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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第4章 表があれば裏がある
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何気ない日常

この話より第4章始まります。今までがキャラ出しでしたのでこの章からはちょっと冒険します。またまたシオンがメインですが次次章からは白花がメインも始まりますので、白花さんファン(いるとは言ってない)の皆様、お許しください。

「さ、美良さん行きましょう」

「はいはーい、ちょっと待ってね。あとちょっとでこの本読み終わるから…」

「いいですけど早くしてくださいね、胡桃さんに怒られても知りませんよ」

 いつも通り美良さんと町へ置き薬の交換へ行こうとする、が今美良さんは小説に夢中だ。

 美良さんから引き受けた仕事が終了してからさらに2ヶ月、大きな事件もなく平和に薬を売って過ごしていた。

 そういえば1ヶ月ほど前に三葉さんと樅さんに会った、2人で金秋山きんしゅうざんに行ったらしい。未だに離れて暮らしているらしいが何か理由でもあるのだろうか。

 それから白花さんと鞠さんにも会ったな、2人とも元気そうだった。そういえば白花さんの家で女の人にあったな、望永実さん…って言ったかな、俺を見て明らかに動揺してたけど、俺あの人と会った事ないよな。

 でも記憶の奥の奥の方にあの人の存在があった気がする、不思議な話だ。

「よし読み終わった、じゃあ行こっか」

 俺が色々と過去の事を思い出していたら、美良さんが本を読み終える。ついでに真知さんの所へ行って本を返すようだ。

 俺と美良さんは森の中だけ空を飛んで、町の近くまで来たら歩く。もちろん薬屋が怪しいと町の人に思われないためだ。俺は薬屋の用心棒って事で通ってはいるが、美良さんは普通の薬屋さんである。

 そして町の人に薬を渡してお金をもらう、これが俺達の日常だ。昨日も、明日も、この作業の繰り返しだ。

「美良さんって極度の人見知りなのによく町の人は平気ですね、俺より仕事早いじゃないですか」

 薬を交換し終えた帰り道、俺と美良さんはそんな事を話していた。

「別に平気じゃないわよ、かなり怖い。私の人見知りを舐めちゃいけないよ」

「え、でも実際俺より仕事早く終わって茶店で休憩してるじゃないですか、どういう事なんです?」

「胡桃さんに頼んで私とシオンの仕事の割合を3:7にしてもらってるだけよ」

「なんですかそれ!知らなかった…」

 なるほど、修行へ行っていた時に仕事の心配をしていたのはこれが理由か。別に胡桃さんに訴えようとか、割合を半分半分にしてくれとか、そんな事は望んでいないが黙っていた事に俺はショックを受けた。

「べ、別にいいじゃないの、シオンは人付き合いうまいんだし、友達もたくさんいるでしょ?」

「別にたくさんいればいいってわけじゃないですよ、その人にどう思われているか、その人を本当に信頼しているか、です」

「ふーん、私の事は信頼してる?」

 美良さんがこちらを見てくる、心配をするような、何かに期待をするような、そんな目でだ。

「もちろん信頼してますよ、美良は初めての仲間ですし、大切な友達であって家族でもありますからね。あなたに危機が迫れば命がけで助ける覚悟はあります」

「そう、ありがとう」

 大人の様に落ち着いてそう言ったが、顔は緩んでいた。


「さてみんな、今日はお知らせがあります」

「何さいきなり、面倒事なら私はパスだよ」

 胡桃さんのお知らせ宣言に沙奈さんが突っかかる、本当にこの人は…いや、これ以上はやめておこう。

「いいのよ、このお知らせはシオンとミラに聞いてもらえればいいから。凪もいいけど…聞く?」

「ええ、どうせ私は暇だからね。何か仕事をくれてもいいのよ」

「そう、気持ちだけもらっておくわ。前に仕事をあげたけどすぐに飽きてたじゃない」

 その話は俺も知っている、確か薬の袋詰めだったか、30分経たずに「飽きた、シオンお茶が怖い」と言っていたな。

「まあいいわ、じゃあシオン、ミラ、今日はあなた達に頼みがあるのよ」

 ようやく本題だ、個人的な意見ではあるが発表までが遅いと思う、そんなにせっかちな方ではないはずなのだが。

「えっと…町で報告をしてほしいの」

「おっ!遂に値上げか!」と沙奈さんが自分の部屋から首を出す。

 違うわよ、と胡桃さんが言うと沙奈さんは首を引っ込めた。

「ごめんなさいね話が逸れちゃって、それで具体的な報告内容は新薬の研究に付き合ってくれる人を募集したいの、簡単に言えばバイト君かバイトちゃんを探してきて、という事」

「へー、どんな薬なんですかそれ」

「すごい薬よ、2日間眠らずに働き続ける事が出来るわ」

 え、それって危ないやつじゃ…

「すごいですね!もしかして前の世界で作ろうとしてた夢の薬ですか」

「ええそうよ、ここなら材料も十分にあるから作りやす…」

「ダメですよそんなの!」

 盛り上がっている胡桃さんと美良さんを大声でとめて、

「ダメですよそんな薬、夢の薬でも悪夢の薬になりますよ!ダメダメ絶対にダメです、俺は今回ばかりは協力しませんから」と言う。

 俺の予想が当たっているのならそれは薬ではなくヤクになってしまう、凪さんもそんなの作っちゃダメ、と言ってくれた。

「2人とも勘違いしてない?私が言ってるのは2日分の仕事を1日で終わらせる、畑の草むしりと害虫駆除って大変じゃない、片方するのにを1日と考えて2日間眠らずに働くようなものじゃない、つまり農薬の事」

 なんだ、心配して損した。しかしもっと別の言い方があるだろう、ドーピングかドラッグの響きだぞそれは。

 それで、その農薬のサンプルを町の農家さんに使ってもらって反応を待つ、というわけらしい。しかし、万が一に失敗して作物が駄目になってはいけないからバイトを募集して自己責任、というなんともひどい考えだ。

「じゃあ頑張ってバイト見つけてきます!シオン行くよ、夢の薬はすぐそこだ!」

 俺の服を引っ張り早速出かけようとする、美良さんは農家でもなんでもないのにこんなに張り切っている。

「わかりましたから服を引っ張らないでください、のびるのびる!」

 いってらっしゃい、と胡桃さんが言うのが微かに聞こえた気がした。

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