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異世界転生ライフ 〜ニューゲーム→ニューライフ〜  作者: ㌔㍉コン
第一章〈聖域都市ツェルグブルグ〉
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第三話【始めまして異世界】

やっと転生です。

 最近ユニアス様の調子が悪い。


 妊娠からすでに半年以上が経ち、安定しだそうかという時に突然ユニアス様が体調を崩された。

 どうも体内の魔力が安定しない様子で魔力が枯渇した時に表れる倦怠感のような感じがするらしい。


 治癒院へ行ってみるも「原因はよくわからない。魔力が回復しやすい様になるべく寝て過ごす様に」と、言われるだけでとくにこれといった解決方法は見つかってはいない。

 ユニアス様は毎日お腹の中にいる子供の事を心配していらっしゃった。


「私のせいでこの子に何かあったら......」


 と言って泣く日もあったぐらいだ。

 毎日私はつきっきりで看病をしている。







 ******






 門をくぐると視界が暗転した。


 次に気が付いた時にはそこは真っ暗な世界が広がっていた。

 暗くて何もない。

 だけど暖かくてどこか安心する様な。

 俺はそこで悟った......。


(ここはお腹の中だ)


 ここはお腹の中。

 そうと分かるととてもここが居心地がいいように感じてきた。


 だが俺には目的がある。

 そのためにあの神様にお願いしてスタート地点をここにしてもらったんだからな。

 そうして俺は自分の内側にある、前世ではなかった感覚へとゆっくりと意識を伸ばしていった。





 俺の意識が覚醒してからずいぶん経ったような気がする。

 ずっと真っ暗だから時間なんてものはとうてい分かりっこないんだから時間なんてあってないような物だ。


 ここにいるのを暇とは思っても辛いとは感じない。

 その暇さえも心地よく感じてしまうこの空間で俺は修行に明け暮れていた。


 そう、それは魔力操作だ。

 意識が覚醒してから直ぐに始めた魔力操作。

 始めは前世にはなかった感覚へと意識を伸ばしていくだけだった。

 それを何度か繰り返していくうちに魔力というものをしっかりと感じる事が出来るようになっていった。

 今では特に意識をせずに魔力を動かせるようになってきている。


「鉄は熱い内に打て」


 この言葉を自分に言い聞かせてずっと魔力操作を続けてきた。

 今では体外の魔力まで感じれるようになってそれを取り込んだりしている。





 最近になって気付いた事だが俺はどうやら母親から魔力を吸っていたらしい。

 何故そんな事が分かったのかというと。

 明らかに今まで取り込んできた魔力とさらにその先、おそらく外の空間から取り込んだ魔力とでは馴染み方が違ったのだ。


 今まで取り込んだ魔力は自然と体に馴染み、染み渡るように体内に入ってきていた。

 そして新しく意識して取り込み始めた魔力は少し調整しないと体内に取り込む事ができない。


(これは今後の修行の課題だな。)






 ******






 遂にこの日を迎えるのだ。

 最近やっとユニアス様の体調が良くなってきた。

 魔力も正常どうりに戻って、とても明るくなった。

 旦那様なんてユニアス様の回復を泣いて喜んでいらっしゃった。

 もちろん私もとても嬉しかった。


 そして今日、遂にユニアス様に陣痛が訪れたのだ。


 それは夜遅くの事だった。

 私は急いでフェルム姉を呼び出産の準備を始めた。

 大旦那様の所でこの日のために習った事を二人で丁寧にかつ急いで準備をしたのだが、どうしても慌ててしまう。

 いつ、陣痛が起きてもいいようにある程度の必要品を始めからユニアス様の所に準備をしておいて正解だった様だ。

 そうして私達の格闘は始まった。


 日付が変わってしばらくしたころ。


「お、ぎゃああぁぁああぁぁああぁぁぁあああ」


 大きな鳴き声がグラッドレイ家の屋敷に響きわたった。


 ──元気な男の子が産まれた。






 ******






 この空間から出される──。

 何となく直感でそう感じた。


 もう準備は万端だ。

 早く新しい世界を見てみたい。

 だけどこの空間から出たくない。

 そんな気持ちがせめぎ合う。

 体がどんどん下がっていく。

 きつい、苦しい、まだ出たくない......。


 そんな気持ちも関係なしに体は外の世界を目指している。

 これが本能というやつなのだろうか?

 そんな気持ちと体にもどかしさを感じていると突然目の前が眩しくなった。

 そして浮遊感。

 俺は本能に任せて叫んだ、泣いた。


「お、ぎゃああぁぁああぁぁああぁぁぁあああ」


「ユニアス様っ‼ 元気な男の子です」


 そんな明るい声が上の方から聞こえる。

 そして何か柔らかく暖かい物の上に置かれる感覚。


 安心する匂いと暖かさだ......。


「よく頑張ったわね、私の可愛いぼうや」


 とても安心する声が聞こえる。

 そんな暖かさと声の中で俺はまどろみの中に落ちていった。





 ******





 目を覚ますと目の前には金髪の若い女性の顔があった。


 美人と言うよりも美少女といった見た目だ。

 その美少女は俺とめが合うと優しく微笑んだ。


「ねえ見てジョルジュ、起きたわよ!!」


「おっ、起きたか!」


 そう言って銀髪の青年が俺のことを持ち上げた。

 ちなみにイケメンだ。


「ユリウス、パパだぞ〜」


 パパ?

 まさかこのイケメンが俺の父親だと言うのか......?


 俺が言葉の意味を飲み込めずにボーっとしていると隣にいた美少女が俺を抱っこした。


「ユリウスはママの方がいいわよね〜」


 ママ?

 と言う事はこの美少女が俺の母親?

 おいおい、冗談きついぜ。

 どう見ても母親は前世の俺より年下じゃん。


「どうしたのかしら?」


 俺がまたボーっとしていると美少女が心配そうに覗き込んできた。

 俺は大丈夫という意思を示すために声を出す。


「だー、あーうー」


 しかし俺の口から出るのはそんな気の抜ける様な声。


「見て見て声を出したわ!」


 美少女はとても嬉しそうに目を潤ませて笑った。

 その声と笑顔を見ていると自然と安心し、笑顔になる。


「おおっ、笑ったぞユニアス」


 青年も嬉しそうに笑う。

 くっ、笑顔が眩しすぎる......。

 何て破壊力だ、このイケメンオーラは。

 隣の美少女とまさにお似合いと言った感じだ。


「最初は余り魔力を感じなかったから少し心配したんだけど」


 そう言って美少女は涙を流した。


 ......えっ?

 全く魔力を感じない?

 ま、まさか俺の魔力はめちゃくちゃ少ないのか......。

 いや、でも............。


「ユニアス......」


 青年が俺ごと美少女を優しくだき包んだ。


 そして俺は焦っていた。

 魔力が全く感じなかった......。

 この台詞が俺の思考を焦らせていた。


 しかし次の瞬間俺の思考がぶっ飛んだ。


「そろそろご飯の時間かしら?」


「そうだな。俺はレシリアの様子を見に行ってくるよ」


 青年が部屋を出て行くと入れ替わりにメイド服を着た人が入ってきた。

 そして美少女が服をはだけさせ......。


 ブフッッ


 危うく吹き出すところだった。


「おっぱい飲みましょうね〜」


 おっぱいを飲む?

 そうか、赤ちゃん何だから当たり前かぁ〜。


 ──いやいや無理だろ。

 いろいろとマズイから。

 俺のハートが耐えられないから。


「あ、あう、うー」


 否定の意思を伝えようとするが俺の口から出てくるのはそんな喘ぎ声とも喚き声とも分からないような声。

 そして美少女はこの声を欲していると勘違いしたらしい。


「はいはい、今から飲みましょうね〜」


 そう言ってどんどんおっぱいが近づいてきて──





 ******





 目を覚ますと周りは真っ暗だった。

 どうやら俺は眠っていたようだ。

 俺は寝る前の事を思いだ──さない方が良さそうだ。

 うん、思い出すと顔が赤くなるからな。


 さてそれでは気持ちを切り替えて魔法でも使ってみますか。


 俺はあの時に美少女が言った台詞を思い出していた。

「最初は魔力を全く感じなくて心配だったけど......」と美少女は言っていた。


 その台詞は俺の事を不安にさせるには十分な物だった。

 俺の魔力は少ないのかもしれない......と。


(試してみるしかないな......)


 神様は確か「魔法はイメージだ」みたいな事を言ってたな。

 まずは光が欲しいから光を出してみよう。


 手に魔力を集中させる。

 そこに(あわ)く発光するイメージを送り込んでいく。

 魔力は......全体の十分の一(くらい)か?

 まだ産まれたてだしそんなもんだろう。

 と、言う事で魔力を......。

 魔力を......。

 魔力を..................。

 魔力を..............................、あれ?


 結果として光はつかなかった。

 そしてその代わりに部屋に物凄い魔力が充満している。

 何だよこれ......。

 取り敢えず取り込んでおくか?

 流石にヤバそうだしな。


 そして俺が魔力を取り込み終えた瞬間、


「ユリウスッ!!」


 バタンッと音を立て勢い良く扉を開き母親が入って来たようだ。

 ようだ、と言うのは俺は首が全く動かないからな訳だが美少女の声は焦っている様に聞こえる。


「なっ、なっ、な、何事ですか?! ユニアス様」


 更にその後ろから寝起きか?と思わせる様な慌てた声がする。


「ユリウスッ!」


「おぁっ」


「そ、そんなに突然ユリウス様を抱いてはいけません」


「そっ、そうね............ごめんねユリウス」


(いやいや、マジで死ぬかと思いましたよお嬢さん? いきなり抱っこしちゃってさ......)


「本当にどうしたんですかユニアス様? 突然部屋を飛び出してユリウス様の部屋へ行って」


 うん、本当にびっくりした。

 突然バタンッって音を立ててドアが空いたかと思うと突然抱きかかえられたんだからな。

 マジで下手すると首をやっちゃうレベル。


「それがね......ユリウスの部屋から突然、魔力の発生を感じたのよ。まるで魔法を使う様な感じで......」


「......取り敢えずキチンと明かりをつけましょう、流石に蝋燭(ろうそく)一本の光では......」


「いいわ、フェルム。私がつけるから」


 美少女はそう言って明かりをつけようとするメイドさんを呼び止めると一つ深呼吸をしてから、


「我、光の精に魔力を捧げ、長きを照らす光の球を望む......(ライト)


 ん?

 唱え終える同時に美少女の手の平から光の球がゆっくりと現れて部屋を淡く照らし出した。

 魔法詠唱......?

 いや、それより美少女は魔力が突然発生したとか何とか言っていたな......。


「あっ、うーあぁー」


 取り敢えず「ごめんなさい」の意思を込めて声をあげておく。

 うん、これで大丈夫。

 人間正直が一番だ。


「ああ、カワイイッ!!」


「うぉぅっ」


「ユニアス様、強く抱き締めてはいけませんっ!!」


 その夜、俺は美少女と同じ部屋で寝る事になった。




誤字指摘などお願いします。

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