表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
75/180

何この感覚

「ねぇ、どこらへんにあると思う?」「あら、そんなところ? そこは目立つでしょ?」「私はあそこだと思う、目立ちそうで目立たないし」

 ………1人で何やってんだろ、そういえばこんな時に1人って今までなかったわ。いつもならマリがいたけど、今回は退屈しそうね、実際につまらない。

 ま、そんな事言ってる場合じゃないんだけど、何しろ世界の運命が……んん、なんでこんな一生懸命になってんだろ、こんな世界なんてどうでもいいのに。

 願いだって叶ったけど叶わなかった、あれは私の願いじゃない、シオンの願いだ。あいつは2つの願いを叶えた、私はゼロ、何倍してもシオンには届かない。おせっかいなんてするものじゃないわ。

「…と、ついたついた。なさそうだけど、しらみつぶしに探すしかないわよね」

 木もそろそろ裸になる準備を始めそうな今日、みんなは何をしてるのかな。本を読んだり、土をいじったり、服を作ったり…私は世界を守ってる。

 枯葉を踏みながら歩くのはなかなか気持ちのいいものだわ、なんかこの音好き。でも……

「ない、わね。なんとなくだけど、ここには無いって感覚でわかる」

 自分でも不思議、感覚で断言できるなんて、いつもなら難癖つけるモエミの適当推理よりも適当な感覚を信じられる。

 感じる、でも感じない。近くにある、でも近くにない。喉が痒い感覚だ、掻きたいのに手が届かない、それと瓜二つだ。

 えっと…あっちかしら。

 自然と体が動く、疲れて眠たい時に布団にたどり着こうとするのと同じように、悲しくて仕方ない時に涙が出るように。

 どこだっけ、ここ、山…よね。山だったわよね、じゃあなんで落ち葉がないの、じゃあなんで木がないの。

 違う、空…私は今空にいる。いつの間に飛んだのかしら、自分でもわからない、なんだか怖い…でも間違ってはいない。飛んでなきゃダメな気がする。

 真下にはさっきまでいた山、少しだけど小さくなっている、ある程度の高度まで来たみたい。

 意識が戻ってくる、ぼーっとしてて息をするのを忘れていた時に似ていた。高度が高いから寒いけど、太陽の光で多少は……

「………あれっ? 太陽、どこ?」

 今日の天気は晴れ、雲もあるけど全体の8には満たない。雲に隠れているわけじゃない、光が差し込んでいないわけじゃない、むしろ眩しいのに…

 だったらなんで太陽がないのよ、ここに来るまではずっと見えていたのに……あれは、なんか切れ目みたいな物が見える、何かしら…

 ゆっくりと近づく、何かしらの異変が起こっているのは確か、用心に越した事はない。

「……誰かいる、近づいてくるみたい」

 私が切れ目に近づくのに伴ってそいつも近づく、止まる気は……ないみたいね。

 覚悟を決める、いざとなればこの紙で…なんでこんなにあっさり覚悟決めれるんだろ、普段の私ならこんな事ないのに。

「……? あれは、私?」

 そうよそうに違いない、近づいてくるのは私だ。私と同じ顔、私と同じ服、という事はあの切れ目は…

 速度を上げる、おそらく…よりは確信だ、あれは絶対に…

「やっぱり、この鏡かなり大きいわ、これで太陽を隠してたのね。でもこれどうやって浮いてるのかしら…」

 知りたくて端まで行く、もしかしたらこの裏に何か太陽以外の何かが隠れているのかもしれない。……見えた、端だわ。

 さて…裏はどうなっているのかしら……裏を覗き込む。

「あれ?」

 感覚が麻痺しているのかしら、今私は飛んでいない、鏡の上に立っているわけでもない、私は今、空に地面があるように思っている。

「うそ…落ちない、飛ばなくていい。……見えない地面、かしら。そんな非現実的な事…と、裏側に何があるか見るんだった」

 えっ……何あれ…、黒くて禍々しくて火山灰みたいなものがはらはらと舞ってる。絵本の雷みたいな形で真ん中が裂けている、これって…これが、

「空間の裂け目……こんなところにあったのね。…………」

 ダメだわ、言葉が出ない。というか誰が見たのよこんな所にある物を……遠くから見ればもしかしたら見えるのかしら、砂丘のずっと向こうからとか。

 見つけたはいいけど腑に落ちない、今私が立っている見えない地面、歩く事もできる。鏡はこの見えない地面に乗っているみたいだわ。

 そしてこの鏡、明らかに自然物じゃない、というか鏡がこんな場所にあるわけがない。誰かが裂け目を隠している、そう考えるしかできない。

 じゃあ一体誰が……と、ともかくモエミに知らせないと…?

 なに? 裂け目から黒い光が……なになになに‼︎ なんかまずい雰囲気、中から何か出てくるっていうの?

 出てくるなら怪獣! 出てくるなら怪獣にして! 人か動物じゃなければいいから、お願いします!

「よし、準備はほぼ完了、あとはあの子を…! お前、そこでなにをして……⁉︎」

「シオン⁉︎ シオンじゃないの! あんたそこで何して…というかこの裂け目はあなたが…!」

「まずい…非常にまずい、場所を変えるしかない。今戦うわけにはいかない!」

「あっ、待ちなさい! ちょっと、ちゃんと話を……! うわっ、落ちる‼︎」

 地面と鏡と裂け目がシオンと一緒に消えた、飛んでいなかった私は真っ逆さま、すぐに魔力を操作して浮かぶ。

「危なかった……太陽が見える、全部消えちゃった。……シオン、あいつ…!」

 とりあえずモエミに報告かしら…否! 文句言ってやる、薬屋に行ってシオンに文句言ってやるんだから!

 あいつが犯人ならすぐに辞めさせられるわよ、よし、すぐに終わらせてあげるわよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ