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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第4章 表があれば裏がある
40/180

変わってますか?

「ルールは遠距離攻撃なしの一騎打ち、死んじゃいけないから私が『そこまで』って言うけど…心音はどうする?死ぬまでやる?」

 ゆりさんが物騒なことを聞いてくる、ドラッグを使っている人を改心させる時の言葉みたいだ。

「さすがに痛いですからそれは…できれば止めてください」

「そんな事は関係ない、私はお前を殺すつもりでやる。お前も私を殺すつもりでかかってこい」

 瑠璃さんは絶対に俺に仕返しをしたいらしい、得意な刀で俺に一泡吹かせたいらしいのだ。一度決めたら絶対にやるというのは良い事なんだけど、やる事が仕返しって。

「俺はちゃんと当たる前に止めますよ、薬売りが無意味に人を傷つけちゃいけないんです」

「知らないよ、まあ私は強いから当たる事なんてないよ」

 言ってくれるなぁ、でも瑠璃さんが前の感じに戻っている事に少し安心している。

「じゃあもう瑠璃さんの勝ちで良いですからやめま…」

「始めー♪」

 ゆりさんがいきなりそう言ったので驚いた、よーいドンのよーいを知らないらしい。しかし、瑠璃さんはその瞬間に動いた、すごい反応だ。

 俺は言葉を遮られたのと本当にいきなりだったから少し行動が遅れた、瑠璃さんが俺を斬ろうとしたところで刀を鞘から抜く。

「ちょっ…」

 瑠璃さんは右利きだから俺の左側に刀が迫る、竹刀なら左手で中結なかゆいの辺りを握ってガードしただろう。でもこれは真剣、握れば指が無くなる。

 だったらやる事は1つ、俺は左手に持った鞘で瑠璃さんの振った刀を下から持ち上げる。鞘を逆手に持ち、肘までで補強する事でうち負けずに済んだ。

「あっぶないですね…不意打ちとは卑怯じゃないですか?」

 俺は急いで瑠璃さんと距離をとる、2回ほどバックステップをとった。

 いきなりのサプライズに鼓動が早くなっている、少し息を切らせた俺がそう言うと、

「何を言うか、ちゃんとゆりさんが『始め』と言ってから動いたぞ。何も卑怯な事はしていない」

 と瑠璃さんが強く言った、仰る通りです。

「さあ、体制も立て直しただろう、本番はここからだぞ」

 瑠璃さんはクールな感じを崩さない、真の侍…というよりは騎士に近いだろうか、強さと冷静さ、静と動の両方を持っているのだろう。卑怯な手も使う俺と違い、瑠璃さんは正々堂々と戦っている。

「さあ来い、次はお前の番だ」

 ゆりさんはそう言って動かない、時が止まっているかのように1ミリも動いてないように見える。

「そうですか、じゃあ遠慮なく!」

 俺は瑠璃さんに向かい突進する、2回のバックステップは無駄となった。

「お前の剣はかなり変わっている、マニュアルも何もない無茶苦茶な剣だ。だがなぜか強い、理由はわからないがこの世界には無い別の流派があるのかもしれんな」

 俺はまた師匠の言葉を思い出した、流派かどうかは知らないが気づいたらそんな風に刀を振っていた。教えてもらった記憶も無いし、刀を使った事も無かった。なのに刀を使えたのは前世の記憶なのだろうか、それとも単なる偶然だろうか。

 俺は瑠璃さんと同じように右から斬りかかる、自分と同じパターンは食わないと言ったところだろう、瑠璃さんと俺の刀が交わる。

 痺れるような感覚があった、金と金が擦れる音がする。瑠璃さんは女の子からしたらかなりの腕力がある、なかなか力が強い。

「ふーん、あなた私と同じ事して勝てると思ってるの?」

 ジリジリと刀が競り合う、力を抜けばそのまま押されて斬られるだろう。だったら…

 俺はあえて力を抜く、少しではなくほとんどの力を抜いた。それと同時に後ろへ下がり、魚をおろすように、中骨にそって身を外すように軽く力を入れ、瑠璃さんの刀にそって走らせた。

「なっ…⁉︎」

 瑠璃さんはいきなり力を抜かれたため前によろける、綱引きで思い切り引き合っていた時に片方のチームが一斉に綱を放した、みたいな感じだ。

 さらに刀に沿わせた事で軌道をずらした、瑠璃さんはよろけるだけでは足りず、こけそうになった。

 好機、これを逃す理由は無い、俺は避けられないように瑠璃さんの後ろへ回り斬りかかる。

 しかし瑠璃さんも剣の達人、これしきの事では動じない、体勢を崩しながらも体を回転させる。俺の首のあたりギリギリを掠めたため俺もよろけた。

 が、瑠璃さんも転んだようだ。俺と離れたところで尻餅をついている。

「いたた…変な刀の使い方するわね、そんなやり方初めて見たわ」

 瑠璃さんは立ち上がりながらそう言う、口調が元に戻っている…いや、変わったというべきだろうか、正直に驚いているのだろう。

「よく言われましたよ、瑞樹流とは違うって」

「瑞樹流…お前の名前か、別の世界にはそんな流派があったのか」

 もっとも、瑞樹の名前は本当にもらっただけ、使った事はないし負けた事もない。もちろん1人、師匠を除いてだが。

「俺の剣は流派もルールもないです、ただデタラメに思うように振っているだけですから」

「そうか、だったら私が負ける事はない。そうだ、もう1つルールを追加しよう。私が勝ったら特別甘いお菓子を作ってもらおうかな」

 挑戦的な発言と共に勝った時の事を要求をされた。別に俺は構わないがお菓子って…何か言ったら怒られそうだから俺は何も言わずに「分かりました」とだけ言った。

「よしよし、ならさっさと決着をつけよう。お前の首をはねてやる」

 瑠璃さんは笑顔でそう言う。またか、俺は昨日首を切断されたばかりなのに、しかも普通に殺人予告をしている。これも俺の不死のせいだろう。

「痛いのは嫌ですから負けませんよ、達人に勝てるかどうか俺も腕試しといきましょう」

 少し楽しくなってきた、さっきまで嫌々やっていたが今は違う。師匠の教えと俺の腕がどれだけ通用するか試してみよう。

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