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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第5章 『変わったね』と言われたくて
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そろそろ冬…なのに

「おいっすー、元気してた?」

 つづみさんの言った10日後、おれは白花さんの家を訪ねた。ついでに薬の確認も兼ねている、何が起こるのかは分からないけども、とりあえず仕事はこなさないとな。

「元気してた?じゃないわよ、あんたあの薬はなんなのよ、睡眠薬飲んでみたらすぐに寝ちゃってお布団にたどり着けなかったじゃない!おかげで風邪ひいちゃったわよ…まぁ風邪薬もよく効いたけど…」

「……ちゃんと注意書き読んだ?」

「読んでないです」

 白花さんもか…注意書きじゃなくて説明した方がいいのかな、でも一緒に紙が入ってたら読むでしょ普通。面倒くさいのかね?

「まぁそれはいいとして、もうお昼だけど何かあった?」

「特に何もないわよ、つづみさんの能力は確かにすごいけど、少し信じ難い部分もあるのよね。ほら、瞬間移動とかしてたでしょ?つづみさん曰くそんな事は出来ない、ですって。多分あの負の魔力にやられてたんでしょうよ」

「ふーん…じゃあ何もない可能性大と?」

「いや、そういう訳じゃないんだけど…難しいわね…」

 まぁ、おれは何もないならないでいいんだけど。運命を変えるって言うけどさ、それもまた決められた運命、変わってなんかないと思うんだよな。

 白花さんの隣に座り、なんとなく空を見上げる。雲ひとつない晴天、秋も中頃で少し寒くなってきた。ウラはずっと冬だっけ、もうすぐあの寒さがこっちにもやってくるのかな。

 ま、どうでもいいけど。そういや寒くなって薬草が生えなくなるとかって考えた事なかったな、ウラは雪の下にあったけど…こっちは大丈夫なのかな。

「………」

「………」

 気まずい、なんか喋んないといけないかな?でもこういうのって何か言おうとすると相手も同時に何か言うからな、黙っとこ。

 沈黙十数秒後

「ねぇシオン」

 ほらやっぱり、待っててよかった。

「なに?お腹すいた?」

「お昼ならさっき食べたわよ、山にでも行ってみないって事よ?金秋山じゃない山に。もうすぐ紅葉も見えなくなるし、遠くで見るのと近くで見るのは違うわよ」

 ……何を言うのかと思ったら山か、金秋山とは別の山…栗とかあるのかな?

「いいんじゃない?どう…いや、なんでもないよ」

「…?まぁいいわ、じゃあ決まりね」

 危なかった、どうせ暇だし、とか言ったら怒られるもんな。前にいた世界でもこんな事があったからな、いやはや本当に危なかった。


 空を飛び、おれと白花さんは山へ向かう。


 山か…1ヶ月も秋の山にいたから、紅葉なんて見飽きて……黙っていよう。

「ねぇシオン、どうなのよ紅葉は」

「そうだね、前にいた世界でも山とか紅葉はあったんだけどさ、おれがいたのは冬と春の境だったから。見るのは金秋山が初めてだったんだよね、生まれてから日が浅いから」

「ふーん…そういえばシオンの世界の事って何も知らないわね、聞いた事なかったから」

 確かにそう言われれば…言った事なかったな、でも言ったところで何かあるってわけでもないし、お金がもらえるわけでもないし。

「知りたいの?おれがいた世界の事」

「いいえ、聞いたら他の世界への憧れな強くなるだけ、やめておくわ」

「そう、じゃあ話すよ」

 白花さんが口を開けてハァ?みたいな顔をしている。嫌って言われたらやらないとねぇ、……性格悪いな、おれって。やめとこか。

「うそうそ、冗談だからさ。だからその顔やめて…」

「違う……あの人たち、誰?」

 ん?あの人たち?こんななんのいいところもない山なんか……ふ、風情のある山に他に誰かいるのか?でも誰?とか聞く事はないんじゃないかな、知らない人くらい当たり前のようにいるでしょ。

 白花さんの指差す方向、その先を見る。赤や黄に染まった葉が広がり、山道を覆うほどの落ち……誰⁉︎


「ほら雪!葵!はやく落ち葉を集めて!焼き芋は目の前ぞ!」

「心得ております!もう少しで十分な量が集まりますので今しばらくお待ちを!」

「………お待ちを……」

 肩に当たるくらいの髪のこの集団を束ねているであろう背の高い女の人、長い髪を後ろで纏めている少女、ポニーテールというのだろうか。さらに短髪でポニテ少女と同じくらいの無口な少年がいた。

 しかもそれだけじゃない、少年の方はまだしもあの2人、寒くなってきたってのにミニスカートに腕まで出してる。寒くないのか…

 ……えっと、あんなキャラの濃い人たちいたっけ…。いや、いたとしても関わり合いになりたくない。だってそうだろ?焼き芋するくらいの落ち葉なら一瞬で集まるよ、なのに…なのにあの人たちは…

「自分の身長よりも多い枯れ葉なんて…どれだけさつまいも焼く気なんだよ…」

「もしかして、もしかしてだけどあの人たちが私たちの運命を変えるんじゃ…」

「えっ…と…か、帰らない?なんか関わっちゃいけない気が…」

「ん?おーい!君たちも焼き芋しないかー!」

 うわっ、まずい気づかれた…どうしよう、今から逃げたら完全に感じ悪い人になってしまう。かといって関わりたくはない、どうすれば…

「いいんですかー?」

 ちょっ…!白花さん⁉︎えっ、ちょっ…ええ?

「じゃあこっち来なよー!早く早くー!」

 リーダー格が手招きする。う、うん。まぁもうこうなったら腹くくるしかないよね。

「ほら雪、早く火をつけて」

「承知!ソイヤ!」

 ポニテ少女が手を落ち葉にかざす、すると突然ボゥッと火がついた。

 うわっ、あの人たち能力持ちなのか…これはますます運命が変えられそうで怖い。

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