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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第3章 能力は生活必需品
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何でも屋じゃないです

「心音君…その炎…貴方が…」

 何が起こったのか分からない、目を開けるとそこにあるのは真っ赤に燃える炎、これが俺を鎌鼬カマイタチから守ってくれたのか。

「何ですか…これ…」

「さあ、知らないよ私は。でもあなたの能力なんじゃないの?」

 能力だって…そんな馬鹿な、俺の能力は重力だ、だからこんな事は出来ないはず。

「違います、俺の能力は炎じゃないです、重力…重力でこんな事ができるんですか?」

 シルフに訊ねる、今はとにかく説明がほしい。

「知らないって言ったでしょ、でも普通にできる事じゃないからさ、能力なんじゃない?」

 言っている意味が分からない、もっともっと説明がほしい、三葉さんに人に頼りすぎるなと言ったのにこの有様だ。

「能力…人間は窮地に立たされた時、真の力を発揮するとは言いますが、俺は元々能力を持っているんです、2つ目の能力なんて聞いた事がありません」

「じゃあさ心音君、他に何か出してみてよ。例えば…電気とか?」

 電気…できるだろうか。戸惑いつつ俺は左手に魔力を込める。

「電気、電気、電気…」

 その次の瞬間、俺の左手がバチバチと電気を帯びる、信じられない…本当にこれは能力なのか。能力は1人に1つじゃなかったのか。

 何が何だか分からない、頭が痛くなってきた。

「すごい、すごいよ心音君!新しい能力だ!」

「あっ…は、はい、でもこれってどんな能力なんですか?ただ単に魔力を別エネルギーに変化させる、って事ですか?」

「さあ?その辺は分かんないよ、いろいろ研究してみれば」

 確かにそうだな、今日はまだ昼だ、夜までいろいろと試してみよう。

 しかし今思えば鎌鼬カマイタチくらいピンチでもなんでもなかったな。ピンチの時こそ冷静に、逆境を跳ね返せ、師匠の教えなのに。

「三葉さん、ありがとうございま…」

「あーっそうだ三葉!お前よくも私の力を勝手に使ったな!」

 感謝の言葉をシルフの思い出した怒りに邪魔された。そうだ、三葉さんも能力の応用が利くようになったんだ。召喚した妖精の力を借りて攻撃する、これいいんじゃないか?

「知らないよ、やってみたらできただけなんだから!いいじゃない私のペットとして力を貸してくれても!」

「ペットじゃない!私は四精霊エレメンタルの1人、シルフだ!さっさと私を元の場所に帰せ!」

 はぁ、さっきまでのシリアスを返してくれ。


ーー夜

「いろいろと試してみました、どうやらエネルギーの具現化のようです」

「エネルギーの具現化?何なのそれ」

 俺は昼からの修行の結果を拠点(ただの洞窟)でみんなに話す。

 俺は昼からこの能力ちからについて、いろいろと研究した。まず、脳で炎や水などの情報を思い浮かべる、それを魔力で実体化させる、とざっくり言えばこんな感じだ。

 ところが、炎と電気以外のエネルギーは具現化させるのには、その2つに比べてほんの少し多量の魔力を消費するようだった。

 どうやら炎と電気は俺に合っているらしい、鞠さんが言っていた、苦手な魔法はやけに魔力を消費する、ってやつだろう。

「と、こんな感じです」

「へぇー、あたし達の方はほんの少し進展があったよ。ね、シルフさん?」

「まあね、私の力なら余裕よ。でも本当の姿ならもっとすごい事ができるんだけどねぇ」

 シルフが三葉さんにいやらしく言う、どうやら力を貸す事は許したらしいが、元の住処に帰らせることが絶対条件らしい。

「まあまあ、喧嘩はやめましょう。じゃあお腹も空いてきた頃ですし、晩御飯にしましょう」

「はーい、魚は獲ってきたよ。今日からは焼き魚が食べられるね」

「そうだ!焼き魚っ焼き魚っ!」

 なんで?火なんて無いのに焼き魚なんて…まさか…⁉︎

「あのー、もしかして火って…」

「もちろん!さあ早くこの薪に火をつけて」

「焼き魚っ、焼き魚っ!」

 能力をこんな事に使うなんて…まあいいか、やっと火の通った物が食べられるんだ。その晩に食べた魚は、今まで食べた中で一番美味しいと感じた。


「さあ心音君、次だよつぎ、こっち来て」三葉さんとシルフが俺を外へ連れて行く。「この水を火で温めて。そうね…大体40度くらいね」

 そう言った三葉さんとシルフの前にあったのは手作りの池の様な物、大きな穴を掘って石を敷き詰めた感じだ。おそらく昼からこれを作っていたのだろう、そうとしか考えられない大きさだった。

「はぁ、えっと…何をするんです?」

 ある程度の予測はできていたが、一応聞いておこう。もしそうだったらこの能力は野宿生活の必需品になってしまう。

「決まってるでしょ、お風呂よ、お・ふ・ろ」

 案の定、俺の考えは当たっていた。

 しかし三葉さんもシルフも女の子、そりゃ毎日お風呂に入りたいだろう。三葉さんに至っては約10日ぶりになる。仕方ない、2人に協力しよう。

「分かりました、じゃあちょっと待っててくださいね」

「やったー!」「ばんざーい!」

 俺は水の中に魔力を入れ炎に変える、これがなぜか消えないのだ。水はそこからゆっくりと沸騰していく。

 三葉さんは腕まくりをし、池…もといお風呂の温度を確認する。

「もういいよ、このくらいが丁度いい」

了解しました、と俺は炎を消す。

「じゃあ入るから、覗かないでよ…」

 なっ…失礼な、そんな事をすると思われていたのか俺は。

「覗きませんよ、年下の入浴シーンなんて」

「失礼な、年下でもあたしだって女なんだからね!」

失礼なって、さっき俺が思ってた事だよ。

「確かに三葉さんは女の子ですけど、覗きなんて絶対にしませんよ」

「本当?嘘じゃない?」

「もちろんです、なんならシルフに見張っててもらえばいいじゃないですか」

 我ながらいい提案だ、これなら疑われる事もない。

「じゃあいいよ、心音君を信じるから」

 なんでだよ、もういいや…疲れた。俺は2人に先に戻ると告げて拠点に戻った。

「はぁー!生きた心地がするよー!」

 しばらくして、遠くから三葉さんの声が聞こえてきた、はぁ…俺は三葉さんにとって、年下のお風呂を覗くダメ人間だったのか、生きた心地がしないよ。

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