第十話【聖域と出会い】
三日ぶりです。
魔素=空気中に自然発生した魔力だと思って下さい。
────聖域
それはこの世界に無数に存在する。
その正確な数は把握されておらず、数カ所と言う者もいれば数十カ所、数百カ所と言う者もいる。
規模はまちまちで水溜り程のサイズもあれば、山脈がそのまま聖域と化している場所もある。
聖域の定義はしっかりと決められている訳では無い。
聖なる魔素が溢れている。精霊の発生が確認された。奇跡が起きた等々。
有名な例を上げるならば世界最大の聖域「霊峰グラノーラ」、未だ中に入り生還を成功したのが勇者のみと言われている聖域「聖森バケーノス」、数多くの精霊の発生が確認されている聖域「聖湖フェアリーダンス」、そして最も近くに人が住んでおり歴史的にも重要な意味を持つ勇者が作ったと言われる聖域「聖古城ツェルグブルグ」。
そしてどの聖域にも共通している事が一つある。
簡単に出入りする事が出来ない。
濃すぎる魔力による魔力酔い。不思議な地形により入る者は拒まず出る者は引き止める。精霊たちの悪戯。挙げればキリが無い。
『聖域は人を選ぶ』
この言葉は古代の学者が言った台詞である。
それにより聖域は信仰される事もあれば畏怖の目で見られる事もある。
歴史に名が残る聖人と呼ばれた人々も聖域に挑み、聖域に散った。
そして生還を果たした全ての聖人は死期を悟ると必ず聖域へと出向いたと言う。主に会いに行くと......。
昨日、一等区画休憩塔で読んだ『聖域』と言う本の内容を思い出す。
ああ、納得だ。
そう思えるような光景が目の前に広がっていた。
透き通った空気にキラキラと光を弾き輝く湖面。青々とした樹木に巻き付く蔦や苔。濃厚で人体に害があるとなっている魔素のせいか、まるで所々に透明で透き通ったフィルターか何かがあるかのように景色が歪みそれがまた幻想的で神秘性を強調してる様な。
そしてツェルグブルグ城。
その古城の放つ存在感と威圧感、と同時に包み込む様な暖かさと言うか安心感を与える様などっしりとした佇まい。築数百年と言われても納得する様な痛み方を見せているがそれがさらに古城の存在感を引き出すのに一役買っている。
「──あぁ......」
口から感嘆の声が漏れ、目の前の風景に目を奪われ、ついつい忘れていた呼吸を思い出しスウッと息を吸った。
濃厚な魔素が体に入り染み渡って来る。だが、不思議と嫌な感じはしなかった。
むしろ心地いいくらいだ。
なんと言うか......森林浴なんかで「空気が美味しい」っていう感じの。
まあ、そんな事はいい。
とりあえず降りてみるか?
いや、降りたい。
うーん、どうするか......
───助けて......!!
また、そんな声が響く。
塀を越えた事でさらに近くなっている様だ。
確か魔力酔いは濃度の高い魔素にさらされる事でなるんだったよな。濃すぎる魔素を吸ったりするからだとか......
つまりこの魔素に慣れればどうってことはない!!
と、言うは易し行うは難しってか?
だが俺の事を舐めてもらっちゃ困るぜ。
魔力操作に関して俺の右に出るものはいない!!............俺の知ってる限りな......
とりあえず俺は魔力量なんかを高めたりするのに一度体内の魔力を放出して吸収したりする練習なんかもしてる。
体外の魔素を取り込む練習なんて母さんの中にいた時からしてたしな。
得意中の得意だ。
両手を前に突き出して自分の魔力を聖域の魔素へと混ぜていく。ゆっくりゆっくりと回転させながら慎重に、
............うん、いけそうかな。
───苦しい......
ん、声が小さくなった......?
弱ってる、のか。
これはまずいかもしれない。
この際、成功するかしないかは関係ない。
成功させるんだ。
......ゆっくりと深呼吸をし、
放出した魔力と魔素が混ざり合った物をゆっくりと、伸ばした指先から吸っていく。
(気持ちいい......)
そんな感覚が内側から溢れて来る。
なんというか......ゆっくりと内側から何かが広げられているって感じ。異物が体内に入り中を荒らすでもなく、じわじわと何かを内側から広げながら広がっていき俺の魔力へと馴染んでいく......
「───よし!」
自然と声が漏れていた。
魔眼を解放し辺りを見渡す。
そうやって微妙に加速された思考と魔力の可視化を頼りに目当ての物を
(──見つけた......)
それは青々と茂る葉を付け、塀の側まで伸びている一本の枝。枝と言ってもそれなりに太く、しっかりとした生命力を感じさせるそんな枝だ。
五十センチ程しかない塀の上を落ちない様に気をつけて歩いていく。苔などが生えていて滑るかもしれんしな。
そしてなるべく、その枝を付けた木へ近づき距離なんかを確かめる。
おそらく塀から枝まで一メートルくらいだろう,
いけるか......?
一メートルって距離はそんなに長くないかも知れないが足場が苔で滑りなおかつ高い所となると厳しくなってくる。
少し気が引けるけどしょうがない......
腰にさしてある木剣を抜き地面へ落とし、その後、服の袖なんかを使い足場の苔を払い綺麗にし滑らない様にする。
これで準備は出来た。
ゆっくりと深呼吸をし心を落ち着ける。変に慌てても失敗するだけだ。
「よし、行ける!」
自分に言い聞かせる様に声を出し一気に跳び、飛んだ。
案の定、滑らずに蹴る事ができた、順調だ。
が、問題はこの後──
「──ぐっ、思ったより痛くは無かったがそれなりにきくなぁ............」
俺は別に枝に掴まった訳ではない。
枝の上、いや枝に生えている葉に向かって体を投げ出したのだ。
こんな体で木の枝を掴もうなんてどうかしてるしな、この方が現実的だ。痛いけど......。
だが、まだ問題はある。
地面までは二メートル程。
飛び降りれない事もないが流石にね。
ゆっくりと、しっかりと小さな枝を掴みながら太い枝の上を幹の部分を目指し進んでいく。
それにしても本当に丈夫な木だな。子供一人分の体重とはいえびくともしない。やっぱり魔眼で魔力保有量が多い木を選んで正解だったな。
「よっと、」
膝のバネを使いながら緩やかに着地。
前世で散々鍛えたから高い所から飛び降りるのに不都合はない。
落ちている木剣を土を払い落としながら拾った。
うん、傷なんかはついてない様だ。
別に傷がいやって訳ではないのだが落としてのってのがちょっとね。
それでは探索を始めますかね。
────助けて......!!
声がだいぶ近づいてきたな......。
少し湿り気を帯び出した地面を踏みしめ声を頼りに先へ進む。
右手には木剣、左手には拾った木の枝を持ち木の枝で地面へ印を付けながら進んで行く。
迷子対策だ。
(──ん?)
周りの景色を楽しみつつ探索していると水の音が聞こえた様な気がした。
それに声がだいぶ近づいて来ている。目的地も近い様だ。
確か......ここの聖域にも水があるんだよな。
城の庭園だろ......見てみたい。
これはさらに先へ進む必要がありそうだな、うん。
少し歩く速度を早めた。
────助けて......!!
声が苦しそうだ。
今までよりも鮮明に聞こえるせいかそう感じる。
俺は目の前に立ちはだかる茂みに木剣を突っ込み広げ、一気に抜けた。
「──ッッ」
その瞬間、
俺は息を飲んだ。
それ程までに幻想的で綺麗な光景が目の前に広がっていたのだ。
光を反射し輝く湖面。
所々にある浮島には花々が咲き誇りキラキラと輝いている。
そして余りにも濃過ぎる故に目に見えてしまう魔素たちが景色を歪めながら色々な色に輝きを放つ。
おそらく物凄く害なのだろうが「綺麗な物には棘がある」とはよく言った物だ。
俺はその光景に見とれていた。
いや、見惚れていた。
瞬間、
────く、苦しい......
そんな、身をよじる様な声が響く。
こんな事をしている場合ではない、声の主を助けたい。
そんな強い思いがあった。
危険か?なんて事は一切考えていない。
この声の主は苦しんでる。
それだけで十分だったからだ。
俺は何があってもいい様に地面に枝を突き刺し目印とした後、両手で木剣を握り歩み出した。
と、同時に魔眼を発動させる。
もちろん何事も見落とさない様に、魔素を見れる様に。
(ん? 何だあれは......?)
魔眼を解放した俺の目に何かが映った。
魔力の塊。いや、............
よく分からないのだが少し離れた所の水中で何かが動いたのだ。
それはその場から移動せずに身をよじる様に──
俺はもうその方向へ歩き出していた。
あれは声の主だ。
なぜだか分からないがそんな風に思え、足が動いた。
それは異常だった。
一度認識してしまってからは目を離せず、一心に見入っていた。
──く、苦しい......
声と連動するかの様に何かが動く。
水中。しかも岸から数メートル離れた場所にいる。
──助けて
入れるのか?
──苦しい
深さは?
──誰か
安全性は?
──助けて
目に見えて魔素が溜まっているが......
──苦しい
泳げるのか?
──助けて
──助けて
──苦しい
──助けて
────誰か!!
いや、そんな事は関係ない。
この声の主は俺を呼んでいるんだ。
別に自分が特別だとか言いたい訳じゃない。
俺にしか声が届かない。
そんな中、声の主は半年も苦しみながら助けを呼び続けたんだ。
今、俺が助けなくてどうする!!
きっと聖域に入れる者、入ろうとする者も限られる。
その中で声を聞ける者は?
どうなんだ?
ここで俺が躊躇していてどうする。
行くんだ!!
「うっ......」
水は透き通っていて深さが分からない。透き通り過ぎてるが故の怖さがある。
だが関係ない、俺は進む。
水の深さは俺の膝くらいまでだ。
行ける。
だが、一歩、一歩と歩みを進めるにつれ水は段々と深さを増していく。
冷んやりとした水がまるで粘性を持っているかの様にまとわりつく。
そのくせ手で掻くとすんなりと解けてしまう。
不思議な水。
──助けて!!
俺がそこに辿りついた時、水は俺の胸あたりまでに達していた。
首を曲げる形で水中を覗き込んだ。
そこには俺へ助けを求めるかの様に蠢く何か。
──助けて!!
だが不思議と恐怖感などの負の感情は湧いてこない。
手を思い切り伸ばすも届かない。
..................やるしかないのか。
俺は一瞬、躊躇しかけ、止めた。
躊躇するのを止めたのだ。
『失敗無くして成功なし。やらなくて後悔するぐらいならやって後悔しろ。挑戦しない者に明日はないぞ......?』
どこだっただろうか......。
確か......地獄の中だった様な。
今や名前も顔も思い出せない。
だが、そいつは俺の隣で嬉しそうに笑いながら言ったんだ。
生きるか死ぬかではなく、死ぬか死なないかのボス攻略の前だってのに、緊張感のかけらもない態度で言い放った。
「──なあ、ユリウス。ユリウス・グラッドレイ。自分を信じろ声の主を助けるんだろ?」
俺は自分に問いかける。
もちろん答えは
「やってやる。やってやるよ!!」
俺は間を置かずに息を吸い込み、潜った。
転生してからは初めてになるだろう潜水。しかも何かを持ち上げなくちゃならない。
だいぶハードだ。
そんな思考をできるくらい俺が落ち着いていたかと言うと嘘になる。
ただの思考加速の賜物だ。
(──掴んだ!!)
それを右手に掴むと一気に左手を下に滑り込ませ抱きかかえる様な形に持ってくる。
しかしそれはそんな必要もない程に軽く持ちやすく、
「──グハッッ」
水中で息を吹き出してしまった。
一気に水が口内へ流れ込む。
軽いパニックになりつつも岸へ急ぐ。
そして、
「──ゴハッ、ゴホッ、ゴホッ......はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......」
何とか岸へと辿り着き飲んだ水を吐き出した。
ゆっくりと深呼吸を繰り返し息が落ち着いて来た所でもう一度声の主へ視線を向けた。
「..................」
言葉は通じるのか?
いや、でも助けを呼んでいたんだし......
はっきり言って困っていた。
俺はこの生物を知っている。
見るのは始めてだが知っている。
おそらく前世でも殆どの人が知っているだろう生き物?......
「お、お前が助けを呼んでいたのか......?」
ふるふる
「あの声の主......?」
ふるふる
「やっぱり喋れないのか......?」
ふる、ふるふるふる
「元気が無いな......」
ふる
(......どうしたもんか......。意思の疎通は出来るし、でも──)
ここで俺は一つの可能性を思いついた。
魔力酔い。
本に書いてあった魔力酔いの症状によく似ている。
「なあ、お前はスライムなのか?」
ふるふる
「違うのか......。じゃあ何なんだ?」
ふる、ふるふる
「分からない、覚えてない、思い出せない、か......」
──いや、ちょっと待て。
おかしい、そう、おかしい。
さっきから自然にスルーしていたがおかしいだろ。
なんで俺はスライムと会話が成り立っているんだよ。
でもこいつは自分はスライムじゃないって言ってるし......
──ん?どうしたんだ。
なんか苦しそうだ。
「おい、大丈夫か?!」
ふるふる(苦しい、助けて)
「ど、どうすれば──」
いや、まずは調べなくちゃ。
俺はゆっくりと目を閉じ、
魔眼を開いた。
そうやってスライム(仮)の事を観察していく。
その間もスライム(仮)は苦しんでいた。
「........................やれるか?いや、やるんだ!!」
スライム(仮)に手を当てて俺の魔力をスライム(仮)に合う様に調整した後、流し込んでいく。
うん、やっぱり魔力を合わせると流れやすい。
「──見つけた、ここか!! くっ、............もう少しの辛抱だ頑張ってくれ」
俺がスライム(仮)の中に見つけた魔力の塊。
それはドロリとしていて明らかに正常ではなく、どうもそれを中心に苦しんでいるようだった。
右手から左手。
過去に何度も練習した事だ、そこの間にスライム(仮)が入っただけ。
俺の魔力でスライム(仮)の中にある、魔力が詰まっているかの様に固まっている所を押し出す。
これが俺の考えた治療法だ。
「──いけるぞ、後少しだ。頑張れ」
いつしか自然とそんな言葉が出ていた。
俺の額には汗が浮かび、正直かなりキツイ。
が、こいつは救う。
ここまで来たんだ何が何でも救って見せる。
後少しだ、もう一押し。
徐々に塊は移動を始めた。
これで後は押し出すだけだ。
「う、らあぁぁああぁぁああ──」
声を出し、気合を入れ右手から一気に魔力を流し込んだ。
枯渇なんて気にしなくていい。
どうせ回って帰って来るんだ。
精一杯やれ。
(──来た!!)
一気に押された塊が外へ外へと動く。
そして、
「──うっ、............がはっ、」
左手から俺の内側に流れ込んだ。
(何なんだこれは!? 体内に石が入っている様な......気持ち悪、うっ............)
散らそう。
それしか方法はない。
塊へ向けて魔力を集め塊へ染み込ませていく......。
そして、魔力を一気に外側へ出し塊を壊しただの魔力とする......
瞬間、内側から聖域内に感じる魔力が溢れ出した。
その量は俺の魔力総量を越えて内側で暴れる。
そして、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛、激痛────
終わる事のない痛みの嵐が俺を襲う。
(──し、思考加速!!)
俺はとっさに思考加速を使った。
いや、使ってしまった。
「──ッッ、ぐあぁぁあぁあああぁあ──」
圧縮された時間の中、さらに研ぎ澄まされた感覚に痛みが走り抜け襲いかかる。
だが、加速された思考で何とか思いついた方法をがむしゃらに行った。
開放。
魔力を外側に解き放ったのだ。
暴れる魔力を内側から外側へ。
「うっっ、あぁぁああぁあぁあああ──」
失敗。
ここで誤算が生じたのだ。
魔力を解き放つのにも痛みが生じる。
普段、魔力の出入りを管理する魔力孔。
それが内側から出る、膨大な魔力により無理やり押し広げられたのだ。
イメージとしては全身の毛穴に針を刺され無理に広げられた、と考えればよい。
(くっ、はっ、意識が──)
痛みによりもがいていた手足から力が抜け投げ出される。
そうして倒れた俺の顔の前で不安そうにふるふる揺れるその赤いボディー。
それが俺の気絶寸前、最後に見た光景だった────
激痛の繰り返し。
一度あんな風な表現を使ってみたくて挑戦してみました。
読みにくかったらすいません。
ここで一つ。
僕の文章は基本的にユリウスの一人称視点を意識しています。
しかし時々、僕の都合で三人称になる事があるので注意していただければ......。
次回.謎のスライム(仮)の正体が!?
お楽しみに〜
誤字指摘などありましたらお願いします。