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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第5章 『変わったね』と言われたくて
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嫌なものは嫌なのよ

「それにしても不思議な糸だな、鞠さんに近づくにつれてどんどん短くなってる」

 通常なら糸を手繰らないといけないが、この糸は自分から短くなっていく。それはもう不思議だ。

「あぁこれ、魔法道具マジックアイテムとかいうの?マリのお手製だってさ」

「へぇー、鞠さん器用な事するんだな」

 器用すぎるわよ、まったく厄介な事してくれちゃって、これじゃあ場所が分からなかったわごめんなさい、ができないじゃない。

 ともかくだ、今回こそはシオンとマリに全部任せよう。絶対にキアレの時みたいに代わらないわよ。

 そもそもなんでこんな事になったのよ、私たちは歴史さん(呼び方が『歴史さん』で固定されているけど気にしない)を捜してたんじゃないの?それがどうして暴力男を追ってるのよ。

 確かに女の子を足蹴りするようなやつは許せないけど…それでも私には関係ない。だいたいマリもマリよ、別に追いかけることないじゃない。放っておくのが得策じゃ………

「あっ、あれ鞠さんじゃない?あとあの男も。………何か話しているみたいだけど」

 あら本当、もう着いちゃった。いやそんな事よりもシオン、こいつの口調がどうも違和感ありありで調子狂う。何があったのかは知らないけどそれやめてくれない?

「そうね、何を話しているのやら」

 当然言えない、慣れるまで我慢するしかないか。

「あれ?なんか鞠さん達の様子がおかしい気がするんだけど…」

 いやあんたの口調の方がおかしいわよ、だいたいあいつの何がおかしいって…本当だ。

「確かに…あっ!あいつどっか行っちゃう、なんでマリは追いかけないのよ」

 追いかけないばかりじゃない、マリのやつ手まで振って…何考えてるのかしら。

 10秒もせずにマリの元へたどり着く。

「おお…遅かったな…いやぁひどい話もあるもんだなぁ…」

「ちょっと…なんで泣いてんのよ、何があったっていうの?」

「なんでって…あいつ可哀想すぎるんだよ…こんな事が世の中にあっていいのかよ…。みんな救われたのにさ…恩を仇で返すなんて…酷すぎるんじゃないかなぁ…」

 はぁ?どういう事よ、まさか自分の悲しい話でもして同情を誘ったのかしら。確かにマリは急いであいつを追ったから、あの2人が何をされたのか知らないし、それを含めてもマリがこんなに涙を流すなんて…

 そうだ…!可哀想な人を追う必要は無いものね、だったらここでこの事件は終了…

「可哀想かどうかは知らないけどさ、おれは追う。乗りかかった船って言うの?あの2人に気をつけて帰れって言ったんだ、帰り道にある障害は全て取り除かないと…」

「じゃあシオンだけで追いなさいよ、私は歴史さんを捜さなきゃいけないんだから」

 私が言うとシオンが「歴史さんって人なんていたかな…」と小声で言うのが聞こえた。

 まったくこいつらは、私にはついていけない。さあさあ戦いはシオンに任せて、私とマリは歴史さんを捜さなきゃ。

「あぁハク…さっきの人が私達の言っていた『歴史さん』だよ。悪いけど私は今回はここで離脱だ、あの人を倒す気になんてなれないからさ…」

 嘘でしょ…なんなのよ運命、あんたは私がそんなに嫌いなの?確かに私はできた人間じゃないわよ。でもね、さすがにここまで酷いことはしてないと思うわよ?

 いや、ここは冷静に。シオンの目的はあいつなんだ、上手くいけば私が行かなくても済む。

「そうなの、じゃあ私もシオンに任せて…」

「ほら早く行くよ、見失うから」

 そう言うとシオンが私の服の襟を引っ張る、この流れは…

「あーもう!なんでいっつも私の意見は無視なのよー!」




「はてさてどこに行ったかな…ちょっと白花さん、元気ないよ?何かあった?」

「何かあった?じゃないわよ…なんでいっつも、マリもマリだし…泣きたいのはこっちよ」

 今度は町の中をシオンと散策だ、マリは本当に離脱しちゃうし、歴史さんはあの暴力男だし、もう散々。

 でもあの暴力男は本当に何がしたいのかしら、そういえばマリが「歴史、歴史」言ってたから忘れてたけど、他の事も聞いてたわよね。えっと確か…

「昔に流れて来た人を知らないか、ね…」

「ん?なにそれ、流れて来たっておれみたいに?あいつがそんな事を聞いてたん?」

 あぁそうか、シオンは私達が調べてた事知らないんだ。

 私はさっきまで調べていた事、図書館に多く現れた事を伝える。なんとなくだけど私のお母さんが書いた、とは言わなかった。

「へー、そんな事がねぇ。それじゃああの人も外界人なのか?」

「あっ、なるほどそういう考え方もあるのね。確かにそうかもしれないわね、外界人なら100年以上生きる種族もいるかもしれない、あいつも誰かを捜しているって事になるの?」

 シオンはそこそこ頭が切れるのか?いや、私がいやいや言いすぎてそこまで考えが回らなかっただけか。

 なんにしろ少しずつ分かってきた、おそらくあいつは、自分とは別の時期に来た知り合いを捜している…

 でも待って、どうしてカナンに来たってわかるの…いやそれ以前の問題にどうしてカナンに来れるの?

 分からない、調子にのって少しずつ分かってきたと思い上がったのがいけなかった。

 自分の中で質問し、自分の中で解決する。解決はしていないが。

「白花さん…白花さん、いたよ。あいつ」

「えっ…あぁごめんなさい、それであいつは何をしてるの?」

 どうやら何度か呼ばれていたようだ、少し考え込んでいたようだ。

「また誰かから話を聞いてるけど、あっ…また飛んだ」

「まったくいつまで付き合わせるのよ」

「でもなんかおかしいよ、さっきとスピードが違う…」

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