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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
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進まない秒針

作者: まいんと

箱を開ければ、未だに止まったままの時間が今も形を残してそこに見えていた。捨てたい、放り出してしまいたい。そう思っていても、実際にはそんなことはできない。なんどゴミ捨て場に置いてきて忘れたことにしても、気付けばまた手元に戻ってきて俺を延々と苦しめるのだ。

止まったままの時間を動かすにはどうすればいいか、砂時計なら逆さまにして砂を落とせばいい。でも、もしその砂が固まっていたら?外のガラスを壊して砂をさらさらに戻すことで、人間が目に見える形での時計ではなくなってしまうものの、砂は時間を取り戻して風があたれば空気中に舞う。

どうすればこの止まった時間を動かせるか、そんなのは自分が一番よく知っている。箱に手を入れて、中を整理してしまえばいい。ただそれだけで、俺の時間は動き出す。じゃあそうすればいい、頭で理解していてもというセリフは今まさにこの状況にあっていると思う。けれど気付いている。

こんな大層な、無駄に面倒な説明を自分自身にしているのは認めたくないから。簡単に言えば弱くて脆い自分が、いつまでも止まったままの過去の時間に捕らわれている自分が嫌いだから。

今だって、誰かが手をさしのべてくれるのを待っている。引っ越し業者が行き交う中で、唯一の知り合い、他人ではなくて、もっと親しい仲の知り合い。そいつが気付いて俺の中に土足で入り込んで、いつものように時間を動かしてほしいと思っている。誰かに後押しされれば簡単に動き出す時間は、自分一人では重すぎる。ただ一言君が、あの時と同じように俺に誘い文句をかけてくれればいい。ただそれだけでいいのに。

何年もそれを拒否してきたのはお前だ、だからそのツケが来たんだよ。拒否されたのにそれでも黙って傍に居てくれるそいつに感謝すべきだろう?そう話す自分も居る。

後二時間で引っ越しの作業が終わってしまう。俺はその間にどうするべきかを考えておかなければならないのだろう。何年も先延ばしにしておいた、その答えを出すべき時がきたのだろう。

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