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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第3章 能力は生活必需品
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話を聞いてください

ーー修行1日目


「さあて、修行を始めましょうか!」

 今日から三葉さん強化合宿の始まりだ。そんな事より言わせてくれ、首と腰が痛い…さすがに落ち葉を布団に、石を枕にするのは無理があったか…テントがほしい。

「修行はいいんですけど…何から始めますか?俺の中での基本は遠距離攻撃なんですけど、そういうの何かできますか?」

「出来ない、ずっと占い師だったから」

 これは予想以上に大変そうだ、でもとりあえずは基本からだ。

「能力があるって事は魔力はあるはずですよね、飛ぶ事はできますか?」

 もちろん、と三葉さんは答え、実際に飛んで見せてくれた。うん、だったら攻撃方法を探せばいいだけだ。

「じゃあ、まずはあの木を狙って魔力を放出してみてください」

「わかった」

 三葉さんが両手を前に出す、俺はなんとなくやったらできたから教えるのは難しいな。うまくいけばいいけど…

「ぬうぅぅ…やぁっ!」 ポフッ…

 三葉さんの手から出たのは、ライターの火程度のエネルギー波、だめだこりゃ。

 えへへ…失敗失敗、と三葉さんは言うが教えるこっちの身にもなってくれ。

 1日目はずっとそれを繰り返して終了、少しも上達はしなかった。

 まぁ、明日はなんとかなるだろう。


 それから1週間以上経った、俺の考えはことごとく甘かった、まるでカルメ焼きのごとく甘かった。


ーー修行8日目

 三葉さんは1日目と変わらない、ライターの火を手から出し続けている。

「うーんそうですね、飛べるから魔力のコントロールはできてるはずですけど…」

「へへへ、なんでだろうね」

 笑ってるよこの人、やる気を疑うよまったく。

「もういいです、能力の応用について考えましょう。ただ運がいいだけっていうのがどうもアレなんで」

 その提案をした理由は2つ、1つ目は既に1週間経ったのに進歩がないから少し諦めていたから。2つ目はもしかするとそっちの方が三葉さんに向いているかもしれないと思ったからだ。

 俺と三葉さんは近くの切り株に腰を下ろした。座り心地よし、見事な切り口だ。

「そうだ、自分の能力に気がついた時はいつだったんですか?」

 今更だが三葉さんに質問する。当然の疑問だと思う、たとえ幸運が続いたってそれを能力と認識するには何か理由があったはずだ。

「うんとねー、確か子供の頃に布団が吹っ飛ぶのを見たかったんだ」

 ん?いきなり話がずれた?しかも布団がなんとかって駄洒落じゃないか、からかってるのか?

「へ、へーそうなんですか」

 とりあえず話を合わせておく、三葉さんは笑顔で続ける。

「それでね、布団の前に行って吹っ飛べって言ったら本当に風で吹っ飛んだんだよ。それ前にも駄菓子屋で当たり付きのお菓子が10回くらい当たりだった事もあったし、道で転んだらお金を見つけた事もあったね。これはもう能力でしょ?」

……なんて言えばいい…真面目な顔で、これは能力だって言われても内容がペラペラすぎる。

 吹っ飛べって言ったら本当に吹っ飛んだ?もしそれが能力と関係するのなら…

「あの、お菓子を選ぶ時に当たれ、とか言ってませんでした?」

 自分でも信じられないがこれはもしかしたら…

「あー、そういえば言ってた気がする。それが何か関係あるの?」

「三葉さん、攻撃方法が欲しいって言ってみてください」

「え?なんで?」

 いいからお願いします、と俺は三葉さんに頼む。やれやれといった感じで三葉さんが溜息をつく、なんでそんな事を言わなければならないんだ、と思っているんだろう。

 三葉さんは半信半疑で息を吸い込み、それを口にする。

「攻撃方法が欲しい!」


シーン…


 静寂が辺りを包む、わずかに川の流れる音が聞こえるくらいだ。

「何もないじゃん、ねぇこれなんか意味があったの?」

 三葉さんは頭の上に疑問符を浮かばせている、俺だって確信はない、もしかしたらってだけだ。

「じゃあ、あの木に向かって魔力で攻撃してみてください」

「もう、心音君はたまに何言ってるか分かんないよ」

 いいから、と言うとやれやれといった感じで攻撃態勢をとってくれた。

「ぬぅぅぅ…やぁっ!」バシューン‼︎

 やった、成功だ!三葉さんの手から出た魔力が木に穴を開ける。

「うそ…なんで⁉︎」

 三葉さんが驚いている、それもそうだ、日本人が急に英語がペラペラになった様なものだから。

「三葉さんの能力は多分幸運じゃないです。俺が考えるに『言ったことが可能な限り現実になる』って感じだと思います」

 俺は説明を始めようとしたが三葉さんは口を開けてポカーンとしている。もしもし、聞いてますか?

「はっ、ごめん…続けて」

「あぁ…はい、さっき言った通り三葉さんの能力は多分それです。占いが当たってたのもその所為でしょう、占う前に私はなんでも分かります、とか言ったんじゃないですか?」

「言ってた…調子に乗って初めてのお客さんに言ったよ」

 やっぱり、途中から自然に占いが出来たのはそれが原因だろう。

 俺は説明を続ける。

「で、可能な限りって所なんですけど…おそらく願いを叶えるとか、突然岩を降らせるだとかは多分出来ないはずです。 現実にあり得ない事と人として許されない事はまず無理でしょう。でも、三葉さん世界守になりたいって1回は言った筈だと思います、でもそれはその時に現実にはならなかった、おそらくその時の自分の実力相応の事しか現実にならないんだと思います」

 俺は説明を終えるが三葉さんはやはり口を開けてポカーンとしている。そんな難しい事は言っていないはずだ。

「よ、よく分からないけど私の能力が違ってて、私の言ったことがなんでも現実になるのね!」

 いや、だからなんでもは…

「やったー!これであたし世界守になれる!心音君、もっと色々教えて!あたし頑張る!」

 気の早い人だ、あれだけじゃ無理だって。もっと能力の応用範囲を広げないといけないな、俺にも気合が入る。

 なんだかんだで三葉さんが成長したのが嬉しいのだ。残りおよそ3週間、ようやく俺も修行ができそうだ。

「ねぇ、じゃあお金はどうなのさ?あたし何も言ってない筈だよ?」

「それはたまたまです」

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