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異世界転生ライフ 〜ニューゲーム→ニューライフ〜  作者: ㌔㍉コン
第一章〈聖域都市ツェルグブルグ〉
10/33

第九話【開眼】

三日ぶりです。

 

「──うっ、............」


 目を開くと辺りは真っ暗だった。

 ふと、眠る前──いや、気絶する前の事を思い出す。

 確か、父さんとケイルズさんの模擬戦に見入っていて、夢中になっていると............。

 ゆっくりと体を起こして指をパチンッと鳴らす。

 するとこすり合わせた指と指の間からピンポン球サイズの光球が現れた。これは俺が唯一使える魔法、光球(ライト)だ。

 いや、正確に言うと違うだろう。

 この五年の間に改良に改良を重ね色んな使い方を考えた。

 同時にいくつも生み出したり、

 光球を掴める様にしてジャグリングしてみたり、

 自由に宙を飛ばせてみたり、

 まあ、色々だ。

 もはやただの光球を生み出す光球(ライト)とは違った役目を果たしている。


(......しまった......)


 ここである一つの失敗に気付いてしまった。

 これはあの日、初めて魔法を使った日から決めていた日課(マイルール)だ。必ず毎日、寝る前と暇な時に魔法の練習と魔力の操作練習をする。

 そして今日、遂にこの日課を破ってしまったのだ。

 なんたる不覚。

 ......まあ、俺は前向きポジティブな人間だ。

 これは開き直ろう。

 そして昼間、なぜ気絶したのか......

 原因は何と無く分かる。

 おそらくあの赤い視界だろう。

 突然父さんたちの動きについていける様になり、不思議な物まで見えたあの時。

 そして気絶......。

 ............やっぱり試すしかないかな。


 よっ、と声を出しベッドから飛び降りる。

 やはり、ここは見慣れた俺の部屋の様だ。

 まだ少し暗かったので光球をさらに二つ生み出した。

 指を鳴らさなくていいのかって? そんなのカッコいいからしたに決まってんだろ。言わせんなバカ。

 俺の歩みに合わせて三つの光球もフワフワとついて来る。

 そして目的地、おもちゃ箱にたどりついた。


「......えーっと............」


 中に光球を一つ放り込み中を(あさ)る。

 おっ、あったあったと目的の物......布製のボールと革製の剣を取り出す。革製の剣と言っても中には綿が詰めてあり、当たってもそんなに痛くない様にできている。

 どうしてもと剣を欲しがる四歳の俺に母さんが作ってくれた物だ。

 左手にボール、右手に剣、これで準備は完了。

 そして昼間の、あの時の感覚を思い出しながら深呼吸をし心を落ち着ける。その間、光球は休む事なく辺りを照らしてくれていた。


「──ほっ、」


 そんな声と共にボールを上に放り、素早く右足を引いて剣を中段に(かま)える。

 そして..................




 ──世界が静止した。




 文字通り世界の静止。

 いや、正確には違うか。

 おそらく俺の意識だけが加速していて止まっている様に見えているのだろう。

 まあ、まだ推測の域をでないのだが、


(──やばい......)


 気を抜いた途端に布と布がぶつかる様な乾いた音を立てながらボールがカーペットに落下した。

 少しフラフラするがもう一度深呼吸。

 そして心身共に落ち着かせる。


「......よっ」


 ボールを真上へ投げる。そしてもう一度右足を引い剣を構える。

 投げたボールは頂点で一度止まった後、まるで羽毛の様な軽い物が落下するかの様にゆっくりと下降し始めた。

 それをしっかりと見据えベストなタイミングで剣を一閃......


(......久し振りだな)


 そんな事を考えながらゆっくりとボールに迫っていく剣を見つめ集中する。

 そして、遂に──体感的には数秒の時間をかけて剣がボールにたどり着いた。


 バフッッ


 そんな音を立てながら勢いよくボールに剣がぶつかった。

 瞬間、ボールが勢いよく壁へ向かい飛んでいった。


「──っ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ......」


 一気に疲労が襲って来てカーペットに大の字に寝転がる。

 そんな俺の頬は自分でも気持ち悪いと思うほどに緩み、にやけていた。

 疲労と歓喜、変な感じだ。

 だがこれでこの現象の予想がついた。前世でも経験がある。

 ああ、本当に懐かしい。

 その仕様と危険性、後遺症により途中から法律で禁止になってしまったVRゲーム特有の能力(スキル)

 特にあの地獄(デスゲーム)内では持ってないと文字通り死へと一直線だった能力(スキル)


 ──思考加速。


 俺も愛用、多用していた。

 これは頭の中、要は「思考加速」と念ずるだけで発動し,まるで世界の時間の流れが遅くなったかの様に感じる。

 その中で剣と剣とをぶつかり合わせ戦うのだ。

 思考加速の何が凄いかと言うと、例えば弓使いがいたとしよう。彼はいつも一秒で矢を取り出し弓へつがえる事が出来ると仮定する。そして一秒半ほどかけて狙いを定め放つ、この場合の成功率は狙いを定める所で変わるだろう。

 もしここで思考加速を使っていたら。彼は矢を取り出す。この間には数十秒の体感時間が存在し矢の触り心地、手汗のかき具合、風の吹き方等、色んな事を確かめる事が出来る。

 そして矢をつがえる、彼はおそらく狙いを定め終わるのに一秒とかからない。一瞬、その間に凝縮された数秒の間にしっかりと握り、引き具合、標的との間合い、角度なんかを考える事ができ、素早く放つ事ができるだろう。

 そしてこの場合、彼は一秒半の時間を要する。そして思考加速を使っていない二秒半よりも正確に、より多くの情報を得て弓を放ち命中させる事になるだろう。

 大きな差だ。

 だが、世の中うまい話だけでは無いとはよく言った物だ。

 当然弊害がある。

 思考加速による極端な脳への負担。

 現実(リアル)、つまりゲーム外での反射神経、運動能力の低下。

 これらは個人差はあるものの大なり小なりプレイヤーを苦しめる事になり、この事が原因と思える事故なども発生したために法律で禁止となってしまった。

 当時、法律が制定された時には嘆くゲーマーが続出したとか......俺もだが。


 とにかく分かった事はこの現象は思考加速を起こすという事。そしてとても疲れる──いや、膨大な量の魔力を使うという事だ。

 きっと俺が倒れたのも魔力の枯渇によるものだろう。そして今のこの体のダルさ。まさしく魔力が枯渇しそうな時の症状にそっくりだ。

 最近は魔力量が増えたからか久々に魔力が(から)になりかけたからな。

 これはまるで......そう、インフルエンザ二日目の様なダルさとキツさがあるからな。初めて枯渇した時は調子に乗ってギリギリまで攻めて死にかけた。

 それぐらいヤバい。

 だが前読んだ本の中に「魔力を百パーセント外に出しきれる者はいない」とか書いてあったな。きっと俺は例外だろうけど。なんせ母さんの中にいた時から続けた魔力操作だ。誰にも負ける気がしないし、一滴残らず絞り出せる気がする。

 まあ、それで死んだら馬鹿みたいだけどな......。

 そんな事より今はとにかく体がだるい。

 早く寝よう。きっとこのままカーペットの上で寝てしまっていたら心配をかけてしまうしな......。


 そうして重い体を剣を杖にして引きずる様にベッドへ潜り込んだ。

 睡魔は一瞬の内に襲いかかってきて、俺は泥のように眠った。






 ******






「「──おにぃちゃん......?」」


 俺はそんな天使の声を聞きながら気持ちの良い目覚めを迎えた。


「おはよう。マリア、エミリア」


 そう言って頭を撫でてやるとキャッキャッと笑って喜んでくれる。

 ああ、今日もダントツで可愛いな。

 二人の頭を軽くポンポンと叩きどいてもらいベッドから降りた。

 そうして窓辺まで歩き日光浴をしながら伸びをしたり体をほぐしていく。

 太陽の様子を見るにどうやら昼の様だ。

 これも毎日の日課だ。朝一番の日光浴は体に良く目覚めを助けるって言うしな。まあ、今は真昼間なんだが......気にしたら負けである。


「よーし、今日は忙しくなりそうだ」


 今日は赤い視界の事について色々と調べなければいけない。検証だ検証。

 それに運動もしなくちゃな。一日休んだら取り戻すのに三日かかるってどこかで聞いた気がするし。


「ユリウス様」


 ドアを開けてリニアちゃんが入って来た。

 どうやらシスターズが呼びに行っていたらしい。

 リニアちゃんに階段を降りる時に「だっ、抱っこひまひょうか!?」なんて噛み噛みで言われたりしながら一人で階段を降り、リビングへ顔を出した。

 リビングでは台所で母さんとフェルムちゃんが料理をしている。俺が起きるのに合わせてしてくれたのかな?


「おはようございます」


 そう料理をする背中に声をかけると母さんが振り返り、こっちまで歩いて来て俺をそっと抱きしめた。

「具合は大丈夫?」と、心配そうに頭を撫でてくれる。

 俺は素直に「うん、もう大丈夫。ありがとうお母さん」と言った。

 実際バリバリ元気だし寝すぎた気もするくらいだ。


「そっか、良かった」


 母さんはとても嬉しそうに笑った。

 相変わらず綺麗な笑顔だ。


「もうすぐ昼食ができるから顔とか洗ってらっしゃい。普通通り食べられる?」


「うん、もうお腹ペコペコだよ」


 なんせ昨日の昼から何も食ってないからな。丸一日だ。

 腹が減ってはなんとやらと言うしな。

 それに、意識した途端に急にお腹が空き出した。


 キュルルルル〜


 俺のお腹が可愛い音を出しながらなった。

 もう、食卓についているシスターズがキャッキャッと笑い、母さんはにっこりと微笑んだ。

 俺は恥ずかしさを紛らわす様に足早に洗面所へと向かった。


 (かめ)から水を汲み顔を洗い寝癖を治す。

 ふと鏡を見ると俺の澄んだ碧色の瞳が二つ。

 ここで一つ、疑問が浮かんだ。

 思考加速中の目をどうなっているんだ?

 もしかしたら赤くなっているのかもしれない。それだと外、人前で使ったらどうなんだ......?

 いや、でもちょっとかっこいいかも......

 とりあえず......

 目に魔力を集め思考加速を発動させる。

 瞬間、俺の瞳が碧から赤。いや紅に変わった。

 魔力の流す量を増やし、加速を早くしていくほど、どんどん瞳の色が濃い紅に変わっていく。


「────はぁっ、はぁ、はぁ、はぁ......」


 やっぱりキツイな。

 だがこれで目の色が変わっている事が分かった。人の目を気にして使う事にしよう。

 頭からザバーッと水を浴びスッキリさせた後、タオルで頭を拭きながらリビングへ向かった。

 うーん、いい匂いだ。

 自然とテンションも上がってくる。

 軽い足取りでリビングへ着くと定位置のイスへ座った。

 テーブルの上には数種類のパン、野菜の入ったクリームスープと薄く焼いたベーコンが乗っている。

 ホクホクと湯気が出ていてとても美味しそうだ。

 では


(いただきます)


 と心の中で言った後、スプーンを持ちスープを一口。

 俺の事を考えてか、いつもより薄味にしてあるスープの中にしっかりと野菜のエキスが溶け込んでおり、とてもまろやかで甘く美味しい。

 パンはフワッとしていてほんのりと甘い。きっとフェルムちゃんが焼いたのだろう。

「私、パンを焼く事に関しては自身がありますので!!」と胸を張って主張していたからな。

 そしてさらにパンをスープに漬け込むと......

 うまい!!

 とろ〜っとしたスープがしっかりとパンに絡み、ふわふわのパンの隙間に入り込んで口に含んだ瞬間ジュワッと口の中で広がるのだ。

 やはりこの組み合わせは最強であったか......。

 だがまだ終わりじゃ無い。

 この薄焼きのベーコンが残っている。

 パンを薄くスライスし、間にベーコンを二枚挟み込む。さらにそこへシャキシャキのレタスを挟むと完成だ。

 薄焼きだからこそのカリッと焼けた部分とジューシーな部分の両立を楽しめ、さらに余分な油は落としてあるという抜け目なさ。

 おっと、これはマスタードで焼いたのかな?

 ほのかな酸味と辛味が口の中に広がり鼻を抜けるスッとしたこの感じ。

 最高だ......。


「──ほら、正解だったでしょ」


 不意に母さんが声を出す。


「あの美味しそうな顔、ユリウスのあの顔を見るだけで今まで生きていて良かったって思えるもの。うん」


「ちょっと、ユニアス様。マスタードを多めにって言ったのは私じゃないですか。何をあたかも自分の手柄の様に言っているんですか!」


 おお、やっぱりいつもより多めになっていたのか。どうりで美味しかった訳だ。

 いつもはシスターズが俺と同じ物を食べたがるからって辛さ控えめになってるからな。


「えー、私がユリウス様はきっとマスタードで焼いたベーコンを食べたいだろうって言ったんですよ」


 そこにリニアちゃんが参戦する。


「で、でも、ベーコンを焼いたのは私よ」


 これは母さんの主張。


「多めにって言ったのは私です」


 これがフェルムちゃんの主張。


「マスタードを食べたいだろうって言ったのは私ですよ」


 そしてこれがリニアちゃんの主張。


「お兄ちゃん美味しそ〜」


 これがマリアの主張。


「お兄ちゃん一口ちょうだーい」


 これがエミリアの主張。


 結論は、シスターズが可愛いい!!

 ──って、バカやってないでここは


「ありがとう、母さん、フェルムちゃん、リニアちゃん」


 うん、これで解決だ。

 そうやってエミリアとマリアからベーコンを死守しつつ楽しい昼食は終わりになった。

 別にケチであげなかった訳では無い。

 彼女たち、辛い物が苦手なのだ。








「よっと」


 昼食を終え、シスターズは勉強タイム、俺と母さんはティータイムを楽しんでいた。

 しばらくゆっくりと過ごして落ち着いた俺はおもむろにイスから降りた。


「どうしたの?」


 そんな俺に母さんの声。


「ちょっと、庭で運動をしようかなって」


「ダメ」


「え?」


「だからダメ。今日はゆっくりと過ごしなさい」


 んー、俺が病み上がりだからか?

 別に病気になったりした訳じゃ無いんだし......。

 でもこういう時の母さんは頑固だ。

 家族の事となるととことん頑固になる。いい母親だ。


「──分かりました。今日は読書をして過ごします」


 だから俺は素直に言う事を聞く。

 母さんには余り、心配をかけたくは無い。


「よろしい。ほら、口についてるわよ」


 そう言って鷹揚に頷いた母さんは俺の口についた汚れを拭って落としてくれた。

 今日は色々と試したい事があるし、まあいいとしよう。

 俺はそそくさとリビングを後にした。






 ここは洗面所、家の奥にあり余り人が来ない。手なんかを洗う時は台所が楽だからだ。

 さあて実験を開始しよう。

 まずは光球をいくつか生み出し宙へ浮かべる。

 そして魔眼──便宜的にそう呼ぶと決めた、紅眼は読み方がちょっとな──発動。

 今回は思考を加速させる方では無く、視界が紅くなる方へ重きを置く。

 うん、どうやら推測は当たってる様だ。魔力が手に取るように分かる。......と言うより見える。

 空気中の魔力、光球の魔力、そして光球に消費されていく魔力。全てが濃紺の差で手に取るように分かる。

 そして..................

 やっぱりな、これでほぼ確定だろう。

 洗面所に魔力を放出しそれを吸収する。すると目に見えて変わるのだ。

 この魔眼は魔力を可視化し思考を加速させる。

 うん、超便利じゃん。

 だけど使い方が難しいな......要練習かな。






 ******






 あれから一週間が経った。

 俺は普段の日課をこなしつつも魔眼の研究を進めて来た。

 分かった事は膨大な魔力を使う事、思考を加速できる事、魔力を可視化できる事の三つだ。

 一つ目はとてもありがたい。

 どうも俺は魔力を使用すれば使用するほど魔力総量が増えている。これは一歳の時に気づいた事だ。

 それには多く消費させる方がいいのだがいかんせん、俺が使える魔法は(ライト)のみ。色んなアレンジを加えて消費量を増やしてもなかなか減らなかったのだ。それを救ったのが一つ目である。

 そして二つ目、思考加速は前世で既に使い慣れている事もあり、すんなり受け入れる事ができた。だがやはり調整が難しく練習中である。

 三つ目、これにより凄い事を知る事になる。

 活性化。父さんとケイルズさんが模擬戦の時に使っていたやつだ。

 これは魔力を全身へ行き渡らせ、それを活発化させる事で身体能力を上げる技術であるらしい。

 らしいってのは父さんに活性化って何?と質問をした所こんな回答が得られた訳である。

 試しに父さんに活性化を使ってもらいこっそりと魔眼で盗み見た結果、俺も活性化を使えるようになったのだ。

 だが、俺は活性化をなるべく使わない。

 活性化は父さん曰く「基礎の身体がしっかりしていた方が効果が大きいらしいぞ。だから体を鍛えれば鍛えるほど強くなれるんだ」らしい。

 だから俺は決して活性化を使わない。断固として、


「よお、ユリウス」


「こんにちは」


 挨拶をかわしながらも足を前へと運ぶ。俺は今、一等区画の敷地内の芝生広場を走っていた。

 ちなみに今、俺に声をかけて来たのはここ数日で顔見知りになった兵士だ。彼は休み返上でトレーニングをしているらしい。まあ、趣味と言っていたし本当に好きなのだろう。

 別に芝生広場をずっと走っている訳では無い。たまたま今、芝生広場にいるわけで実際は一等区画を見て回るついでに走っているだけだ。

 それに活性化の練習もちょくちょく挟んでいる。



 ────助けて......!



 そんな声がどことなく響く。

 最近の俺の悩みの種だ。

 半年ほど前からたまに聞こえて来るこの声。どうやら俺にしか聞こえて無いようなので空耳かと思ったがそうでは無いようだ。

 この声はどう言う訳か一等区画へ近づくにつれ



 ────だれか!



 大きくなるのだ。

 この声の調査も走る目的の中に含まれていたりする。


「──ここか......?」


 俺はふと、ある塀の前で立ち止まった。

 うろちょろした結果、ここが一番声が良く聞こえるのだ。



 ────た、助けて......!



 それに俺が声について調べようと思った理由はもう一つある。

 この声。ゆっくりと、だが確実に弱っていってるのだ。

 その弱っていく声を聞くたびに、俺以外の人に聞こえないのなら声の主を助けられるのは俺だけだ。と思ってしまう訳である。


(三メートルってとこか............行けるか?)


 目の前の塀の高さだ。

 ツェルグブルグ城にそって作られた塀。相当の年月が経っているようで所々に(つた)や苔が生えている。

 周りに人はいない。


(やるしかない、か......)


 俺がやらなければならない理由は無い。

 だけど、だけど──


 蔦を掴み何度か強く引っ張る。

 行けそうだ。

 念のために何本か同時に掴み活性化を使いながら一気に登り始めた。

 苔のせいで滑る塀を懸命に蔦を掴み登っていく。

 一歩、一歩確実に登って行き。

 ついに塀の天辺へ手をかけた。


(着いた!!)


 俺は活性化と腕の力を精一杯に使い体を塀の上へと持ち上げた。

 そして顔を上げると、


 お伽話に出て来そうな、幻想的な風景が広がっていた。


魔眼っていいですよね。

僕は大好きです。


あと少しでツェルグブルグ編も終わりになります。

いやー、僕自身も続きを書くのが楽しみです。


感想や誤字指摘を下さった方、ありがとうごさいます。

僕の毎度の楽しみの一つでもあります。

こいつまた誤字だ、とか思わずに指摘して下さるとありがたいです。


誤字指摘などお願いします。

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