おまけ そのころ
シオンと三葉が山で修行8日目を迎えた日の話です。
誘拐事件後の白花と鞠のその後、かなり短めです。
「はぁ…平和ねー」
「あら、気を抜いている暇はないわよ白花ちゃん。いつ事件が起こるか分からないんだから」
「うるさいわね、いいでしょ本当に平和なんだから
霜月 白花17歳、今日も平和である。こんな平和な時間が永遠に続けばいいのに。
私は誘拐事件以来、何事もなくだらだら毎日を過ごしている。もちろん、毎日モエミの相手をしている。なんでこいつは毎日来るのだ、なんの仕事してるか知らないけど働きなさいよ。
「ねぇ、ずっと気になってたんだけど、あんたの仕事ってなんなのよ?」
「私?私の仕事は白花ちゃんを見守ることよ」
「やめてよバカバカしい、真面目に答えなさい」
「そうねぇ、そのうち教えてあげるわ」
なんなのよモエミのやつ、ケチなんだから。
そんな感じの会話を毎日している。昨日は確か、お茶の葉の置き場所を変えた事に文句を言われた。私の家なんだからどこに置いたっていいじゃない。
そんな時、ふと私はあいつの事を思い出す。
「そういえば最近あいつ見ないわね」
「あいつ?鞠ちゃんの事?」
「あぁマリ?マリは最近図書館に行ってるのよ」
そう、マリは最近私の家に来ない、おそらくアレサと会っているのだろう。別に寂しくないからいいけど、今度からかいに行こうかな。
「私が言ったあいつってのはシオンの事よ」
「えっ…シオンって…」
なんだ、モエミのやつ妙に驚いている、何か知ってるのか?
「ええそうよ、あの森の薬屋で働いているシオン。1週間前に会ったのが最後なのよね」
「……」
モエミ、本当にどうしたんだ、何もないように装っているけど、明らかに動揺しているというか不安そうというか、そんな感じに取れる。
「あいつさ、キアレと戦う時に私に変われって言ったの、信じられないでしょ?まぁそのあと美味しいお菓子をくれたからいいけど、知ってる?シオンって結構料理上手なのよ、そのお菓子もシオンの手作りなのよ」
そう言って私はお茶と一緒に食べていたお菓子を見る、ちょうどモエミが食べているやつだ。
「………」
「どうしたのモエミ、さっきからおかしいわよ?」
「ううん、なんでもない。今日は帰るわ、用事思い出しちゃった」
そう言ってモエミは能力の瞬間移動で帰っていった、変なやつ。
「鞠さん違う、それじゃ二重敬語になってる。二重敬語は失礼なのよ」
「そんなこと言われても分かんないよ、やっぱ私には合わないんだって」
私はあの事件以来、真知さんの図書館で礼儀作法と言葉遣いについて勉強している。が、もう限界だ、息が詰まりそうだ。
「あのさぁ真知さん、なんでそんなに礼儀礼儀って言うかな?私の場合はふれんどりーって事でいいじゃないか」
「確かによく言えばあなたはフレンドリー、でもね、親しき中にも礼儀ありっていうでしょ?その辺はちゃんとしなきゃ」
もう、意味わかんない。だいたい私はアレサに会いに来るついでに勉強してるから、そんなにやる気は無いのに。
こんなに本があるのに自分の読みたい物が読めないのは辛い、事件解決後は気の迷いであの本を借りてしまったが…1ページ目を見てもういいやって思った。
「はぁ、魔道書が読みたい…」
「はいはい、これが終わったらね」
ああもう!知らない、私は知らない!もう帰るからな…
「あれ、マリ?お茶持ってきたけど…もう帰るの?」
アレサが奥からお茶とお菓子を持って出てきた、ぐぬぬ…お菓子は食べたい、でもここで帰らなきゃまだ勉強しなくちゃいけない…どうしたものか。
「自分の中好きなようにしなさい」
げっ…真知さんに能力で心の中を読まれてしまった、わかったよ…勉強すりゃいいんだろ。
「じゃああと10分だけな」
「はいはい」
アレサの持ってきたお菓子はすごく美味しかった、お菓子目的ではないがまた明日も来よう。




