風鈴の音が聞こえたら
「電話口から軒の風鈴が聞こえたので、てっきり自宅の庭からかけてきていると思ったんです」
「ダウトー!」
見ていたドラマに息子が叫んでいた。
「どうしたの?」
洗い物をしていた妻が、不思議そうに尋ねていた。
「いや、アリバイ証明で嘘言ってるからつい」
「何言ってたの?」
「風鈴の音が聞こえたって」
「あー、携帯電話からは、風鈴の音って聞こえないらしいね」
「携帯電話が拾える音域を超過しているものなら、風鈴だけではなく、虫の音も聞こえないらしいよ」
「そもそも携帯電話の音声って、そのままの人の声ではなく、似た音を選択して合成してるらしいよね」
「そうそう」
息子と妻は理解しているらしい。
「そうなのか?」
「人の声のままデータとして送ったら、膨大なデータ量になるから、デジタル変換した合成音声なんだよ」
「普通に知り合いの声に聞こえるのすごいな」
「たまに、電話の声だけ変な人もいるけど、大体は本人の声に聞こえるよ」
見ていたドラマの方は、風鈴が聞こえたと言う証言で、しっかり嘘が暴かれたらしい。




