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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第4章 表があれば裏がある
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能力全開

「さて…じゃあ嬢ちゃん、1発頼むわ」

「ハイ…朔日様」

 俺との1対1を受けた朔日は、美良さんの右手から放たれた弾に撃たれた。だが怪我はしていない、ずるいぞあいつ。

「1対1じゃなかったんですか、嘘はいけませんよ嘘は」

「ん?あぁ問題ない、この嬢ちゃんは言わば『俺』だからな」

 なんだ、屁理屈は言うのか。俺の予想では多分、目かな?なんにしろ厄介なこった。

「まぁいいです、始めますよ」

 俺は右手にゆりさんからもらった刀を、左手に魔力で作った刀を構える。

 三葉さんとの山籠りで発現した「エネルギーの具現化」、これは正しくなかった。「具現化」、これが正しい能力、あの時出た刀も薬研も、俺が無意識に創り出していたものだった。

 これにより可能になった事は多い、だが消費魔力が激しい為、多くは使えない。巨大な岩を上空に出現させ圧死、なんて事は出来ないのだ。

 細かいものをいくつか創り出す、これが1番。

 まぁそんな事はいい、今は目の前にいるこいつをなんとかしなくては。俺は朔日から目を離さずにどう出るか、どう出てくるかを見極めようとする。

「遅いぞ」

 一瞬、俺は一瞬もこいつから目を離していない、だったら何故だ。

「えっ…」

 7メートルほど離れていた距離が、一瞬で0となったのだ。迫った奴の背中には黒い渦、これが秘密なのか。

 朔日の拳が俺を襲おうとする、俺は急いで刀でガードした、したはずだった。

 ガキンッ!という音を立てて、俺は空へと吹っ飛ばされたのだ。奴の手は鉄でできているのか、そうでなければ奴の拳からは血が出ていなければならない。

 新たな疑問を残しつつ、空に飛ばされた事でもう1つの謎が解けた。

 俺を殴った奴の体の後ろ半分が無かったのだ、その半分はというと、さっきまで俺たちが睨み合っていたところにいる。

 これはまずい、奴はやろうと思えば一瞬の隙もなく瞬間移動ができる。もっと言えばその場でパンチを繰り出しても、渦を使う事でどんなに離れていても当てる事が可能になる。

「くっ、かなり厄介な能力ですね…」

 俺は小さく呟く、今にも瞬間移動で俺を殺しそうな奴はこう言った。

「ふっ…少年がそう思うんならそうなんだろうな」

 なるほど、耳だったか。そうでなければこんな小さい声が聞き取れるはずがない、まぁ聞こえたからと言ってどうという事はない。

「ほらほら、次行くぞ」

 そう言って、朔日は俺の予想通り拳だけを俺に飛ばしてきた。速さはあったが、あまりにも予想通りすぎて軽く避ける事ができた。

 しかし本当に厄介、遠距離から攻撃すれば渦に飲み込まれ俺が危険になる、近距離から攻撃すれば謎の鉄の拳でガードされるだろう。

 だったらどうすれば…奴の体が全て鉄の様に硬いとは考えられない、だったら美良さんの胴を盾にする必要は無い、その体で刀を折る事さえ可能なはずだ。

 そこをつくか…でも下手をしたらあの渦に俺自身が飲み込まれる。だったら…

「これしか…⁉︎」

「何か思いついたか…まぁ無駄だろうがな」

 危ない、聞かれてたんだった。迂闊に何か言うとまずいな、黙っていようか、それとも利用するか?

 いや、止めておこう。ばれていたら元も子もない。

「考えてる暇があるのか?後ろだぞ」

 そっちこそ教える必要があるのか?俺は後ろを見ずに体をサッと横に避ける、それが甘かった。

 俺に攻撃してきたのは拳ではなかった、美良さんの魔弾だ。もちろん拳が来ると思っていた俺に弾は当たる、子供みたいに思われるだろうが、すごく痛い。

 さらに背後を見てみると、魔弾だけ移動したのではなく、美良さんの手が出ていたのだ。

「くっそ、こんなの2対1じゃないです…」

「何言ってんだ、俺は遠距離は殴るしかできないんだ。それに嬢ちゃんも俺自身だって言っただろう、問題は無い」

 やはり屁理屈だ、いいよいいよやってやるから。

 能力全開フルパワー、これで遠距離攻撃も当たるはずだ。

「重力を滅茶苦茶に弄りました、動くと関節が変な方向に曲がってから詰みになりますよ」

 そう宣言した、もちろん嘘だ。『滅茶苦茶に』というところだけだが。

 俺はゆりさんからもらった刀を鞘に収め、具現化した刀を使う。

「ハッタリぬかすなよ?その刀で何しようってんだ?」

「この刀で?この刀では何もしない。この刀をぽいっと投げればこの刀自身があなたを貫くからだ。俺はそれを手伝うだけ、あなたは動いてもいいですが…その場合は死の覚悟ができてますか?」

 その答えを聞かずに俺は刀に魔力を込め、振ると同時に放す、魔力で出来た刀から魔弾を放つのは容易い。さっきまでの自動追尾ホーミング弾とはわけが違う。

 自動追尾ホーミング弾は朔日めがけて猛スピードで飛んでいく、スピードもパワーもさっきと違う、当たれば即勝利が決まるほどだ。

「ふん…」

 朔日は鼻で笑う、それだけか?と言いたそうな目で俺を見て、そして俺の弾の軌道に渦を出現させた。

 もちろん違う、ここからが俺の…騙すのが好きな俺の真骨頂だ。重力は移動制限のためじゃない、もちろんそれも兼ねているが本当の意味はこれからだ。

「歪な重力の中で踊る、不規則な弾道ロスト・ロード

「なんだと…⁉︎」

 奴は声を出して驚く、それも無理はない。俺の自動追尾ホーミング弾いきなり軌道を変える、滅茶苦茶な強さの重力が軌道を変えたのだ。

 弾は反動で弧を描きながら右へ左へ、上へ下へと、これまた滅茶苦茶に軌道を変えて踊り狂う。

 もちろん滅茶苦茶なのは強さと軌道だけ、重力の向きと変える場所は計算しておいた。さらに何パターンも軌道を用意している為、どこから攻撃がくるか奴にはわからない。

 そして通常弾でなく自動追尾ホーミング弾にすることにより、稀に奴に向かって飛んでいくという不規則さを増すため、当たる前に渦に飲み込ませるという事を同時に不可能にした。

 踊り狂った弾はついにそのステップを止める、朔日のいる方向に向いた重力に引っ張られ、攻撃が始まる。

「ぐっ…まだ…まだだ!」

 何十発もの弾が朔日に当たるが、奴は思いの外タフだった。全ての弾が当たりきり、奴は不気味な笑みを浮かべた。

 次はこっちの番だ、とでもいうのか…甘い。

「何か忘れてませんかね?まだ攻撃は残ってますよ?」

 その言葉と同時に奴の笑みが消える、そして苦しみの表情を浮かべた。胸に刺さった魔力で出来た刀…それが原因だろう。

「が……はっ…‼︎」

 俺は辺りの重力操作を解いた、自分の後ろに魔の手が迫っているとも知らずに。

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