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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第7章 固い2ヶ月の友情
127/180

12歳怖い

「えぇっ⁉︎ じゃあつまり、次の行き先の下見に行って、そこでここへの入り口を見つけたから、いい報告ができると思って帰ろうとしたけど、足を滑らせて間違えて入ってしまった、ってこと⁉︎」

 自分がさっき説明したことを一言一句間違えずに鬼灯さんは繰り返し、そのまま3人とも驚く。

「はい、その通りです」

 いつも通り、いたって真面目に頷く。けれども鬼灯さんはプッと吹き出し、

「ふーん、心音も結構ドジなんだ」

 それだけ言ってまたクスクスと笑いだす。

 言わない方が良かったかな、俺は途端に恥ずかしくなる。

「とまあ、大体こんな感じですかね」

 話を強制的に終了させ、同時に薬草摘みも終了する。途中、なずなさんからの邪魔が入ったり、話すのに集中して手が止まってしまったけど、2人が手伝ってくれたから、かかったのはいつもくらいの時間だ。

 3つの籠には薬草が八分目、山盛りにして落とすのもアレだから、といつもこんな感じ。

「じゃあ、仕事も終わりましたし帰りましょう。お昼くらいならごちそうしますよ」

 籠を1つ抱えて立ち上がり、言う。美良さんと鬼灯さんもそれを受け、帰る準備をするが1人だけ座ったままになる。なずなさん。プルプルと小刻みに震えだし、

「ま、まぁその先輩2人はいいよ…、美良お姉ちゃんも。でもさ…、その菫って人何なのさ…、心音の何なのさ…」

 さっき説明した通りだ。それ以外の何でもない、と思ったがこれを言うとどうなるかわからない。この人だけは未だに慣れないところがある。

 それに余さず話してと言ったのはあなただ。けれども当然のように口を慎む。と鬼灯さんが何かを察したかのようになずなさんの脇の下に手を入れ、子供持ち上げるように立てらせる。

「変な嫉妬は見苦しいよ。これも人生だ」

「嫌だ…、私は心音が好きなの…、変えられないの…」

「諦めなって。そもそも私たちは人間と–––」

 力なく立っていたなずなさんが突然顔を上げ、シャキッとなると尻尾をフリフリさせる。

「そうだよ…、奪えばいいんだよ。なんだ簡単じゃん!」

 俺を含めた3人は開いた口がふさがらない状態、この12歳はことごとく期待を裏切ってくれる。

「あんたは…」

「だってカナンにはいないんだから、わたしが貰っても構わないじゃん」

 とだけ言って『草花』に籠を持たずにスキップする。やれやれ、といった感じで残り1つは鬼灯さんが持ってくれる。自由奔放な妹とその火消しに走る姉、今の印象にはそれがぴったり当てはまる。

「ごめんね。なっちゃん昔からああなんだ」

 と言って鬼灯さんは肩をすくめる。この人も年下だが、なずなさんとセットだとやや大人びて感じる。やられたらやり返すところは子供っぽいが、と言いたくなるが、やはりここも口を慎む。

 代わりに俺は軽く微笑み、

「わかります。自分で言うのもなんですが、夢中なものになると猪突猛進なんでしょう」

「ははっ、違いないね」

 深い呼吸をし、また昔の事を思い出す。

 本当に、勝手にいなくなったのみんな怒ってないかな。手紙使っちゃったなぁ、かっこ悪いです。戻れるのなら1度戻りたいけど、無理だし、能力隠さなきゃいけない。まあ、諦めるしかないですね。

 どうにもやるせなくなり、ため息をひとつ漏らす。

「はぁ…、…帰りましょうか」

「…? ああ、うん」

 美良さんと鬼灯さんは少し気にした様子だったが、何かを感じたのは特には聞かれずに済んだ。もし聞かれても濁していたのには変わりない。

「どうしたのー、早く行こうよー」

 すでに小さくなったなずなさんが手と尻尾を振り、大声で俺たちを呼ぶ。あのままなら普通の娘なのに。

「はいはい」

 聞こえないとわかっていたが、小さい声でボソッとつぶやいて歩き出す。あのままあの世界にいたら、どんな風に歩いていたかな、と考えてみる。いや、さほど変わらないか、昔も今も俺は変わってない。

 とにかく頑張ればいいか。


「とまあ、こんな感じかな」

「なるほどなぁ。いい話じゃないの。その…なんだ、みっちゃんもすいちゃんも喜んでるよ」

「そうだといいけどねぇ」

 橙華が話を終え、マリが根拠のないことを言う。私にはどうもいい話には思えない。性格がひねくれているのが問題かもしれないけど、どちらかというと未練タラタラの話だ。過去にすがりついている、そんな感じ。

 話の途中、みっちゃん、すいちゃんがどうも気になり、本名を聞いてみたが「まあいいじゃん」と濁された。色々と思い当たる節がある。もしかしたら、

「ねぇ、その2人って––––」

「なんの話してるの?」

 背後に人の気配、いつも私に面倒ごとを持ってくる声。モエミだ。この人もいい加減に瞬間移動で家に来るのをやめてほしい。びっくりするから。

「どうもー。あら、新しいお友達?」

 モエミは橙華の方を見て尋ねる。突然現れた人間に橙華は驚きを隠せないようだったが、なぜか間を置いて感心し、

架原かはら 橙華とうかです。…えっと、白花のお母さん?」

「あらまあ、そう見える? よかったわね白花ちゃん」

 違う。私の両親は死んだのだ。この人はただの母親代わりであり、母親ではないが私の唯一の家族–––住んでいるところは別–––だ。

終わりませんでした…(笑)

次の話もしかしたら千字ちょっとになってしまうかもしれません。(水増ししなければ…)

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