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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第5章 『変わったね』と言われたくて
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この人信じられない

「はぁ…なんでこうなっちゃうのかしら…」

「まあまあ、そう言うなって。私はこういうの好きだぞ、そういや今更ながらハクの好きな事ってなんだ?」

 町へ向かう道中…いや空中か?まあいい、私達は飛びながらこんな話をしていた。しかし本当に今更だ、さっきまで「私達は親友だろ?」とか言ってたのに、本当に調子のいいやつ。

 まぁ私もそんなマリが嫌いではないのだが。

「好きな事ねぇ、うーんと…強いて言えば、家の縁側でお茶を飲む事かしら。町に行くのは久しぶりだし、水出しの緑茶でも買って帰ろうかしらね」

「なんかお前、お年寄りみたいな事言うな、もっと若者らしい『アグレッシブ』な事言えないのか?」

 「あぐれっしぶ」ってなに?またお得意の『いんぐりっしゅ』かしら?

 いや違うそうじゃない、私はまだ17歳だ、お年寄りみたいだなんて失礼な、少しくらいは歯に衣を着せなさいよ。

 そう思いながらも、面倒な事を避けるために適当に返す。

「はいはい分かりました、今度から気をつけますよ」

「まぁ私もお茶を飲むのは好きだけどな、おっと…そろそろだな」

 くだらない会話を交わし、私とマリはようやく町にたどり着く。さて、勉強熱心な歴史家さんを捜すとしますか。


 町はいつもと変わらない、華やかさは無いが、賑やかで活気がある。これだけ人がいれば、怪しい人を捜すのは骨が折れる作業となる。

 訊かれた人に出会えれば早いのだが…まぁいつもの事だ、事件がこっちにやって来ると言うか、すぐに見つかるだろう。

「さてと、じゃあ情報収集を始めますか!」

 マリが張り切ってそう言うが、私は今回も乗り気ではない。特に今回は私にとって、条件が最悪だからだ。

 私は情報収集というやつが苦手だ、別に人が嫌いなわけではない、あまり人に関わりたくない理由があるのだ。

「あのーすみません、ちょっと話聞いてもいいですか?」

 私がこう訊くと、大体訊かれた相手はこう返す。

「あっ、霜月のお嬢さん、今日は何の御用ですか?また何か事件でも、いつもご苦労様です」

 これが嫌い、いつもいつも霜月のお嬢さん、もしくは白花様、なんでこんな風に呼ばれなきゃいけないのよ。

 最近の事件は良かった、誘拐事件の時はシオンが全部やってくれたし、毒草事件は八百屋のおばちゃんだった。この人とマリ、その他の能力者は私を普通に扱ってくれるから好きだ。もっと言えばざっくばらんとした人が好きなのだ。

 だが今回はそうはいかない、マリに頼むにも私の存在は必ず気づかれる。我慢するしかないか。

「えぇそうなんです、実は…」

「『歴史に詳しい人はいないか』って誰かに聞かれなかったか?」

 マリが私の言葉を横から遮る、マリ…今回はこいつに感謝しなければいけない。いつもなら文句の1つでも言うところだが、今日はマリが頼もしく見える。

「あぁ…いや、知らないね。悪いけど他をあたってくれ」

 マリが訊くと急にその人は態度を変えた、私にはぺこぺこしてたのに…信じられない。

「そうか、悪かったな時間取らせて」

 そんな事なんか気にせず、マリはその人に言った。マリが今どう感じているのかは分からない、きっといいものではないと思う。いや、こいつなら本当に気にしていないか?

「さっ、次だ次、早く行こう」

 マリは明るい笑顔を見せ、私の服を掴んで引っ張った。


「ねぇ、これって真知さんに聞いた方が早かったんじゃないの?」

 情報収集を始めてから、すでに1時間弱が経っていた。途中、占いの順番待ちをしている、と言う人達にも話を聞いたが…誰も知らなかった。

「なんでそれ最初に言わなかったんだよ、骨折れ損のくたびれもうけじゃないか」

「マリ、細かいようだけど違う。『骨折り損のくたびれもうけ』よ。それに、本を読むだけなら真知さん達は何の介入もしないでしょ?知らない可能性があるなら、行く意味が無いと思っただけよ」

 だが、ここまで来てはもう真知さん以外あてが無い、そう考えた結果だ。

「でも、もう行くあてが無いから仕方なく…って事か?」

 マリが見事に私の考えを言い当てた、マリの先読みの力は私も驚かされる事がある。

 私は首を縦に振り、目でその通り、と訴える。

「じゃあ行くか、ちょうど図書館近いし、真知…さん知ってればいいけど…」

 マリがその意図を理解したのか、すぐに行動に移った。私はある事に気がつく。

 あっ、真知さんって言った。なるほど、ここら辺は直されているのか。私はさん付けされていないモエミに少しだけ同情した。


「あっ、マリと白花さん、お久しぶり。元気してた?」

 アレサだ、私も久しぶりに会った。マリとは相変わらず仲良くしているようだ、それが少しだけ寂しいと思った事もあったが、今は特に気にしていない。

「あぁ、ちょっと聞きたい事があってな。真知さんいるか?」

「うん、ちょっと待っててね、呼んでくるから」

 そう言ってアレサは奥へと向かった。しかしながらこの図書館は広い、一体何冊の本がここにあるのだろうか。一生かかっても読み切れないだろう。

 そんな事を考えつつ、待っている間が暇な為、私はマリに質問する。

「ねえマリ、あなた最近ここに来てないの?」

 いきなりの質問に驚いたのか、マリは少し間を空けて答えた。

「まぁな、いっつもここに来たらアレサがお菓子出してくれるからさ、それが悪いと思ってな」

「へー、うちでは遠慮無いくせに」

 私は少し嫌味を利かせて言う、いや…少し嫉妬も入っているか。

「なんだよ、別にいいじゃん。まぁハクは私以外に歳の近い友達いないもんな、妬いてんの?」

「妬いてない、それに友達ならいるから」

「えっ!本当か⁉︎なんだよ〜じゃあ私にも紹介してよ〜」

 マリには悪気なんて無いのだろう、あまり人の気持ちを考えていないマリに私は嘘をつく。その所為で取り返しのつかない事になってしまった。どうしよう、友達…友達…美良さんに頼もうかしら…

「真知さーん、薬の交換でーす」

 助けの舟が来た、久しぶりに聞くこの声はあいつだ。

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