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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第5章 『変わったね』と言われたくて
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自分の思う通りにするから

「ねぇ白花さん、まだやるの?」

「ええもちろん、あなたの方が色々な素材を知っているんだから、少しくらい私に協力してもバチは当たらないわよ」

 つづみさんを倒した次の日、私の家にて、私は修行をしている。まぁ、修行と言ってもシオンが具現化した素材を見て、触るだけなんだけど。

 私だって見た事も聞いた事もない素材には変えられない、爆弾だってキアレとの勝負の後に楽に勝てる、と思って勉強したくらいだ。まぁマリと違って『変えられるならフリー・マテリアル』楽でいいわよ。

 楽に勝てて悪いことはないもの、むしろ睡眠薬でも飲ませて相手の記憶を奪いたいくらいよ。そうすれば誰も傷つかずに済むじゃない。

「さあさあ次よ次、早くしてちょうだい」

「…あのね白花さん、最初に言ったと思うけどさ、物質の具現化はけっこー魔力を使うの、もう疲れたんだけども…」

 まったくだらしないわね、まぁシオンはかなり弱いものね、聞いた話じゃ重力も使えなくなったらしいし。宝の持ち腐れって言うのかしら、シオンが強いんじゃなくて能力が強いのよ。

 仕方ない、喝を入れてあげるわよ。ついでだけど私ってついてる、そういえばこいつは薬屋、睡眠薬くらい…へへへ。

「じゃあ薬買ってあげるから。最近寝付けないのよ、睡眠薬とかないの?身体に優しい種類のやつ、それ1つ頂戴」

「………」

 うわっ、露骨に嫌な顔してる…

「分かったわよ…他のも買うから、あんた戦うよりも商売人の方が向いてるんじゃない?」

「褒め言葉として受け取るよ」

 薬を買うと言った後のシオンは正直だ、ポンポン素材を出してくれる。えっとなになに…ダイヤモンド?ゴールド?何言ってるのかわからない…

 なるほど、金剛石と金ね。………これでお金儲け…無理か、宝石や金なんてここじゃ価値のない物だもの。

「それでこれ、これが面白いんよ。ラバーって言うんだけどこれが………」

 あーはいはい長い長い、話半分で聞いとこう。

「はぁ…10日後か…」

「ん?何が?話聞いてる?まだ途中だけど…あぁつづみさんの、別にそんな気にしないんでいいんだよ、大げさな事言ってるけどさ…どうせ晩御飯がどうのこうのってだけだよ」

「あんたは…はぁ、いいわね楽観的で、前はそんなんじゃなかったと思うけど」

 なんなのかしら、これじゃあ前の若干腹が立つ敬語のシオンの方がいいわ。さすがに今のシオンはざっくりしすぎている、マリよりも将来が心配だわ。

「………」

「ところでさ…」

「………」

「さっきからなに覗いてるのよ?いるんなら出てくればいいじゃない」

「あっえっ…あ、あはは…ばれてたのね…」

 襖からこっちを覗いていたモエミが笑いながら出てくる、まったく、これじゃ安心してお昼寝もできやしないわ。

「あっ、望永実さん、どうも」

「え、ええ…どうも。…ちょっとちょっと、白花ちゃん」

 シオンに聞かれないように私の耳元で小声で話す。

「なによ」

「さっきからずっと気になってたんだけど、シオンさ…何か変わった?何があったのよ?」

 はぁ…私が知りたいわよ。友達が亡くなったのよ、その後遺症みたいなものでしょ?と簡単に説明する。

 案の定モエミは「あっ、そうなの」で納得した。そういえば以前にシオンの事を話したらすごい怖がってたけど…今はそうでもないみたい。

「ねぇシオン、あなたカナンに来れてよかった?」

 とか訊いてる、前のはなんだったのよ…

「えっ…そりゃあまぁ…ここはいい世界だし、能力も隠さないでいいから」

「そう!それはよかったわ!………」

「何よその目は、人がなんて言おうと私は嫌いよ。私は私として私の道を生きたいの、人の意思に流される人生なんてごめんだわ。人間的に正しくなくても、私がいいと思った行動をする、それが私にとっての正の数と確信しているから」

「芯の強い人だね白花さんは、おれはそんな風には生きれないよ」

 まぁ…あなたには分からないわよ。私の辛さなんてね、私の心は私の物、他の誰のものでもない。

「まぁいいわ、(あの人にそっくり…この娘にはあんな事…」

「ん?モエミ何か言った?」

「ううんなんでもないわよ、じゃあ私は帰るからね」

 いつも通りなにかするわけでもなく消える、仕事がないのならそれでいいのだけど。

「ちょっ!今、望永実さん消えたよ!あの人も能力者なの⁉︎」

「あーうんそうそう、もうシオンも帰っていいわよ、なんか疲れちゃった…」

 限りなくそっけない感じを出す、疲れたのは事実だ、嘘ではない。自分の人生哲学を語って気が抜けたのかしら、今日は休みたい。

「そうなの?じゃあ薬おいていくよ、お金は今度でいいから」

「ありがとう、まぁつづみさんの言った10日後にでも会いましょうよ、お互いに何があるか分からないから」

「了解、あっそうだ!」

 今度は何よ、早く横になりたいのよ手短にお願いするわ。

「白花さんの人生観、おれにも当てはまるところあるよ。もっとも、おれはできるだけ自分をマイナスに持っていこうとしてるけど。じゃあね!」

 また意味のわからない事を…マイナスって何よ…


 それからの8日間、事件も何もなく穏やかな日々が続いた。これが嵐の前の静けさ第2弾なのかしらね。

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