表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
辺境惑星で旧文明AIを起動したら、銀河インフラが再起動しはじめた 〜廃船修理のつもりが、星系管理者に登録されました〜  作者: 七森シオン
北東中継塔と灰色の庭

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
85/184

第79話 MIO側の白い点が、外周ログに混じった

 ガタ用表示には、青い点と白い線だけが残っていた。


 外周接近点一。

 外周接近点二。

 地下保守口外側点。

 拠点へ戻る帰還線。


 黒い円は薄く、小さく処理されている。外で迷うための地図ではなく、戻るための地図だ。


 レンは拠点端末で、前回の単独帰還ログを開いた。


『GATA SOLO RETURN TEST、再解析を開始します』

「違和感はあったか」

『一点あります。接近点二の帰還マーカー位置に、微小なズレがあります』

「どれくらい」

『推定一・八メートル。通常運用では許容範囲です』

『許容でも嫌です』

「ガタは気づいたか」

『白線が少し曲がって見えました』

「それだな」


 レンは接近点二のログを拡大した。


 青い点そのものは安定している。ビーコンも生きている。だが、帰還線の基準位置が少し斜めにずれていた。粉塵で足跡が流れた時、ガタの補助表示が一瞬だけ細く揺れている。


 大きな問題ではない。


 ただ、灰色の庭の外側では、こういう小さなズレが積み上がる。


『接近点二の戻り印列を補正すれば、ガタ補助表示の安定性が上がります』

「現地で直す」

『推奨します』

『直すのは好きです。外へ行くのは嫌です』

「両方だ」


 レンは工具バッグに反射テープ、固定具、小型ブラシ、測距ポールを入れた。


 その時、端末の端に短い白い点列が浮いた。


 青い点ではない。灰色の外周線でもない。もっと柔らかい、白い小さな点だった。


 ぽつ。

 ぽつ。

 ぽつ。


 レンの指が止まる。


「ノア」

『検出しています。外周ログに白色点列が混入』

「灰色の庭か」

『既存の外周ノイズと一致しません。MIO関連観測語の過去ログと一部類似』

『白い嫌ですか』

「嫌というより、遠い」


 白い点は、接近点二の帰還線の近くに一瞬だけ重なった。


 草の上に置いた石のような点。


 レンの頭に、知らないはずの足元が浮かぶ。白い石。やわらかい光。祠道。戻る印。


 ミオ。


 名前は出たが、声は来ない。


 通信でも、会話でもない。意味だけがかすかに混じった。


『追跡しますか』

「記録だけでいい」

『了解。MIO関連候補、未確定感応として保存』

『追いかけないのは好きです。帰る場所が減りません』

「今日は接近点二を直す」


 白い点は薄くなった。


 レンは端末を閉じ、外へ出た。


 空は暗くない。風も弱い。粉塵は低い。接近点一の青い光が見える。そこから接近点二へ向かう帰還線も、腕の端末に表示されている。


 ガタは表示板を見ながら歩いた。


『接近点二の白線、少し曲がっています』

「白い点のせいか?」

『違います。前から曲がっていました。白い点で見やすくなりました』

「なるほどな」


 接近点二に着くと、ズレは目で見ても分かった。


 杭の位置は正しい。ビーコンも生きている。だが、反射テープの向きが接近点一より少し外へ向いていた。帰還方向ではなく、黒い円の縁へわずかに引っ張られている。


 レンはしゃがみ、テープを剥がした。


 ざらついた粉が指先につく。


「これか」

『反射方向、帰還線から一・七メートル相当ずれています』

『嫌です』

「直す」


 レンは新しいテープを巻いた。


 接近点一から見える角度。拠点側の白い光を拾う角度。ガタの表示板で青い点が太く出る角度。


 測距ポールを立て、確認端末で反射を見る。


『反射方向、補正完了』

「ガタ表示は」

『白線がまっすぐになりました』

「歩いてみるか」

『少しだけ』


 ガタは接近点二から十歩だけ離れた。


 表示板を見て、戻る。


 青い点へ向かう動きが、前より迷わない。足元の粉が少し流れても、ガタは一度も止まらなかった。


『戻れます』

「もう一度」

『二回は嫌です』

「短く」

『短くなら』


 もう一度。


 今度は十五歩。


 ガタは白線をたどり、接近点二へ戻った。アームで杭に触れる。


『ここです』

「合ってる」


 ノアがログを出した。


[SYSTEM LOG]

――――――――――

RETURN MARK SEQUENCE:POINT 02 CORRECTED

REFLECTOR ANGLE:UPDATED

GATA ASSIST VIEW:STABLE

MIO-LIKE WHITE POINTS:RECORDED

――――――――――


 白い点列は、ログの最後に小さく残った。


 レンはそれを見た。


 遠くで、ミオも戻る印を扱っているのかもしれない。祠道という、こちらとはまったく違う場所で。白い石や光を見ながら、進みすぎないように点を置いているのかもしれない。


 その気配が、接近点二のズレを見つけるきっかけになった。


 レンは杭の頭を軽く叩いた。


「助かった、かもな」


 返事はなかった。


 白い点も、もう画面にはない。


 ガタが青い点を見上げる。


『白い点は消えました』

「ああ」

『でも、青い点は直りました』

「それでいい」


 帰り道、接近点二から接近点一への白線は、前よりまっすぐ見えた。


 拠点へ戻ると、ノアが地図を更新した。


 黒い円の外側で、青い三点が安定している。接近点二の帰還線は細いまま、揺れが少ない。


『接近点二、補正完了。次回外周移動時のガタ補助精度が向上します』

「どれくらい」

『帰還線表示の揺れ、四十二パーセント低下』

『四十二、好きです』

「理由は」

『かなり減った感じがします』

「雑だな」


 レンは笑った。


 MIO側の白い点は、追わなかった。


 だが、目の前の戻り印列は直った。


 遠い白い点が消えた後も、灰色の庭の外側には、レンたちの青い点が残っている。


 レンは端末を閉じた。


 次に進むための線が、少しだけまっすぐになった。

「続きが読みたい」と思ったら下の評価とブックマーク登録をどうぞ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ