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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第3章 能力は生活必需品
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占い師?詐欺師?

「決まってるでしょ!修行だよ!」

 あーなるほど、修行か…ん?

「え?なんで?」

 聞くだけ野暮だが一応聞いておく。

「なんでって、貴方が強くなりたいって言ったんでしょう?だからよ」

 やっぱりか…なんか変な事に巻き込まれたな。まぁ俺が言ったことだし、仕方ないよね。

「さあさあ、今から一緒に1ヶ月間、しっかり修行するよ!」

 い…1ヶ月間⁉︎その言い方だと山籠りとかそんな感じに聞こえるんだけど…大丈夫かな?

「あ…あの、もしかして1ヶ月間ずっと家に帰れないとかは無いですよね?」

「当たり前じゃない、修行といえば山籠りでしょ。甘ったれんじゃ無い!」

 おぅのぉ…昔の漫画じゃあるまいし、山籠りってどうなのよ。

 さあ早く行こ、と占い師が服を脱ぎながら言う。うわ、占い師の服の下に私服着てたんだ…暑くないのかな?

 服を脱ぐ前はフードかなんかで顔が隠れてて分からなかったが、俺と同じくらいの歳の女の子だった。

「あのー…ちょっといいですか?」

「何?さっさと行くよ」

 それしか言ってないな、鞠さんと似たタイプか?

「いや、ですから修行に行く前に1度家に帰りたいんです。みんなに羊羹買って、1ヶ月の間仕事が出来なくなるって」

 それなら早くしてきてね、と彼女が言ってくれた。よかった、常識はあるようだ。

 俺は帰りが遅くなったお詫びに栗羊羹を買って草花に帰った。


「と、いうわけなんです…」

「そう、気をつけてね」

 え、それだけ?ダメよ、とか怪しいわね、とか言うのかと思った。胡桃さんって結構ざっくりしてるんだよな。羊羹食べながら言ってるし。

「シオン、1ヶ月もいなくなるの?」

「はい…すみません美良さん…」

 よかった、美良さんは心配してくれてる。やっぱり優しいなぁ…

「胡桃さん、という事はシオンの受け持ちの仕事は…」

「もちろん、美良に行ってもらうわ」

 …そこですか。シオン、早く帰ってきてね、って言ってくれてるけど…複雑な気分。

「シオン、私からも一言いい?」

「あ、はいどうぞ」

 凪さん…期待はしてませんよ。

「修行が終わったら帰ってくる時にお土産よろしくね。そうね、芋羊羹がいいわ」

 案の定、みんな冷たいな。まぁ変に気を使われなくていいけど…

「じゃあ行ってきますね…」

 心音の足取りは重い、飛んで行くけれども。とナレーター風味に旅立つのだ。


 金秋山きんしゅうざん、一年中秋の山。一歩足を踏み入れると全身で秋を感じられる。キノコや栗が採れ、川にはアユやサケもいる食の宝庫。俺もちょくちょく食べ物を採りに来ていた。肌寒いような暖かいような気温で、過ごすのに悪くはない。

「来たね、じゃあ早速修行を…」

「あ、待ってください!」

 急かす彼女を一旦止める、物事には順序というものがある。

「何さ?」

「いや、あのーあなた名前は?」

 そうそう、まだ名前を聞いていない。知らないと呼ぶ時に困るからな。

「あたし?あたしは一梨いちなし 三葉みつば、一応能力者だよ。よろしく!」

 あぁどうも、瑞樹みずき 心音しおんです、と俺も自己紹介する。

「能力って、他人の未来が見えるとか?」

 俺はそう聞く、そうでなければ占い師なんてできないだろう。

「違うよ、あたしの能力は幸運、すごく運がいいの」

 なんだって、運?じゃあ占いも全部運任せで適当に何か言ってたのか?すごい人だな…

「まあまあ、これから1ヶ月、あたしの修行に付き合ってもらうわけだから、仲良くしてね」

 三葉さんが笑いかけてくる、裏表のない素敵な笑顔だけど…

「三葉さんの修行なんですか?俺のじゃなくて」

 何言ってんの、当たり前でしょ?と言いたそうな顔でこっちを見てきた。じゃあなんで俺を誘ったんだ?とりあえず聞いてみる、理由によってはすぐに帰ろう。

「強くなりたいんでしょ?あたしも同じ、知ってる?人に教える事は自分の勉強にもなるの。貴方はあたしに教えて強くなれる、あたしは貴方に教えられて強くなれる。どっちも得してイェイイェイって感じでしょ?」

 イェイイェイって…

「まぁそうですけど…なんで俺なんですか?」

 三葉さんが暗い顔になる。俺、まずい事聞いたかな。

「あたしね、世界守になりたいの。特に理由は無いんだけどね。せっかく能力持ってるし何か役に立たないかなって。それで占い師をしてたけど、あたしには合わなかったよ。それでふと自分を占ってみた、そうしたら占い師を続けろって、そのうち能力者が来るからその人に頼めば人生が変わるって。ごめんね、巻き込んじゃって…迷惑だよね?」

 なんだ、いい人じゃないか。自分のやりたいことを見つけようと行動する、なかなかできるものじゃない。

「分かりました、手伝いますよ。此処なら食べ物もあるから1ヶ月くらいなら野宿も楽勝ですよ」

「ありがとうシオン!私、頑張るから!」


 とはいえ、幸運の能力でどうやって戦うんだ?何か応用があるのかな?

「あの質問なんですけど、どうやって占いしてたんですか?自分の思った事を適当に言ってただけとか?」

 三葉さんが笑う、違うのか?

「占いね、なんか途中から普通に出来るようになったんだ。最初は水晶玉使ってたんだけど、自分を占ったあとにそのうちっていつだ!ってなって壊しちゃった」

 おぉ…わ、ワイルドですね?

「じゃあさ、今日はもう夕方だし明日から修行始めようか。早く晩御飯食べて寝ようよ」

 展開が早い、まだ6時にもなってない。この人は毎日9時には寝るとかそんなタイプか、あれ?大事な事を忘れてるような…

「あの…テントって無いんですか?ほら、占いしてた時の」

「うん、無いよ。テントなんて使ったら修行じゃないからね」

 どういう神経をしてるんだこの人、それに女の子なのにお風呂も入らないのか?そんな俺の心配も無視して晩御飯の調達へと向かかう。

 俺たちは晩御飯に川で捕った魚を食べた。生をかじるのはさすがに辛い、火を通したいな…


ーー朝 修行1日目

「さあ、今日からよろしくね!」

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