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側妃さまの目論見  作者: 華霜
番外編
17/20

側妃さまは王子さまになりました? 中編

ここは王宮内にある衣装部屋の一つです。

主に陛下が王太子時代や少年時代にお召しになっていた礼服や軍服などの正装や、普段身に付けていらっしゃった衣装が所狭しと並べられています。


光沢をもち滑らかで艶やかな最高級の布地に、金糸銀糸をはじめとした色とりどりの精緻な刺繍、スパンコールやビジューや宝石類を惜しみ無く使った縫いとり、どれもこれもが綺羅綺羅しく眩いばかりです。

型崩れしないようにでしょうか、トルソーに着せられていたり、壁際にかけられていたりと、ずらりと並ぶ様は圧巻です。



はぁ、すごすぎて私の貧弱な語彙では「うわぁ~」しか感想が出てきませんでした。

とにかく、そのくらいすごかったんだと理解していただけましたでしょうか。




で。

何故この部屋に来たかと言いますと。

マチルダさんへの処罰の一環、という建前の私の陰謀なのですよ。むふふふ。


だって、他に思いつかなかったのです。

暴力反対!

むち打ちとか、棒叩きとか、ありえませんよそんな罰は。

食事抜きも駄目です。

腹が減っては仕事ができぬ。空腹って悲しくなりますよね。

いいとこ御手洗い掃除を十日間とかでしょう。


結局、私はマチルダさんが衣装担当ということも手伝って、通常より短い期日で私のための衣装を作る、という罰を与えることにしたのです。



え?罰じゃない??

いいのです!

私が決めた罰なのです。これが。

誰が何と言おうとも。



周りの人々は私が私のためのドレスを作らせるつもりだと思っているでしょう。



あ・ま・い・で・す・わ!


ドレスはたくさん支給してもらっています。

正直なところ、私にあんなにドレスはいりません。

季節に合わせた普段使いのものが十着ずつくらいと、お出掛け用のお洒落なドレスが数着あれば事足りるのに、どんどん増えていく私用と思われるドレスたち。

予算の無駄遣いですよねー。

そんなことに使うくらいなら、医療とか学問方面の予算を増やせばいいのに。

国家予算に私ごときが口出しできようはずもありませんが。



ああ、わかってしまいました。

これはアレですね。

後宮を辞された他の側妃さまたちのお下がりのドレスが私に回ってきている、と。

そういうことでしょう。

もったいないですもの。

まだまだ着ることのできる最高級ドレスですから、処分するなんてバチ当りですね。ドレスたちのためにも着潰して差し上げましょう。

私は物を大事に使う女なのです。


え?貧乏性?

否定はしません。

むしろどんと来い。



そんな私ですから、ドレスではなく男装用の衣装を作ってもらいましょうと閃いちゃったわけです。


まだ内緒ですけど。

とりあえず苦しい言い訳を言い連ねて、私に合うサイズのあるであろう昔の陛下の衣装保管部屋へとやって来たのです。


あとは「これステキー」とか言って適当な衣装を試着して、「気に入っちゃったから、これじゃないとイヤ」とゴリ押ししてサイズぴったりの私専用男物の服をマチルダさんに作ってもらう、と。

おぉ!完璧ではないですか!



最初は陛下のお下がりとかでいいので、サイズが合う服をもらう作戦だったのですが、気づいてしまいました。

陛下の服はどれも国王としての品位を損なわない良い仕立てのものばかりなのです。

明らかに庶民向けではないのですね。


だからマチルダさんには製作過程で口出ししまくって、最終的にはあくまでも街中に溶け込めそうな衣装を完成させてもらいましょう。



楽しみですね!

ついニヤニヤしてしまいます。


ニヤニヤしながら手頃な衣装を試着するために物色します。

陛下からは「好きなようにしろ」と許可をいただいていますので問題ありません。



数着目星をつけて侍女さんたちと着る着ないで、すったもんだした後にどうにか袖を通せました。






くっ。


陛下め!

このやり場のない怒りはどこにぶつければ良いのでしょうか。

薄々気づいてはいましたが、目の当たりにするとちょっとイラッとしてしまいました。


ウエストはぴったりなのです。

ウエスト「は」。


裾が思いっきり余っているのですが。

顔もいいくせに足まで長いとか。

顔が良くて、足も長くて、ムキムキ過ぎず程よく鍛えられた長身なんて、羨ましすぎます。

どれか一つでもいいから分けてもらいたいものです。




あれやこれや試着して、それなりに楽しめました。ようやく股下が合う服も見つけましたし。

高級な布地に一流の技術を使われているだけあって、陛下用にも関わらず、吸い付くような肌触りとフィット感。

新しく作ってもらわずとも、もうこの服がもらえればそれでいいと真剣に考えるくらいに素晴らしいです。

やはり男物の衣服はいいですねぇ。

しっくりきます。

落ち着きます。

女はドレスと誰が決めたのでしょうか。


足元がスカスカするスカートタイプなのに、足を見せるとはしたないと言われる理不尽。足を見せてはいけないなら、女性も男性のようなパンツスタイルにすればいいのに。動きやすくていいですよ!

反対に胸は谷間をこれでもかと見せつけるデザインが主流です。

胸が豊かな方はいいですよ。

私のようなささやかな膨らみしか持たない女はどうしろと。私は気にしませんが(大きいと邪魔そうなので、現状に満足しています。)露出の多いドレスを着るたびに、侍女さんたちから寄せられて上げられて盛られまくって、原形を留めない偽乳を作られる苦労は半端ありません。主に侍女さんたちの。

胸が大きければ対比で腰もより細く見せるのが容易いのに、胸が無いばかりに腹周りをさらに締め付けられる拷問。

私も息苦しくて倒れそうなのを我慢しているのです。


そのうちこの国のファッション界に大革命をおこしてやろうと思います。

まずは女性のパンツスタイル解禁からですね。

具体的な対策は全く考えていませんが、意気込みだけは十分です。

頑張りますよ!おー!



心の中でこっそり気合いを入れます。

それにしてもちょっと暑いですね。

かなり脱いだり着たりしましたし。

上質な生地だけあって、布の目が詰まっていて保温性が高い上に、詰め襟なので首もとが暑苦しいです。

空気の入れ換えでもしてもらいましょうか。




「そこの貴女、ちょっと暑いから窓を開けて下さる?」

「かしこまりまして」



そよそよと風が入って気持ちが良いです。

高く晴れ渡る空に、まるで王子さまにでもなったかのようなきらびやかなピッタリの衣装。

なんてすがすがしいのでしょう。

窓際に寄って大きく息を吸い込みました。




ん?



何やら窓の下から声が聞こえてきます。

揉めているようですね。

階下をさりげなく覗きます。

女性と男性のようです。

好奇心がむくむくと湧いてきて、思わず聞き耳をたててしまいました。



「………ちょっとでいいんだよ、何とかなるだろ?」

「そんな…」

「俺とお前の仲じゃないか。冷たいことを言わないでくれ」

「そんな事言われたって」



何でしょうね。

男性が女性に詰め寄っているようですね。

女性は下女のお仕着せを着ています。

男性は制服から察するに騎士のようですが、あまり男性に接する機会がない私には、どこの所属の方か判りかねます。



………んん?

割と体格の良い男性ですね。上背もありますし、肩幅もあって胸の厚みもご立派です。で、陽光にきらめく金の髪。

あら。

あらら?





お読みいただきましてありがとうございました。

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