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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第6章 自分と世界をしっかり見つめて
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もはや詐欺師

「勝ちィー‼︎」

 ガッツ、おれのそばには倒れている鬼灯さん、勝負はすでに決まっていた。

「シオン、その勝ち方はどうなの…」

「勝ち方なんてどうでもいいんだよ、おれに騙し合いで勝とうなんて10年早いって事を教えただけ」

 何があったのか、それは3分前に遡る。



「じゃあ勝負受けるんだね、私の技に騙されずに見極められるかな?」

 ん? なんか魅力的な言葉を聞いたぞ。騙すのが好きなおれにそんな事言っていいのかな。

「騙す…おれを騙すつもりなら諦めなよ。おれも騙すのは好きだけどさ、騙されるのは嫌いなわけね。トリックとかマジックとか、そんな子供だましは通用しないよ」

「あっそ、私も騙されるのは嫌い」

 おぉ、これは面白い戦いになりそうだ。だったら…と手を差し出す。

「……何さ、その手は」

「よろしくの握手、正々堂々と騙し合うっていう約束の意味もあるかな」

「あ、うん、よろしく」

 鬼灯さんは渋々やっているようだがぎゅっと手を握る、少し冷たい。手が冷たい人はなんたらかんたら…

「ねぇそこのお姉ちゃん、ずっきーとあのお兄さん、どっちが勝つと思う?」

「えっ………えっとあのその、わた私はししシオンが勝つとおも思うよよ…」

 また美良さんはラッパーみたいになってる、それにしてもおれが勝つって思ってくれてるのか。まぁそうだね、騙される気はないね。

「よっし、じゃあ始めるかな」

「そうだね、じゃあいくよ! 嘘つきあそライアートリ……えっ……?」

 鬼灯さんはばたりと倒れる、そのあと立ち上がる事はなかった。



 そして今に至る。騙し合いに勝ったのはおれ、正々堂々って言葉に騙されたね。

「あのー、お兄さん何したの? 皆目見当がつかないんだけど……」

「あぁ、握手したでしょ? その時に魔力を流し込んだ。で、鬼灯さんが能力を使おうとした時、その魔力が混ざって暴走した、って事になるね。勝負はすでに始まっていた、とかいうやつ?」

「………」

 ははは、引いてる。さすがに汚すぎたかな、年下の娘に見せるには少し騙し方が悪かった。そうだな……1発だけ弾を撃つ、と見せかけて足の指から弾を撃つとか、能力制御に失敗した、と見せかけて形だけの炎を纏って油断を誘うとか。そっちの方がよかったかな…

「……すごい、さすがお兄さん! 魔力を流し込んだなんて全然分からなかった! やっぱりかっこいいわ!」

 え……あ、うん。…え?何なのそのテンション、自分としては勝てたからいいけど。

「え? いいのそれで? 他人から見たらかなりひどい勝ち方だと思ってるんだけど…」

「いいの、大人はもっと汚いんだから。それにずっきーも満足みたいだし、私も満足した。それに私も言いたい事あるの…」

 言いたい事? 何だろうか、それはそうとなんでなっちゃ……尻尾の人はモジモジしてるんだ? トイレかな…

「えっとね、私をあなたのお嫁さんにしてください! ……キャーーッ! 言っちゃった!」

「えっ…」

「なっ…‼︎」

 ちょっと待って、いやだいぶ待って。脳内でパニックが発生してる、落ち着け…落ち着け…冷静になれ、というかなんで美良さんまで驚いてるんだ、いきなりすぎだからか。

 えっと…どうしようか、なんて言えばいいんだろう。当然の事ながら「はい分かりました」は絶対にいけない、第一におれにはあの人が…

 いや待てよ…この娘は見たところまだ11か12、若者の戯言かもしれない。もしくは若人ならではの気の迷い、あるいは何かの罰ゲーム…と、とりあえず言葉を探さないと。えっと…

「と、友達じゃだめ?」

「………」

 あーっもう何言ってんだよおれは、黙っちゃったよこの人、でも他になんて言えばいいんだよ。だって明らかにごめんなさいは言えない状況だし、美良さんに子供を傷つけちゃいけないって言われそうだし。

 ない頭で考えに考えた結果なんだから…許してよ。

「そうだよね、まずはお友達からだよね。まだ名前言ってなかったね、私の名前はなずな、それと気になっているようだから教えてあげる、この尻尾は本物だよ。尻尾を隠すためにずっきーの能力で2人とも変身してたら、なんか人を封印したとかいう一族とたまたま同じになってさ、それで蹴られてたってわけ。助けてくれた時のお兄さんかっこよかった……一目惚れっていうのね…」

「あ、それはどうも…」

 長い、この人もなかなかのおしゃべりなようだ、露世さんといい勝負かもしれない。

「で、なに? 用事はそれだけなの?」

「それはわたしが説明する」

 あっ、鬼灯さん、倒れた時についた膝の傷が治ってる、美良さんが手当をしてくれていたようだ。

 説明? 何のだろう。やっぱりドッキリ企画だったのかな?

「さっきあんなやつイチコロって言ったけど…あれは嘘、あんな変な能力を持ったやつに勝てるわけがない。そこで、あんたに目をつけたんだ。お願いだ、わたしと組んであいつを倒してくれ! 今すぐにとは言わないから、わたしも騙すだけで力は無いし…」

 そっちか、騙された。確かに力は見てないけども、嘘だったのか。

 でも、えー…復讐の手伝いって事? そんな勝手に目をつけられても困るよ。うーん…でもおれもあの人には負けてるしな。

「わかった、じゃあまた機会があったらね。……もうそろそろお昼だ、よかったらお昼食べて行きなよ、あまりいいものは作れないけど」

「やったー! お兄さんと2人でお昼ご飯だ!」

 みんなでだよ…

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