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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第4章 表があれば裏がある
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悪夢と再開する

「ふぅ…今日の仕事も終了、じゃあ俺はまた捜しに行きますか」

 裏に来てから2週間ほど経った、美良さんはちゃんとご飯食べてるかな、そんな事を考える余裕が出てきた。

「毎日毎日ご苦労なこと、そうね…今日は私もついていこうかしら?」

 ゆりさんがそう言う、へ?なんでまた美良さん捜しにゆりさんが?

「ゆりさんが行くのなら私もお供します」

 瑠璃さんまで…あまり大人数で行くと奴に気づかれる…いや、もう2週間も捜していて一回も出くわしていないんだ、だったら大丈夫か?

 俺は少し迷ったが、1人で捜すのもつまらないと思い、その申し出を受け入れた。

「冷えるからあったかいお茶を持っていきましょうか、用意してきます」

 瑠璃さんもノリノリだ、何分もせずにお茶を水筒にいれてきた。もしかしたら最初から付いてくるつもりで、お湯を沸かしていたのでは?

 まあいいか、協力してくれると言っているんだ、これほど嬉しい事はない。

 1週間前、心が崖っぷちに立たされていた時、この人達のおかげで立ち直れたんだよな。2人には本当に感謝している、早く美良さんにも紹介したい。

 足取り軽やかに、俺たちは美良さんの捜索へと向かった。


「ダメです…やっぱりいません…」

 今日は金秋山へきた、屋敷から結構離れているため、ゆりさんは疲れているんじゃないか、と思ったが息も切れていない。

 瑠璃さんに聞いたら「えっ?今まで歩いてたの?ちょっと浮いて進めばいいだけじゃない」と言われた。

 ちょっと…見つからないように歩いて、この広いカナンをせっせと捜し回ってたって…俺って馬鹿じゃん。なんでかなー、こういう時ちっとも頭が回らないんだ。

「もしかして心音ってそういうところ頭回らない人?」

「しかし何もありませんねー、美良さんはどこなんでしょうか」

 俺は瑠璃さんに痛い所を突かれて話を変える、ちょっと不自然だったか、瑠璃さんもにやけている。

 見つからないのは本当だ、2週間捜してこれでは美良さんはこっちへ来ていないという考えもある。

 まぁいつも通りといえばいつも通りだ、ひたすらウラを歩いて、見つからずに屋敷へ戻る。これがもう日課になっている。

「ふーん…本当にこの2週間見つからなかったの?」

 ゆりさんが訊く、見つからないからこうなってるんでしょうが。

「ええはい、ウラのほぼ全域を捜してましたが全然、かなり広い範囲の重力を弄ったりもしましたが、反応さえありませんでした」

「でもそれってかなり不自然じゃないですか?毎日違う場所で広範囲を調べていたのなら絶対に見つかるはず…ましてや2週間、それで見つからないって事は…」

 …て事は?

「移動している…って事ね」

 確かに…そう言われればそうだ。いやでも…

「移動してるにしても俺は直径約10㎞を弄ってるんですよ?それってまさか俺の行動が筒抜けって事なんじゃ…」

 嫌な予感がする、そんなまさか…一体どうやって。

 そんな俺の思考は、次の出来事で吹き飛ぶ。


 屋敷の辺りから凄まじい大きさの爆音が聞こえてきのだ。その時、嫌な予感は確信へと変わった、やはり俺は監視されていた。

「ゆりさんまずいです!早く戻らないと『アレ』が…‼︎」

「そうね…みんなで来たのは少しまずかったわね。心音、今すぐ屋敷に戻る事できる?」

 2人がそんな会話をする、かなり慌てているようだが…いきなり俺に振るのはやめてください。

 アレ?アレってなんですか、そんでよくわかんない事ばかり…だから俺はそう時に考え事するのが苦手なんですよ!

 早く戻る早く戻る…えーっとえーっと……はっ‼︎

「出来ます!みんな空飛んでください」

 テンパっていた俺は、なんの説明も無しに2人を空へと誘導する。

「飛んだけど…何するの?」

 瑠璃さんの心配そうな声も御構い無しに、俺は能力を使う。

「気をつけてくださいよ‼︎」

「だから何する…⁉︎きゃぁーー‼︎」

 俺は、馬鹿みたいに強い重力を屋敷方向にかける、すると俺たちは一気に屋敷まで飛んでいく…というよりは落ちていくと言った方が正しいか。



 およそ10秒ほどで屋敷に到着する、もちろん最後は重力を緩めながらだったから、どこも怪我をせずに済んだ。

「ねぇ心音、もうちょっと方法がなかったの?」

「そうですね……ないですかね」

 なかなかスリリングだったようで、瑠璃さんはけっこう驚いていた。

「なんだなんだ、もう帰ってきたのか。せっかくいない時に乗り込んできたのに…」

 こんなギャグみたいなことをしていた俺たちの前に現れた男、あいつだ…

「おーおー、これはこれはこの屋敷の主人あるじ、黒羽 ゆりだったか?」

「ええ…そうだけど?」

 俺たちを放っておいて2人が会話をする、知り合い…ではないようだ。

「そいつ、知り合いか?」

 俺を見て、男はゆりさんにそう訊く。

「いいえ、知り合いじゃない、仲間?家族?まぁどっちでもいいわ」

 ゆりさんは強くそう言った、なんか嬉しかった。

 しかし、男はにやりと笑い、

「そうかそうか、ならそいつをもらおうか、なかなか使えるやつだと分かったからな。なんならあんたらも手伝ってくれれば、俺も嬉しいんだがよ…」

 と言った、こいつ美良さんだけではなく2人にまで…許せない。

 そうだ美良さん、美良さんはどこだ?見た限りどこにもいない。まさか…

「おい外道、美良さんはどこですか…返答によっては…」

 ゆりさんからもらった刀を構え、攻撃態勢をとる。

 チッ、と舌打ちをし、お前は今関係ねぇんだよ、と言いたそうに外道はこちらをみる。さらに、今は俺が主人あるじに訊ねてんだ、と言いたそうに質問に答える。

「ミラ…あぁ嬢ちゃんか、嬢ちゃんならちゃんと生きてるから安心しろよ。だからそんな激昂すんじゃねぇよ、馬鹿みてぇだぞ?まぁ生きてるっつっても、嬢ちゃん自身は死んだ状態みたいなもんだがな」

 ぷっつんきた、美良さんが生きてるけど死んでるだと?俺みたいな状態か、なんにしろ許せない。

 俺は刀を振る、しかし、当たる距離ではない。だから俺は刀に魔力を込めた、刀身から幾つかの魔弾が奴に向かい飛んでいく。

 その魔弾は俺が指から出す弾とは違う、スピード、パワー、追尾性もある。当たればひとたまりもなく吹っ飛ぶだろう。

「ふっ…」

 笑った、やつは馬鹿にするように鼻で笑ったのだ。俺は恐怖を覚える、以前負けた事のある敵だから過剰に反応している、そんなんじゃない。

 こいつからは余裕が感じられる、こんなヘナチョコ弾100くらっても平気、みたいな余裕がある。

 男は顎で何かを命令するような仕草をした、何が…何が始まるんだ、怖い…またゆりさんや瑠璃さんがいなくなるんじゃないかって。

 そんな事を考える事も出来なくなる。雨、小さい魔弾の雨が降ってきた。

 それは俺たちを攻撃するためじゃない、俺が放った魔弾にヒット、相殺された。嘘だ…小さくて威力の無い数で押すタイプの弾で、一体どうやって…

 俺が美良さんに教えてもらったそれで…一体誰が?

「ナイス嬢ちゃん、流石だ」

 男がそう言うと、アメリカンヒーローの様に空からスタッ、と降りてきた少女。

「美良さん…」

 情けない声と共に、涙も出てきた。

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