ちゃん」

「なぁに?」

「別にここからは手伝ってくれなくてもいいのよ? 色々と危ないし、能力も使いこなせてないみたいだから…」

 図書館を出てすぐ、人数は多ければ多いほどいいけど、三葉ちゃんはここで離脱させた方がいいかも。

 三葉ちゃんの事を思っての言葉と言えば嘘になる、正直に言うと私からすれば足手まとい、能力もそれほど使えそうじゃないし、怖い思いをするのが関の山だ。

 それだったら今ここで切るのが手っ取り早い、裂け目を見つけて後先考えずに突撃しそうだし、逆に状態を悪化させられでもしたら困る。

「そうだね、そろそろあたしも仕事に戻るよ」

「えっ、あぁそうなの…がんばってね」

 意外とあっさりね、やっぱりこの娘よく分からないわ。…で、樅さんはどうするんだろう、三葉ちゃんが来ないのなら樅さんも来ないかな?

「俺は手伝うぞ、三葉のいる世界を壊されてたまるかよ」

「あぁはい、そうですか。じゃあ私はこっち方面を探しますので、樅さんは向こう方面をお願いします」

 来るんだ、でもいいかな、別行動も了承してくれたから怖い目で見られる事もないし、どんな能力か知らないけど、それなりには強いはずよね。

「そうだな…じゃあ2時間後にここに集合だ、見つかっても見つからなくてもな」

 なんかしきり始めた、勝手に決めないでよ……反抗すると怖いから従っとこ。

「分かりました、じゃあ2時間後に」

 わたしと樅さんは別方向へと飛んだ。




 集合まであと30分くらいかな、1時間半って結構長いのね、もう疲れちゃった。

 あぁー休憩したい、探さなきゃ世界が危ないとは分かってるけど、ずっと飛ぶのはさすがに疲れるわ。

 今すぐにでも下へ降りて座りたい、でも……

「よりによって意思石いしいしの上とは…降りるに降りられないじゃない…」

 石の木に石の川、全く不気味よ。見てるだけで気持ちが重くなりそう。

 それにここって『でる』らしいじゃない? 確か昔のお偉いさんが巨大な岩を見て労働者に森を造らせたとか、その時に削った岩が落ちてきて亡くなった人や過労で亡くなった人がここの石に憑いているとか。だからここの木や川は風があれば揺れるし流れる。

 おばけが怖いわけじゃないけど……用心に越したことはないもの、我慢して通り過ぎるのが賢いわ。さっさと抜けましょう…

「おーいそこの飛行少女!」

 ん? 下から声が…まさかこの意思石地帯に誰かいるっていうの? …って誰が飛行少女よ。

「おーい! 君この前の娘だろ、降りてきなよ!」

「そうじゃそうじゃ、降りくるのだ」

「………迷惑じゃないの……」

 あっ、あの面白い3人組だ、こんな所で何してるんだろう。いや、その前にここは危ないって伝えなきゃ……降りなきゃよね、降りてこいって言われてるし。

 ま、まぁおばけなんて怖くないからいいけど……よし、降りるわよ…


「やあ! またあったね、元気してた?」

「ええおかげさまで、こんな所で何してるんですか?」

「もちろん観光じゃ、我々はカナンの珍しいスポットを毎日探検しておる」

 探検か、確かに外界人にはそういう事する人多いわ、それで何か問題起こして私が働くって事も多い。正直言うと観光はやめてほしいけど、この人達なら多分大丈夫よね、いい人だし。

「それはいいんですけど、ここはやめた方がいいですよ。ここは昔亡くなった人の霊が憑いてるって話があるんです、だからカナンの人も不気味に思って誰も来ないんですよ」

「…………こんなの……?」

「きゃっ! ……なんだ葵くんじゃないの…脅かさないでよ」

 びっくりした、おば……急に背後からスゥーッと手を肩に乗せて喋りかけられたら誰でもびっくりする、そうよ別に私だけじゃないわ。

「と、とにかくここは怪しい噂もあって誰も来ないんです、早くどこか別のところに行った方がいいですよ」

「そうかな? さっき2人ここにいたんだけど?」

「え? 2人って誰ですか?」

「誰って君の友達だよ、えっとなんだったかな……気温でもなくて室温でもなくて…! そうだシオンだ、シオンともう1人いたよ。遠目だったから誰かはわからなかったけど、シオンは絶対にいた」

 シオンですって? シオンは偽物探しをしているはず、その過程でここに来たのかしら、じゃあもう1人って一体誰なのよ。

「30分くらい前だっかな、よく分からないけど真剣そうな顔して話してたよ。何を言ってたかも聞こえなかったけどね!」

「そうなんですか、まぁそれはいいんですよ、とにかくここにはもう来ちゃダメですよ」

 はーい、と少々残念そうにしているけど仕方のない事なのよ、祟られちゃ嫌でしょう。

 シオンが誰かと…一体何を話してたのかしら、偽物の手がかりを持っている人とか? 真剣そうな顔をしていたっていうのならそうなのかも。

 …っと、もう10分経ったの? 早いものね、帰り道もある事だし戻りながら探すとしましょう。思いの外休憩もできたし。




「おかえり、どうだったんだ?」

「こっちはダメ、見つからなかった。そっちも…ダメだったのね、雰囲気でわかるわ」

 私が集合場所に着いた時にはすでに樅さんが待っていた、遅れたかなって思ったら案の定だったわ、樅さんは2時間ぴったりに着いたみたい、どんな感覚をしているのかしら。

 でも見つけられなかった、もうそろそろ空も赤くなる頃だ、今日の捜索はここで終了になる。その前にどこを探したのかを報告しあわなければいけない。

「私の探した場所は……」

「どうも、お疲れ様です」

「…! …あらシオン、今私が話そうとしてたんだけど? 急に来て邪魔するのはどうかと思うわ」

 びっくりした…、でも声は出さなかったわよ、そろそろ私にも耐性がついてこないといけないわ。

「裂け目は見つかったんですか?」

「……シオン、何か変わった? 喋り方が元に戻ってるわよ?」

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