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世界に捧ぐ幻想花  作者: にぼし
第2章 優しさに酔いしれて
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薬売りシオンと不思議少女

 カナンに来てからもうすぐ一ヶ月が経つ。やはりここはいいところだ。人でいっぱいの町、春になると桜が咲き誇る花街道、封印された魔力が液体になり少しずつ湧き出てくる魔力の泉。不思議なところもたくさんある。

 元々は自分が本当に住んでいた世界を探すために色々調べていたけど、もういいや。これからはここが俺の住む世界。

 戦闘のことも十分勉強したので俺は一週間前から薬作りの勉強を始めた。胡桃さんに癌に効く薬は作れないのか、と聞いてみたら「癌っていうのがよくわからない、前いた世界では風邪薬とか傷薬しか作らされてなかったから」だそうだ。

 だったら自分で作ればいい、そう思って勉強し始めたのだがやはり難しい。まあ、師匠はもういないんだからやるだけ無駄なんだろうけど、他の人を助けられるのならそれはそれでいい。

 そういえば胡桃さんに前の世界では昔、置き薬というシステムがあったって言ったら早速取り入れた。何しろ森の中にお店があるから、お客さんもあまり来ない、だったらそっちの方が合理的と考えたらしい。

 それの配達はもちろん俺と美良さんの仕事。凪さんはお店で毎日ゆるゆるしている。たまに胡桃さんを手伝っているが、すぐに飽きてしまうそうだ。何かやりたいこと見つけた方がいいんじゃないかな。

 そうそう、置き薬の配達の時に不思議な少女に出会った。確か2日前だったか、


「うーん、なかなか大変だな」

 胡桃さんの薬の効果はすごいけど、お店が森の中にある。そんな怪しいお店のすごい薬なんて、まぁ普通は怖いですよね。

 色々説明してはいるものの、買ってくれる人は少ない。そのうち町まで行くのが面倒くさくなり、歩いて行かず飛んでいったらものすごく怪しまれた。

 とりあえず、薬を作っている胡桃さんとそこで働いている美良さんは普通の人で、俺はその店に雇われているガードマンということにした。

「はぁ、1人でも買ってくれれば口コミで伝わるのにな」

 俺はどうしようもなくて、お店に帰ろうとしていた。その時だ、「お薬いただけますか」と後ろから声が聞こえた。お、ようやく売れるか?

 はいもちろん、と振り返る。そこにいたのは見た目12から13歳くらいの女の子。3日ほど町に来ているが、こんな子は見たことない。

「今必要なだけですか?うちの店置き薬もやってるんですけど、明日持っていきましょうか?」

「いえ、今日は必要なだけ。家族が怪我をしてしまって」と女の子が言う。

 なんだ?見た目の割に妙に落ち着いている、大人びているというかむしろ胡桃さんに近いものを感じる。

「わかりました、じゃあ傷薬を一つですね。うちの薬は安くて安心安全ですから、そう知り合いの人に伝えてもらえませんかね?」

 年下の女の子に何を言ってるのだ俺は、薬が全然売れないからって藁にすがるなんて。

「ありがとう、伝えておきます。薬、売れないんですよね、胡桃さんって方の腕も本当にいいようですし、そのうち人気になりますよ。それと私はこう見えてもあなたより年上です。、いろんな世界がありますから、私みたいな人はたくさんいますよ。最後に一つだけ、人を藁呼ばわりするのは良くないですよ」

 えっ、ばれた⁉︎はーすごいな、俺ってそんなにわかりやすいか?それとも顔に出てた?

「ふふっあなた、面白い人ですね。安心して、顔には出てないから」

 また…すごいなこの人。俺も他人の気持ちがわかるようになりたい。

「じゃあね、お薬ありがとう」

 そう言って少女?は去っていった。

「はー、やっぱり面白いなこの世界は。あの見た目で俺より年上か」

 そんなくだらないことを考えながらも、薬が売れた事に喜びを隠せない俺だった。


 なんてことがあった。実に不思議だ。あの人の家族の怪我は治ったかな?まあいいや、あの後薬を買ってくれる人も増えたし、あの人のおかげかな。

「うーん、今日も疲れたな。帰って晩御飯の準備しなきゃ」

 俺は背伸びをしながらひとり呟く。

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