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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
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濡れ衣二連発

「ちょっと! どういうつもりなのか、納得のいく説明を聞かせてもらいましょうかしら!」

「えっ? ちょっと白花さん、いきなり来てなんなのさ。見ての通りこっちは色々と面倒くさい状況なんだよ、おれだって早く抜け出したいとは思ってるんだけど……美良さんが…」

 だめ、ちゃんと寝てなさい、とおれを布団へ戻す。だから具合が悪いわけじゃないのに、どうして信じてくれないかな。

 それに白花さんも、こっちがいきなり来て怒られた事に対して納得のいく説明を聞かせてもらいたいよ。おれが何をしたっていうんだよ、今日はずっと布団の中から動いてない、それに美良さんみはりがいるから抜け出せないんだよ。

「うそおっしゃい、私はこの目で見たのよ、あんたが空間の裂け目を隠して、さらには消しているところを。あんただって私を見たじゃない、……しらばっくれる気?」

 そっちこそ嘘言わないでよ、空間の裂け目? それを隠して消した? 何を根拠に、そんな怖い顔して……怖いよ!

「だからさっきも言ったように、おれは今日ここから……」

「おいシオン!」

 扉が思い切り開かれる、誰だよこんな時に……ん?

「あれ? 樅さん? なんで急にうちに……」

「なんでじゃない‼︎ おまえよくも三葉にひどい事を!」

 いきなり胸倉を掴まれる、は⁉︎ おれが三葉さんに何したって? 苦しい離して…おれは何もしてないよ、だからなんでそんな怖い顔してるのさ……怖いよ!

「ちょっと美良さん助けて……」

 いない…あっ、あの人庭に……人見知りは仕方ないけどこういう時はさ、なんとかして助けてよ。

「ちょっとあんた、今は私がシオンに話を聞いてるの、後にしてくれないかしら?」

「やかましい! こっちは大事な妹が泣いて俺のところに来たんだ! なぁ三葉、おまえから何をされたか言ってみな」

 えっ、三葉さん来てたの。ほんとだ襖の向こう、だから美良さんが庭まで逃げてたんだ。

 確かに涙を流している、一体何があったんだろうか、シルフは一緒にいないのか、という疑問があったけど聞ける状況じゃない。三葉さんがゆっくりと口を開く。

「あのね、今日ね、心音君がね…心音君に久しぶりに会ったからね、声をかけたらね…声をかけたら……ひっ…わー! 心音君があたしを無視したのー! なんでなんでー!」

 ……は?

「分かったか! こっちの方が重要だ!」

「どこが重要なのよ! こっちは世界の命運がかかってるのよ!」

「それもこれも…シオン!」

 白花さんと樅さんの声がハモる、やっぱり怖い。年上2人に絡まれるのは怖い。

「だから話を聞いてって! 美良さん……はあの調子だから…あっ、ちょうどいいところに。沙奈さん、説明たのみます」

 騒々しさに嫌気がさしてここを見に来たのだろう、若干怒った顔の沙奈さんが襖のしきりの上に立っている。そこは踏んじゃいけない……そんな場合じゃないか。

「あの…沙奈さん説明…」

 沙奈さんが思い切り息を吸い込む、あっ…俺の声届いてない…

「うっさいよあんたら、他人の店でぎゃーぎゃーぎゃーぎゃー……あんたらは動物園の猿かっての! 少しは常識を考えな常識を! だいたいね、あんたらは礼儀ってものがないよ。ここに来た時にこんにちはの一言でも………」

 うわやっぱり、お説教が始まった…3人も3人でしゅんとして聞いてるんじゃないよ。三葉さんなんか更に泣いて……状況がぐちゃぐちゃすぎる。

 とにかく…とにかくだ、1つだけはっきりさせないとて

「沙奈さん、俺は今日店から一歩も出てませんよね?」

 頼む、声、届け!

「ん? あぁずっとここで寝てたね、それは私と美良が保証するよ。でだ、あんたらここがどこだか分かってるの? 薬屋だよ薬屋、騒がしくて胡桃さんが調合に失敗したら………」





「ともかく、これからはちゃんとするように、分かったね!」

 終わった…あの後5分くらい続いた。文句を言いに来た人が逆に説教される、どんな状況だこれは、言葉にしようがない。

「あの娘怖いわね、小さいのにしっかりしてる……で、あんた本当に今日はここから出てないの?」

 はぁ…やっとまともな話し合いができそうだ、三葉さんも涙が止まっているし、樅さんも冷静に戻っている。

「だから最初から言ったでしょう、俺は今日ずっとここにいます。したがって、空間の裂け目とかいうわけのわからないものを隠して消したり、会ってもない三葉さんを無視したりする事は不可能なんだよ」

「で、でも確かにあれは心音君だったし、でも……えぇ?」

「なんかすまない事をしたな、許してくれ、悪気はなかったんだ」

 いや、分かってくれればいいんだけど……そんなにそっくりな人がカナンにいるのか? 会った事ないけど。

 そういえばさっき白花さんがなんか気になる事言ってたな…

「ねぇ白花さん、さっき世界の命運がかかってるとかなんとか言ってなかった?」

「え? そうよ忘れてた! 大変なのよ、さっきも言ったけど空間の裂け目っていうのがカナンに生まれたのよ」

 空間の裂け目…何気なくおれも口に出したけどなんだそれは、それと世界の命運と何か関係があるのか?

「詳しい事は…………………………………という事なのよ」

 なるほど、その空間の裂け目が最悪の災厄ロストワールドをもたらす、と。それを探している時に、謎の感覚に導かれて空へ行ったらその裂け目とおれがいた、というわけか。おれじゃないけど。

「忘れてたついでで悪いんだけどさ…」

 なんだ? なんか申し訳なさそうな顔してる、さっきの怖い顔が嘘みたいだ。

「その…先週はごめんなさい、私シオンにひどい事言っちゃって…」

「え、先週? 何かあったっけ? 先週は友達が来てたから森から出てないはずだけど……」

「いやいや、そんな事ないわよ。確かにあの日シオンはうちに来たわ、私と話したしマリもいたのよ。じゃああれは誰だっていうのよ……」

 こっちが聞きたいよ、まさか偽物でもいるのか? おれの偽物なんてどんな趣味してんだか、……なんにせよこのままじゃまずい、その偽物の所為でうちの薬に泥を塗られるわけにはいかない。

「分かった、じゃあおれはその偽物とやらを探すから、白花さんは裂け目を探して。時間があるんだったら三葉さんと樅さんも手伝ってよ、人数は多い方がいいし、三葉さんの能力なら何か役に立つかも」

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