第五話【シスターズ】
こんにちばんわ。
今日は起きると家の中がバタバタしていた。リニアちゃんが言うには今日はパーティーをするらしい。
午後には妹達がやって来るからそれまでに準備を終わらせなきゃと、言葉が分からないはずの俺にリニアちゃんが楽しそうに話していたので確かな情報だ。
そして今日はみんな忙しいからかまってあげれないと言われたので俺は一人部屋にいるという訳だ。
何をしようか。
(まあ、やる事は一つしか無いんだがね......)
と、言う訳で早速始めよう。
魔力操作の精度を上げるために、ね。
今回は少し思考を変えて手を合わせる。
む、
ん、
......ほっ。
流石に手が短いな。
体を倒す事でやっと手を合わす事が出来た。
これで準備は出来た。
さあ、始めよう。
まずは右回りに。
右手から左手へと魔力を流す感じで行う。
それをグルグル、グルグルと繰り返してく。
むー、なかなかに難しいな。
結構な集中力が必要だ。
だが、きっとプラスになる。
そして左回りに。
左手から右手へ。
そして腕、胸、腕、手、手、腕。
そしてそれを一つの流れとして捉る。
グルグル、クルクル、グルグル、クルクル。
何とも言えない不思議な感じだ。
不快では無い。
よく分からない、ドロっとした塊が、ゆっくりと巡っていく。
そしてもう一度右回りだ......。
う............。
これってめちゃくちゃ疲れ──
そこで俺の意識は途絶えた。
******
「──ゃん、──ちゃん、ユリィちゃーん」
声が聞こえる......ゆっくりと目を開けると目の前には美少女の顔があった。
「やっと起きたわー」
どうやら俺は寝ていたようだ......ボーッとする頭でそんな事を考えていると美少女の整った顔が迫ってきて。
ちゅーーーーっ
一瞬で頭が覚醒してしまった。
ほっぺたにそれはそれは熱いキスをされた......。
そりゃあ目もさめますよ......前世の俺はあんましこういうのに慣れてないんですから。
「(あっ......ユニアス様だけ......ずるい)」
あの〜、リニアさん?
小声で言ったつもりでしょうけど完全に聞こえてますよ......。
「あっ、ユニアス様そろそろ行かないと」
「えーっ、ユリウスと離れたくないー」
「大丈夫ですって、ユリウス様も連れて行きますから」
そっかーと美少女は言って俺を抱き上げた。
「旦那様とレシリア様がお待ちですから急ぎましょう」
レシリア?って誰だろ......。
始めて聞く名前だな。
それにこの部屋の外に出るのは初めてだ......楽しみだ。
美少女に抱っこされてリビングらしき所に行くと優しそうな青髪の美人が父親の隣に立っていた。
美人とイケメンはそれぞれ蒼髪のそっくりな赤ちゃんをだいている。
赤ちゃんは二人ともスヤスヤと眠っているのだが存在感が半端ない、感じる気配と言うか魔力と言うか......とにかく凄いのだ。
「ジョルジュ様、ユニアス様......エミリア様とマリア様をよろしくお願いします......」
始めて見るメイドさんが涙ぐみながら言った。
「あら、あらー可愛いわねー」
「ああ、二人ともしっかりと面倒を見るよ。なんてったって俺の娘になるんだからな」
............えっ!?
イケメンの娘?
どういう事だ?
浮気......ではないよな、雰囲気的に。
もしも浮気だったら俺が親イケメンをぶっ殺ばすかも知れん......こんな美少女と結婚しておきながらこんな美人に手をだしたとしたら......うん、爆発しろ。
むしろ俺が爆発させてやる。
だが、実の親を殺したくはない......。
なんて、俺が物騒な事をかんがえていると。
「ユニアス、本当にお願いね…」
「ええ、私達がしっかり面倒をみるわ。安心してレシリア」
そんな事を言いながら美少女とレシリアさんが抱き合った。
結論から言うとイケメンは浮気をしていなかった......これで爆発させずにすんだ。
会話の内容から察するにこの美女は美少女の親友でその子供達を代わりに育てて欲しいとの事だった。
つまりあの赤ちゃんは俺の義理の妹になるってわけだ。
そしてこのパーティーは妹達&俺の誕生祝いという事だ。
誕生祝いと言っても俺達はまだ産まれて二週間位──妹達も同じ日に産まれたらしい、運命を感じるね──しか経っていないからまだ自力で動けるはずもない、特にする事もなく抱っこされっぱなしだったが、たまにメイドさんに抱っこされたりメイドさんに撫でられたりされつつ、あとはずっと美少女の腕の中で過ごしていた。
******
気が付くと夜になっていた。
すっかり眠ってしまっていたようだ。
本当にこの身体は疲労に弱い......。
それじゃあ魔力操作の練習をしますかね。
と、その前に、
──本当に凄い存在感だな。
試しにシスターズの気配?を探ってみたがハッキリと分かる。
美少女やメイドさんズではこうはいかないからな......。
これも要練習か。
練習を終え、疲れた俺はその重い瞼を閉じた。
******
シスターズがやって来てからもう半年程が経つ。
俺はついにハイハイを覚え、掴まり立ちなら立つ事も可能になった。
この半年で俺の魔力はグングン成長している。
やっぱりスタート地点は大切だったようでお腹の中で練習した事は今では簡単に出来る様になって来ている。
とにかく言える事は「俺の妹は可愛い過ぎてやばい」である。
シスコンとか言うやつはぶっ殺ばす。
蒼髪に翠眼のほうがエミリアで蒼髪に碧眼のほうがマリアだ。
シスターズとの触れ合いはたまにお袋が俺の部屋へ連れて来た時だけで俺から会いに行った事はないが会うたびに向けてくるあのキラキラした笑顔......やばいです。
ついついこの二人は俺が守るとか叫びそうになってしまう。
だが、残念な事に俺はシスコンじゃ無いので却下だ。
『はっはー、お兄ちゃんシスコンだー!!お母さーん、お兄ちゃんがー──』
俺の頭に、既に失われた筈の前世の声が響く。
シスコン、か......。
前世では兄や妹にいじられたもんだ。
だが俺はシスコンではない。
ノーマルだノーマル。
全く前世で俺を囃し立てた奴らは何だったんだ。
まあ、女と言うのは俺の理解の外にいる生物だしな。
前世でも............ああ、思い出せねぇ。
どんな女がいたとかなら覚えてるんだが顔や名前、口調なんかがぶっ飛んでやがる。
(ん?)
ふと、考え込んでいると少し透かした窓の外から規則的な息遣いが聞こえて来た。
一定のリズムで繰り返される。
と、同時に何かが空を切る音。
この音は──
何度も聞いた事がある。
あの日、あの時、あの地獄で......。
もう何年も前、前世での話。
剣を片手──いや、両手に携え。
草原、砂漠、荒野、山岳、火山......。
挙げていけばキリが無い。
そんな数多のフィールド。
文字通り命を掛けて駆け抜けた日々。
暖かな日差しの中で戯れる仲間たち。
互いが互いを支え合い、力に変える。
そうやって駆け抜けた二年間。
(──ああ、剣を握りたい)
久しく忘れていたあの感覚が蘇る。
グリップをしっかりと握る手。
その調子を確かめながらも相手の一挙一動に気を配り静かに呼吸を整える。
──先手必勝。
その言葉はその場に相応しくない。
──ゲーム。
そんな言葉で語られるほど安くない。
──斬撃。
その一瞬に垣間見る命の輝き。
戦闘、殺し合い、暴力、虐殺、駆け引き、窮地......。
俺はその全てに魅了された。
見る人が見れば狂ってると言われるかも知れない。
いや、言われるだろう。
だが、俺は確かにその戦いに快感を覚えていた。
そして楽しんでいた。
仲間の手前、そんな事は言えない......。
いや、仲間達の事だ。もしかしたら気付いていたかも知れない。
『こんのっ、戦闘狂が!!』
今思えばピッタリのアダ名だな。
強者に勝つ為に自己鍛錬に励み続ける日々。
確かに勝つ為と言う的確な目標があった、がそれ以上に強くなりたかった。
ああ、剣を握りたい......
いや、剣を握ろう
何て言ったって
──ここは “剣と魔法” の世界なのだから。
直接メッセージをくれた方、ありがとうございます。
誤字指摘などありましたらお願いします。