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異世界到着ついでに死亡

 目を覚ますと木製の天井が見えた。一也は仰向けに寝転んでいるようだ。ここはどこだ、とそんなことには勿論ならない。どう考えてもオンラインゲームの中なのだから。

 しかし先程のPC画面は何だったのだろうか。初めてプレイしたはずなんだけど__いや、どうせ考えたところで分かるはずもないと、めんどくさくなって思考を止めた。

 体を気使いつつ、ゆっくりと起き上がった。途中で何か違和感を感じたが、移転時の副作用的なものだと決めつけて辺りを見回す。

 そこは四畳くらいの木製の小さな部屋だった。特に目を引くものもなく、あるものといえばドアと机。


「ん............?」

 

 前言撤回。目を引く物が机の上にあった。一也は立ち上がって近付きそれを手に取る。それは一枚のプリントされたA4紙の束だった。

 大切なルールでも書いてあるんだろうかと、とりあえず一枚目を捲った。


 [オンラインゲーム 説明書]


 ・ゲーム内での死亡はあなた自信の死を意味します。ご了承下さい。

 

 と、そこには大きな文字でそれだけが書かれていた。

 1ページに一つだったことにはそれなりに驚いたけれど、死亡する云々は予想がついていたので特に驚かない。

 次のページへと捲る。

 しかしそこには何も書いていなかった。印刷ミスか? 不思議に思って連続でページを捲るが、束の半分まで続けても何も見付からない。どうせ何も書いていないんだろうなと決めつけて放り投げた。

 

 さて、どうしたものか。

 行動を起こそうにも完膚なきまでに何もない。全くもってゲームをしている感覚がなかった。このまま時間を過ごすのは勿体ないかなと思いつつ、ドアの方に目をやる。

 そこから出ていくのも一つの手段だが、これはゲームだ。何もなさそうな場所が攻略の鍵となる可能性があるのだ。やはりここから出るのはまだ早い。

 探索するとを決めた一也は、思い切って机の一番上の引き出しを開けてみた。するとそこには深緑色の草があった。訝しげに見つめていると、なにやら金色の矢印みたいなものが草の上に浮いていることに気付く。

 こりゃまたなんだねと疑問が渦を巻く。いやまあゲームの何かなのだろうが見てるだけではよく分からない。

 しかし触れただけでゲームオーバーなんていう理不尽な展開はさすがにないだろうと、すっと草に手を伸ばした。触れると同時に冷たい感触。どこにでもありそうな普通の草だった。

 

 __と、唐突にその草が光る小さな球体に変化した。それが一也の体に抵抗なくすんなりと入り込む。しかし体に違和感はなかった。


 いわゆる『道具』みたいな物だったのだろうか。だとすれば薬草、とまあそんなところだろう。その後他の引き出しを開けてみたが、一番上以外には何もなかった。

 次は......棚か。

 近付いて一番上の引き出しから順に開けていく。開け終えて手に入れたのは、青色の線が入った白の上下ジャージだった。これが『装備品』......だろうか?

 とりあえず着替えてみる。すると目の前に黒色のボードらしきものが現れた。ピピピピピという効果音と共に、そのボードに文字が表示される。


 [ステイタスの上昇]

 

 ・守備力<1>---<50>__________上昇。

 

 結構上がるものだなと思いつつ、一也は所在なげに壁にもたれ掛かる。その時だった。唐突に壁がピリリリリと小さく音を立てる。驚いて振り向くと真っ暗な穴がそこにはあった。

 次いでウィィィィィンという音と共に開いた穴から吐き捨てられるように光るものが出てくる。なんだねこれはと手にとって顔を上げたときには穴は消えていた。さすがゲームといったところだな。

 もう一度光るものに目を移した。金色で丸い輪__腕輪だろうか。思い切って腕に通してみるが、何も起こらなかった。

 まあ、あってもなくても変わらないのなら別に気にする必要はないだろう。隠しスイッチみたいなものを押せただけでも良しとすることにした。


 部屋の探索を終えてしまうと、自然にドアの方に目が行く。そろそろ行きますかねと心の中で呟くが、しかし何か足りないなと感じた。数秒して武器を装備してないことに気付く。

 そういえばステータス画面はどうやって開くのだろうか。このままじゃあHPも攻撃力も分からない状態で敵と戦わなければならない。それはちょっと怖いので......どうしようか。

 

 しかしここでくすぶっていてもなにも始まらない。

 一也は爽やかな気持ちで部屋のドアに手をかけて__飛び出した。


 瞬間。


 横から勢いよく飛来してきた鉄球に弾かれて、一也はたまらず吹き飛ぶ。

 朦朧とする意識の中で見えたのは『HPが0になりました』という赤色の死亡表示だった。


 

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