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第二十一話【夢と出会い】

一応、毎日投稿です……

※少し気持ち悪い表現があります。苦手な方は気をつけてください。

 明晰夢ってのをご存知だろうか?

 夢を見ている事を自覚している夢ってやつだ。




 ゆっくりと目を開けるとオレの手の中にモフモフした物が収まっていた。

 それはまるで……狐耳。

 そう、狐耳だ。


 確か夢ってのは本人の欲望なんかが現れるとか……

 そしてオレの手の中に収まるモフモフした耳。

 オレはそんなにもモフモフを欲っして……

 少し悲しくなって来た。


 だがオレはプラス思考をモットーにしている男である。

 こんな機会は二度とは来ないだろう。

 それなら思う存分楽しむのみ!!


 と、言うわけで……


 モフモフモフモフ……


「────ッッ!!」


 オレは思わず息を飲んだ。

 手に触れる毛はしっかりとしていながらも毛先に近づくに連れてしっとりとしていて手に馴染む。

 そして人肌を想像させる温かさ……


「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……」


 少し息が荒くなるのを気にも止めずに狐耳を頬へ……


 スリスリスリスリスリ……


 ああ、やばい。

 今日が命日って言われても信じそうだわ……


 だがオレの欲望はこんな事では止まらない。


 はむっ


 そう、咥えたのだ。

 オレの夢、目標、なんて言葉では語りきれない。

 唇越しに伝わってくるトクン、トクンと脈打つ感じ……

 ああ、たまらん。


 オレは自身が危ない領域に入って行っているのを自覚しつつもやめられないでいた。

 それは狐耳の持つ魅力からなのか……

 はたまたオレの欲望から来る物なのか……


 明らかに後者、


 だが、そんな事はどうでもいい。

 こんな明晰夢を見る事は二度とないかもしれない。

 それなら思う存分楽しんでやる!!


 オレの手は耳とは別の場所へと伸びていく。

 目の前には狐耳付きの後頭部。

 つまるところ、恐らくそのまま手を腰の辺りに持って来ると、だ……


「あぁ……」


 少し湿り気のある声が漏れる。

 我ながら気持ち悪いったらありゃしない。

 だがこれは夢の中。

 何をしようと許されるのだ。

 まあ、倫理観は一応、一応あるけどね……


 そんな事を考えながらも手を動かす事をやめないオレ。いや、違うて、手が勝手に……!!

 右手はそのフワフワの右を弄り続け、左手はモフモフ、フワフワ……モッフモフ、フッワフワの尻尾へと!!


「──くっ……」


 何なんだこの気持ちよさは!?

 サラサラなんてもんじゃない。

 何とも言えない触り心地。

 吸い付く様な毛の感覚。

 オレはこの日の為に生まれて来たのでは?と錯覚させてしまうほどの気持ちよさなのだ。


 あった。

 見つけたぞ!!


 遂にオレは見つけてしまった。

 尻尾の軸となる骨の部分を……

 別にそこが好きなわけではない。

 しかしそこは深淵。一番深いところなわけだ。

 つまるところ、そこにはモッフモフの毛が一杯あるのだ!!


 オレは寝転がった状態で向こうを向いている狐耳少女の後ろに同じ方向を向く様にくっ付き耳と尻尾をいじっている。

 しかしこれは夢。明晰夢なのだ。

 何をしても許される。

 だってこの部屋にはオレと狐耳少女しかいないの、だから!!


 ふっ、ふっ、ふっ、


 夢の中にはサフィールもシエルもいないのだ。

 これがオレが明晰夢だと断言できる理由でもある。

 オレはこれで無敵になれる。

 そう、最強だ!!


 夢の中。

 許される。

 もしかしたら二度と見る事はないかもしれない。夢だから。


 そんな思いがオレの思いをさらに加速させる。


 オレの目は次にそのサラサラとした(ピンク)色の髪へと向けられる。言い忘れていたが狐耳少女の髪の色は桜を彷彿とさせるような綺麗な桜色なのだ。

 もちろんその狐耳もである。


 (つや)があり心なしかしっとりとしているその桜色の髪。

 そこに後ろから抱きつく様に顔を(うず)める。


 ああ、どうして女の子ってこんなに良い匂いがするんだろう……


 やばいなぁ、オレって完全に変態だわ……

 いや、しかし、()としては八歳の銀髪の男の子が同い年くらいの桜色の髪の女の子の髪の毛に顔を埋めている。

 そこまで問題はなさそうな気がするのは…………気のせいですね、はい分かります。


 中身がダメなんですよね……

 ここで男の子──オレが愛なんかを(ささや)いていれば良かったのかもしれないが……


 まあ、これは夢なんだ。

 気にする事はない。

 オレはオレのやりたい事を、


「──う、うぅん……」


 と、そんな声。

 細くてまさに寝起きっ…………

 ちょっと待て、オレはこんな声出しちゃいないぞ。


 すると顔を埋めていた頭がモゾモゾっと動いた。


 おお、この夢は登場人物が動くパティーンか。

 声まで出すなんてな。

 恐らくそれらしい事を言うのだろう。夢なんだし。


「お、かあさん……?」


 そんな感じに寝ぼけた声を上げる少女。

 まさかの一言だったな。

 てっきり誰かを問われるか、オレを知っている(てい)で話が進むのかと思っていたんだが……


「う、ぅうん……」


 と、言いながら軽い伸びをして少女は体を反転、つまりこっちを向いた。

 その瞳はクルリと丸くとても可愛らしい顔をしている。


「…………だれ?」


 本当に不思議そうにこちらを向く少女。恐らくそう言う展開なのだろう。

 まあ、そろそろ目も覚めるだろうしふざけてみますか、ね。どーせ、夢なんだし。


 と、言うわけで


「ぼ、僕の事を忘れたのかい……!!」


 と、少し驚き落ち込んだ様に言う。

 そして、少女の名前は……?

 サクラ、かな。

 安直だが呼びやすそうだ。


「……サクラ」


「………………?」


 オレが適当な名前を呼ぶと驚いた様な、不思議がっている様な顔をする。

 が、


「銀髪に、碧眼…………ユリウス・グラッドレイ?」


 ?

 オレの特徴を述べた後にオレの名前を……

 やはり知っているという流れなのだろうか。それに少女の名前は?


「初めまして、サクラ・アッシュドランド、です」


 と、まだ眠気が覚め切ってないような声で自己紹介。

 どうやらそのままの名前で進んでいく様だな。

 しかし、初めまして?

 どういう事だ?


「あ、あの……」


 だんだんと目が冴えて来たのか、少女がしっかりとこっちをその紅い双眸で見てきた。

 少し潤ませ、頬が赤くなっているが……リアルな夢である。


「その…………手」


 手?

 ……ああ、そういう事か。

 狐耳少女がこちらを向いた事によって向かい合って抱く様な状態になっていた。

 少女、サクラの目線から察するに手を放してって事なんだろう……


 オレは名残惜しさを感じながらゆっくりと手を解いた。

 そろそろ目が覚める頃だよね?

 お楽しみタイムも終わったんだしさ……


「………………」


 どちらとも喋る事なく、ベッドの上で見つめ合う二人……

 やばい、少し恥ずかしくなって来た。

 早く目、覚めないかな……


 だが待てど暮らせど目は覚めない。

 確か痛みを与えると目が覚めるんだっけな……?

 と、言うわけで定番っぽく頬をつねって


「……って、痛い」


 なんで痛いんだ。夢の中は無敵の筈だろ? 物理攻撃に対して。

 そんなオレを不思議そうに見つめるサクラ。

 確かに突然目の前の男が頬をつねって痛い……なんて言ったら、何だこいつって思うよな。

 でもここは夢の中…………だよね。


 どうしよう。だんだんと自身がなくなって来たよ、僕。

 しかし、もし夢じゃ無いならここはどこなんだ?

 オレは畳の上に敷かれた布団の上に寝ていたし。

 シエルはオレの手を握り、サフィールーはオレの上にいた。

 それがいない……

 よし、夢だ。

 そうに違いない、よね……


 もしこれがアニメかなんかならタラタラという感じの効果音が付けられるに違いない、って感じに汗を流すオレ。


 ここでいったん。もしこれが夢じゃなかったらの話をしてみよう……。もし、な。

 いや、直接聞くのが早いか?

 オレは目の前で頬を染めっぱなしの狐耳少女サクラに声をかける事にした。


「ねえ、」


 ん?って感じにこちらを向くサクラ。


「ここは、どこ?」


「私のお部屋、です」


 そっかー。君のお部屋かー。

 よーし、僕はどうすれば良いんだ?

 非常に困った。

 もしこれが夢じゃなかったらオレは彼女の部屋に侵入した事に……?

 いや、俺は夢遊病なんかじゃない筈だ。よね?


 いやいやいやいや。

 自信を持て、ユリウス・グラッドレイ。

 お前はこれを夢だと信じれば良いんだ。

 そうすれば救われる。

 良く言うじゃないか「信じる者は救われる」って。


 そう、ゆっくりと目を閉じ。心を落ち着かせろ。

 そうして落ち着いたらゆっくりと目を開けるんだ。

 きっとそこには夢から覚め……てない。


 目の前には相変わらずサクラの顔。

 うーん、どうしよう?

 困った困ったー。


 少しテンションをおかしくする事で少しでも気を紛らわせ様とするオレ。滑稽である。


 と、そこへコンコンとノックの音。

 登場人物が増えた!?


「おーい、起きてるかー?」


 そこからはケイトさんの声。

 あっ!!そうかきっとこれはあれだ。

 現実の世界での音声が夢の中にも適用される、あれだ。

 そして返事をすると夢から覚めて現実へ、と


「は、はーい。起きてまーす」



 …………



 ……………………



 ………………………………



 …………………………………………



 起きれませーん。


「開けるぞー」


 よ、よし。ここで目が覚める筈だ。

 そうであってくれ。


 そしてガチャリと音を立て扉が開き、そこから顔を覗かせるケイトさん。

 いつも通りの整った男前な顔。

 そして、いつも通り。その頬はイタズラが成功した子供みたいに緩んでいた……



「──ま、まさか!!」













「おいおい、そんなに()ねるなって」


 昨晩、夕食を食べる時に使った掘りごたつ。

 そこにはオレをなだめるケイトさんと、それを聞かないオレがいた。


「いやー、あっしも悪かったっすよー。いくら頼まれたとは言え、実行したのはあっしっすから」


 と、ハイトさん。


 ここで先ほどの夢の(時間の)真相を話すとしよう。

 オレとシエルが寝静まった頃。

 初めから部屋に侵入しており気配を消していたハイトさんが行動を起こす。

 ここで、寝る直前まで使っていた光魔法の事を褒めていたが、覗き見なんて許すまじ。


 ハイトさんは()ず小瓶を取り出したらしい。眠りのポーションだ。

 眠りのポーションとは野営や治療の時に使われる物で、睡眠導入効果があるんだとか。ちなみに人体に害はない。

 そして次にオレの作ったクッキー。これは数日前にオレがあげたのをとっていたとか……


 その二つを持ちオレたちに接近。

 ハイトさんの接近に当然、寝ているオレとシエルは気づかない。この人が本気を出せば起きてたとしても気づかないが……まあそれはいい。

 そしてオレとシエルに眠りのポーションの気化した物を嗅がせる。

 ここで役に立つのがクッキーだ。


 当然、そんな動きをしているとサフィールは気づく。

 そして気づいたサフィールは不思議に思うだけだ。なんせハイトさんの事を仲間だと認識してるからな。

 しかしオレを起こそうとはするだろう。

 そこでクッキーである。


 サフィールにクッキーを与えそれを食べている間にポーションを嗅がせる。

 そしてサフィールに「シエルを頼むっすよ」と言い残しオレを(さら)ったらしい。

 サフィールは人語を理解しているので、シエルを守る事にした。丁度、その日はオレから一日中シエルの(そば)にいてあげてと頼まれてた事も相まって従ったそうだ。


 攫ったオレを連れて来たのは女将さんの娘──サクラの部屋。

 そこで寝ているサクラの隣にオレを寝かして部屋を後にしたらしい。「子供とは言え、女性の部屋に入るのは緊張したっす」と飄々とした顔で言っていた。


 どうしてこんな事を?と質問したところ。

 ケイトさんは「面白いからに決まってんだろ」

 ハイトさんは「もう少ししたら分かるっすよー」である。


「ほら、機嫌治すっすよ。女将さんに卵かけ御飯?ってのを頼んどいたっすから」


「お、噂をしてれば」


「持って来たわよ」


 と、言いながら女将さんが部屋へと入ってきた。

 左横脇におひつ。右手に卵をいくつか持っている。


 オレはおひつからご飯をよそう。

 ホカホカと湯気の立つ。艶やかな米の中心を少しくぼませ卵袋を作った。

 そこへ、


「はい、ユリウス君」


 今朝も綺麗でにこやかな女将さんが卵を渡してくれた。

 この人は自分の娘がよく知りもしない男と一緒に寝ても何とも思わないんだろうか?と不思議に思い渡されるついでに顔を見る。

 すると、


「ああ、サクラの事なら気にしないでちょうだい。わたしがハイトにお願いした事でもあるの」


 って、おいマジかよ。

 女将さんが、も?頼んだのか。

 しかも目線だけで訴えたオレの疑問を解消してくれるなんて……


「ああ、そうそう。あの子(サクラ)、照れてたわよー」


 ふふふと上品に笑う女将さん。

 って……もういいよ。何も言わない。

 オレはここにいる大人たちにまともな返事を期待しない。


「あと、ユリウス君は生卵って言っていたけど……ゴメンね」


「?」


「卵の流通って難しいのよ。だからそんな生で食べられる程に新鮮となると、ね。だから緩めの温泉卵になってるわ」


 と、言った。

 半熟って事かな。

 少し残念だが、わがままは良くない。


「イイですよ。僕、温泉卵って大好きですから」


 そう答えて卵を割る。

 オレの言葉に対して「……できた子ね……やっぱりサクラを」と聞こえた気がしたが気にしない!!


「──おおっ」


 思わず声を漏らすオレ。

 昨日食べた温泉卵は黄身だけが半熟だったが今回の卵は白身も半熟だ。これが緩くって意味か、と納得する。


 そして箸で……


「ああ、そうだユリウス。昨日から思ってたんだが……お前って箸が使えるのな」


「はい、昔練習したんですよ。だからマリアとエミリア──僕の妹たちも使えますよ」


 これは事実だ。

 ある日、父さんが同僚にお土産として貰ったと言って三人分の箸を持って帰って来た事があった。

 その箸を見て久々に使いたくなったわけで父さんにねだったらアッサリとくれた。それを見たエミリアとマリアもって感じだ。


 醤油をかけてさっと混ぜる。

 オレは上の卵と醤油を混ぜてから食べる派だ。全部と混ぜるとむらが出てしまった時が嫌だからな……

 そして一口、二口、三口……ってな感じでどんどん掻き込んだ。


 今朝は皆でTKG……いや、O(おんせん).TKG(たまごかけごはん)を食べた。

 やっぱり人の食べている物って美味しそうに見えるよね……美味しいんだけど、ね。












「〜〜♪ 〜〜〜♪」


 ケイトさんの鼻歌。


「嫌にケイトさんご機嫌ですね……」


 ハイトさんの武器の手入れを手伝っていたオレは目の前で不気味に(オレ視点)に鼻歌を歌うケイトさんを見ながら言った。

 ちなみにハイトさんの武器は小刀と暗器だ。


「ユリウスにイタズラが成功したからじゃ……ないっすよ……」


 オレの視線を受け。途中で言葉を止めるハイトさん。


「この前、ここ(コナータ)に知り合いがいるって話したっすよね?」


「はい、女将さんの事ですよね?」


「女将さんもっすよ。もう一人いるんすよ鍛治師をやってる人が」


 ああ、ケイトさんは武器が好きだからな……

 だから機嫌がいいのだろう。

 うん、オレの拗ねた顔を見たからではないはずだ。


「へぇー、凄いんですか?」


「一番っすよ」


 ハイトさんには珍しくニヤッとしながら言った。


「一番?」


「そうっすよ、この鉱山都市コナータ。またの名を鍛治(・・)都市コナータって言うんすけど……、その鍛治師たちの頂点の人っすよ」


「頂点…………」


 思わず息を飲むオレ。

 コナータに来てからこの旅館に行くまでの間に何十という鍛冶屋を見た。それも恐らく一部に過ぎない……

 その頂点、か……


「あっしの武器たち、ケイトさんの剣もその人が打ったんすよ。恐らく……ユリウスの持っている剣も」


 オレの持っている剣。

 恐らく父さんに貰った銀色の光沢を持つあの剣の事だろう……


 楽しみだ……


 オレは自分の頬が緩むのを感じた。












 人ごみなんてテンションでどうにかなると思ってた時代が僕たち(・・・)にもありました。すいません。



 オレたちはかれこれ一時間程、歩いていた。

 道幅はあると言っても皆がどくのは馬車が通る時だけ。しかもここは店なんかが多く並んでいて人が多い。


 さらにはオレたちの身長を相まって、そこはすでにデンジャーアトラクションと化していた。


『ユリウス……』


 オレの肩に掴まり苦しそうに呟くシエル。ついて来なければよかったのにってのは無しだ。

 安全策として二人のどちらかに抱っこして貰う事を考えたのだが…………シエルがストレスで死にかねん。


「大丈夫っすかー?」


 立ち止まり後ろを向きながら言うハイトさん。

 ハイトさんはオレたちの壁になる様にすぐ前を歩いてくれている。

 ありがたい。


「まだなんですか……?」


 オレは口調にダルさが乗るのを感じながら言う。


「もう着いたっすよー。ほら」


 ハイトさんがそう言って顔を向けた方を見ると、


 金物屋フォルジュロン、と看板を掲げている店があった……






 ハイトさんに導かれる様に店内に入ると本当に金物屋だった。

 ここに武器が?と思ってしまうのも無理ないだろう。


「こっちっすよー」


 オレが疑問符を浮かべているとハイトさんが呼ぶ声。

 それに導かれる様にシエルを支えながら店の奥へと向かう。

 ちなみにケイトさんは先に行ってしまった様で姿が見えない、


「確か、ここっすね」


 そう言ってハイトさんが止まった所は壁。

 いや、どこか違和感を感じる……


「──扉……?」


「おおっ、分かるんすかユリウス!? 凄いっすねー」


 呟くオレの声に反応し驚くハイトさん。

 確かにそこには扉があった。

 魔眼を一瞬だけ解放したら見えたのだ。


 ここには幻惑系の魔法がかかってるんすよーと言いながら中へと入るハイトさん。

 それに続いて扉の中へ、


「ちょっと、歩くっすよー」


 そこには長い廊下が続いていた。








 数分歩いた所でハイトさんが立ち止まる。

 そうしてこちらを向き、指を立て、


「イイっすかユリウス、シエル。これから合う人に対して失礼な事を言わない様にするっすよ」


 と、真剣な顔で注意して来た。

 別にオレはそんな事は言わない。

 挑発以外では、だが。

 それにシエルは……とても喋れる状態じゃないしな。


 それじゃあ行くっすよ、と言うと同時に扉を開けるハイトさん。

 そこには普通の部屋があった。

 さらにその部屋の奥にある扉へと向かう。

 そこからは子供のはしゃぐ声が一つ。いや、ケイトさんの声が聞こえていた。


 コンコンッ


 手首の返を使い綺麗にノックをし、返事を待たずに扉を開けた。


「ハイトっすー」


 と、言いながら中に入る。


「おお、よく来たなハイトの坊主。今日はジェイドの孫が来るとか聞いとったぞ?」


 奥から聞こえるのは年齢を感じさせながらも老いを感じさせない、そんな声。


「入るっすよ」


 その言葉に従い中へと入る。

 そこには、


「おお、昔のジョル坊にそっくりだな!!」


 そんな声を出す、ヒゲダルマがいた。







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