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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第5章 『変わったね』と言われたくて
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全知全能に敵無し

 話に聞いていた人と全然違うわね、ルカ(暴力男じゃ失礼よね)が言っていたつづみさんは女神のような人、でも今、私の目の前にいるつづみさんはまるで邪神、本当にこの人がつづみさんなの?

 昔話によればつづみさんも能力持ち、神の声…ね、なんだか厄介な事になりそうね。はぁ…なんで私はこんなに災難に遭わなくちゃならないのかしら、シオンも死んじゃったし…仇はとってあげるわよ。

「ある程度紙はあるわね…不安要素は数が無くなる前に倒せるか、ね…」

「うふふ…神に通用するものは何もない、あなたの行動は全て無意味なの。そう、神の前にはね」

 耳をすませながら緩やかに答える。

 意味ありげな事なんか言っちゃって…いわば私はその神様が決めた運命の所為でこんな事になってるんだから、この人を落ち着かせる(倒す)事は神様に少しだけ歯向かう事になるのかしら。

 だったら遠慮無くやらせてもらうわよ、神だかなんだか知らないけど、私にこんな運命を与えた事を後悔させてあげるわ!

「よしっ!かかってきなさい!あなたが神なら私は紙よ!」

 ………我ながらくだらない事言っちゃった、なんかすごい恥ずかしい…

「今、何か言ったかしら?」

「う、うるさいわね!これでもくらいなさい!避けても無駄よ、しつこくつきまとうから」

「ふふ…右手でポケットの紙を取り出し、投げる…ね」

 私は紙を8枚取り出し、2枚ずつ重ね、鉄に変えて投げる。

「4枚…のように見えて8枚、弾くとそれぞれがぶつかり合って当たる…ね」

 さあ弾きなさい。弾いた時があなたの最後、魔力を挟んだ紙が弾きあって怪我するわよ。しつこくつきまとうなんて嘘、私にそんな芸当ができるわけがない。

 さっきからごちゃごちゃ言っちゃって、その蓋のない口を黙らせてあげる。

「ありがとうございますモイラ様、ではお言葉通りに…」

 つづみさんは動かない、やはり弾く気だ。やったわ、早く決着がつきそうね。

「アテーナー様、力をお貸しください…『女神の楯アイギス』」

 嘘っ⁉︎いきなり楯が出てきた…。楯に弾かれた8枚の紙は不規則な道を進む。

 何なのあの楯、私の紙はそんじょそこらの楯なら貫通するのに…それとも『変えられるならフリー・マテリアル』の調整を間違えたかしら…

「言ったでしょ?私…いいえ、モイラ様の前では貴方の行動は無意味、モイラ様は全てお見通しなのよ。」

 もいら?もいらって何かしら…どこぞの怪物みたいな名前だけど。

「神を冒涜するなんて…貴方、地獄に堕ちるわよ?」

「はい?私がいつ神様を冒涜したっていうのよ?」

「モイラ様は神、化け物ではないわ。神は全知全能、貴方は隠し事もできない、できることはそう…祈る事よ」

 げっ…心を読まれた⁉︎嘘でしょ…心を読むのは真知さんの専売特許じゃないの?なんでこうも私は心を読まれなきゃならないのよ。心だって個人情報なのよ。

「はぁ…」

「なに?ため息なんかついて、悩みがあるのなら神に聞いてみなさい」

 そうね…聞いてみようかしらね。

「ええ、全知全能の神様はなぜ私をこんな不幸にするのよ。神のもと皆平等であるのなら、私を能力を持たない普通の人間にしてみなさいよ。これは私の不満よ、子供みたいに喚いてるだけ。でも私にとっては何よりも大切な物なの、もしも私が神に嫌われているのならとことん嫌われてもいい、とことん仕返ししてあげるわ!」

「…ええ、そうですね。この人間は愚かです『マナサー』様。ええ、慈愛の女神の貴女様もこの者に対する愛は無し、ええその通りだと思います」

 ああもう1人でごちゃごちゃ…やかましいのよ。声を聞くのなら聞くだけで喋らないでいいじゃない、なんでいちいち声に出すのよ、舐めてんのかしら?

「ふぅ…、じゃあ神様に文句も言ったし、これでとことん戦うわよ。もちろん私が望むのは短期決着、そして極力傷つけない事、さぁどうやりましょうかね…!」

 本当にどうやりましょうか…啖呵切ったものの対抗策が全く思いつかない。神の声…ね、未来予知と読心術、おまけに楯付きだなんてどんな悪夢よ。

 わたしは神を敵に回す!って悪役がよく言うけど、本当に敵に回すと恐ろしすぎるわよ。

「『変えられるならフリー・マテリアル』、鉄でダメなら敢えて…ね」

 今度も8枚を4枚作戦よ、少し細工をしてね。多分見抜かれてるんでしょうけど…なんとかなるわよ!

 今度は反動をつけるためにつづみさんに向かい走る、ある程度速度がついたところで紙を投げた。

「それ行け!」

 8枚の紙を2枚ずつ重ねて間に魔力を挟む、ここまでは一緒。違うのはここからよ。

「…ええ、なるほど。分かりました、モイラ様のお言葉通りに」

 またつづみさんは耳をすませている、そして何か喋ったかと思うと、今度はさっきのアテなんとかとは違う神の名前を呼ぶ。

「ルー様、貴方の槍をお貸しください」

「…また…、今度は槍?やっぱりばれてるじゃない…」

 つづみさんに接近しながら愚痴をこぼす、でも作戦はここまできたら変えられないわね、一応やってみましょう。

 もう1枚紙を出して鉄に変え、さっきの2枚重ねに向かって投げる。

「つながれ」

 私が鉄の代わりに変えたのは網、紙の形に固めた網を投げた。でもそれは1つ1つが小さくてほぼ意味を持たない、だから魔力を挟んだ。

 魔力が網の糸の一本一本まで行き渡り、バラバラのそれらをくっ付ける接着剤の役割をする。これでつづみさんを捕まえられる…

「と、思ったんだけどなぁ…」

「よくわかってるじゃない、そうよ、『無意味なの』」

 つづみさんがるーの槍とやらを回転させる、網は回転している槍に絡め取られてしまう。あっけないわ…

「ふふ…もう少し面白い手品をしなくちゃ神は喜ばないわよ」

 つづみさんがるーの槍を消すと絡まっていた網はボテンと砂に落ちた。

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